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『圕の大魔術師』司書のお仕事っ!!〜本の補修編〜

今、一番推したいマンガ『図書館の大魔術師』

今、『図書館の大魔術師』(正確には図書館は「圕」と書きます)が熱すぎて目が離せません。

泉光先生が「good!アフタヌーン」にて連載中の図書館の司書が活躍するファンタジー作品です。今、最も推したいマンガは?と問われれば、真っ先にこの作品を挙げるくらい惚れ込んでいる作品なのです。

実は僕、何を隠そう現実世界で図書館員をしています。(あえて「司書」とは表現しません。理由は色々ありますがここでは割愛。)

この『圕(としょかん)の大魔術師』の物語は図書館(または司書)の役割や信条、具体的な業務まで綿密に描かれています。そこに単純なファンタジーにはとどまらない作者の愛を感じ取れ、僕が一層惚れ込んでいる理由となっています。

今回は、「司書の仕事」(一部だけどね。)をテーマにこのマンガの中で描かれているコマを紹介しながら作品の魅力をお届けできたらなと思い、このnoteを書いています。図書館をよく利用する方に読んでいただけたらとても嬉しいですっ!!

それでは、めくるめく図書館の世界へ、いざ!

司書の仕事とは

みなさんは図書館を利用しますか?よく利用するであろう図書館はきっと「公共図書館」でしょう。町の図書館ですね。

では、司書のお仕事と聞いて、みなさんはどんなイメージしますか?

1、カウンターに座って本の貸出、返却の対応

2、本を本棚(図書館では「書架(しょか)」と言います。)に戻す作業

3、利用者の探している本を探すお手伝い(「レファレンス」と言います。)

すごい!全部、正解です。(もちろん、もっとたくさんあります。)

では、司書が裏ではどんな仕事をしているか想像できますか?色々ありますが、今回はこちらをテーマにご紹介しようと思います。

それは、「本の補修」です。

「本の補修」という仕事について

借りた本を「汚してしまった!破いてしまった!」という経験はありますか?特に多いのが、小さなお子さんに読み聞かせをするための「絵本」です。

まだ本の扱いに慣れていなくて(小さなお子さんだと「借りてきたもの」だという感覚もないですしね)、本の角をかじってしまったり、ページをうまくめくれずに破いてしまったりということはよくあることだと思います。

大人だってコーヒーを飲みながら読書や勉強をしていたら零してしまいシミになってしまった本を返しに来る利用者、「ペットの犬が齧ってしまった」と言ってボロボロになってしまった本を返却してきた利用者に遭遇したこともあります。

あまりに酷い状態であれば修復することは難しく、泣く泣く除籍(蔵書データから削除して処分してしまう)してしまうこともありますが、原型をギリギリ留めているような比較的小さめな破れなどは補修することが可能です。

そして、「本の補修」も司書にとっての大事なお仕事なのです。

ですので、ひとつお願いしたいのが、特に「破れてしまった」場合、無理にセロハンテープで留めることなどをせず「そのままの状態」で返却にきて欲しいのです。破れてしまったページの破片などもあれば捨てずにお持ちください。もしかしたら、修復できるかもしれないのです。

『図書館の大魔術師』中では「修復室」がこの役割を担っています。

ナナコ=ワトルという司書(この作品中では「カフナ」と呼ばれています。)が本の修復におけるスペシャリストで、次から次へと華麗な手さばきで本を修復する凄腕カフナなのです。

実はその手順、現実の図書館でも同様の手順なのです。

ここからは、彼女にバトンタッチして、図書館が本の修復をどのように行なっているのか教えてもらいましょう。

「本の補修」〜手順〜

今回は、基本中の基本「破れてしまった」ページの補修方法です。

まず、使用する道具の紹介です。

見慣れない言葉が登場していますね。「楮紙」の「楮(こうぞ)」とはクワ科の植物です。楮を原料にして漉かれた和紙のことなのです。なぜ、楮紙を使用した方が良いのか、その理由は以下の通りです。

・中性なので劣化しにくく、資料に及ぼす影響が少ない。
・必要があれば資料を補修前の状態に戻すことができる。
・原料の繊維が長く資料とのなじみが良い。繊維が強いため強度がある。

丈夫かつ無理なく補修作業に応用できるからですね。では、まずは本の状態を確認しましょう。

これが先ほど「自分でセロテープなどを使用して補修してこないでね」ってお願いした理由です。このコマでは楮紙を使用していますが、一般的なご家庭には楮紙はあまり置いていないと思いますので、テープなどを使用しがちです。テープだと再修復する際に非常に剥がしにくく、傷口が広がってしまう可能性があり危険なのです。

では、どうしたら修復痕を目立たせることなく処理できるのか。

軽く目から鱗です。手で「ちぎる」ことで生まれる「疎らな繊維」がキモなのです。続いて、

ページの表と裏に何が書かれているのかを確認しつつ、影響の少ない方に貼っていきます。この時に使用するのが、「でんぷん糊」です。

でんぷん糊って小学生の時に道具箱に入っていた時の記憶しかなく、あまり使用しませんよね。でんぷん糊には以下の特徴があります。

・資料に及ぼす影響が少ない。
・一度乾いて固まっても、水を与えればまた溶けるので、必要があれば
 資料を補修前の状態に戻すことができる。
・濃度の調節ができるため汎用性がある。

納得です。万が一、補修に失敗してしまっても特性上、本をあまり傷つけることなくやり直しできるのです。最後に、

文鎮を乗せて糊を定着させます。重しをしないと「紙が波打った状態で」乾いてしまうからです。

以上で補修作業は完了です。ナナコちゃんお見事でした。(ぱちぱちぱち)

※この他にも、本の状態に合わせた補修方法があります。先に説明した通り「劣化が著しい本」や「貴重資料」は対象となっていません。

※物語の中の「魔術書」の修復はファンタジーならではの解釈や要素を織り交ぜながら描かれていて、マンガならではの面白さがあります。気になった方は是非、読んでみてくださいね。

※今回、本の補修工程についてまとめる際に、以下の国立国会図書館のサイトを参考にしました。

「修復」をする本当の目的

本を修復するくらいなら、買い直せばいいじゃない?と考える方もいらっしゃるかもしれません。それもそうなのですが、修復をするということの本当の目的は、「みんなに本を大切に扱ってほしいことを伝えたいから」なのです。

貧しい方、人種、思想、そういった壁は一切なく万人に開かれていること、誰にでも場所と本を提供することが図書館の使命なのです。(この図書館の信念がどのように『図書館の大魔術師』内で描かれているのかも今後書いていきたいテーマです。)

だから、公共の場での図書は1冊1冊を大事に扱ってほしいのです。

ここまで読んでくれてありがとう

いかがでしたか、このように『図書館の大魔術師』では多くの司書(カフナ)が登場し、それぞれの使命感のもと司書を全うしているのです。機会があれば「案内室」や「目録室」なんかの紹介もできたらと思いますが。。。

今回の記事で、「図書館で働く、司書として働く」ということの魅力と『図書館の大魔術師』の素晴らしさがお伝えできていたら幸いです。

それでは、また次回のnoteでお会いしましょう。

※僕(あごたふ)は普段、マンガコミュニティサービス「アル」でライターをやらせてもらっています。Twitterはこちら。マンガばっかり読んでいます。



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