心理的アセスメント 倫理姿勢・観察する姿勢 備忘録3
『公認心理師 実践ガイダンス1 心理的アセスメント』野島一彦・岡村達也 監修、橋本忠行・酒井佳永 編著、https://www.amazon.co.jp/dp/4909862021/
自分にとって、大切だったところのまとめ。勉強の備忘録3
●クライエントと手をたずさえて P13
クライエントの不安への配慮を欠けたまま、「査定者からの尊敬・理解・傾聴を、クライエントが感じられない」まま一方的に評価されるという体験が重なるとしたら、それは駄目な自分という「恥」を呼び起こし、結果的に心理支援を中断させる一因となる。
「心理に関する支援を要する」状態とは、その人が人生のどこかでつまずき、はまってしまって、自分の力だけでは身動きがとれなくなった状態と捉えることもできる。そこから抜け出し、それまでとは異なった新しい理解を得るための心理的アセスメントが必要で、そのためにはクライエントとの協働や一人ひとりへの思いやりが欠かせない。
●倫理的姿勢 P22
何の目的で情報を聴取し、その情報がどのように扱われるのかをクライエントにとってわかりやすい表現で伝え、同意を得たうえで、情報を聴取することが必要である。情報の収集に際して「覗き見的好奇心」がないか、クライエントの世界に土足で踏み込むような質問になってないか、心理職は常に自分自身を振り返る必要がある。
P24
知能検査と人格検査を、ろくにインターバルもとらずにおこなったとしたら、その結果は、クライエントの本来の認知的能力や心理的エネルギーを反映しないものになってしまうだろう。
●観察する姿勢 P24
観察の対象は、クライエントだけではない。検査者のうちに生起する感情や思考もまた、観察する必要がある。検査者と被検査者の相互作用がアセスメントに及ぼす影響を除外することはできない。
「防衛的」であることを「被験者の属性」としてのみ考えるのではなく、「検査者ー被検査者関係のなかで生じた現象」として捉え、この二者関係のなかで自分の内に生じていた感情や思考、そして自分がとった行動について観察し、それらが検査における二者関係にどう作用したのかについても考察する姿勢が必死。
●クライエントを理解しようとする姿勢 P25
ロールシャッハ・テストでは、質問段階でクライエントの体験を丁寧に、検査者が再体験できるように質問する。そうすると、比較的高い確率で、こちらが見ていた「コウモリ」とクライエントが見ていた「コウモリ」は違うものだった、という体験をすることができる。
Here and Now の視点、すまわち「いまなぜここにいるのか」「いまなぜこの話をしているのか」「その方の歴史のなかで、この瞬間がどのように位置づけられているのか」を捉える視点がアセスメントの基軸である。表面的な理解に陥ってしまうと、クライエントの本当のニーズを知ることはできない。
●症状や問題ばかりに目を向けず、潜在している可能性を見出そうとする姿勢 P27
短所や修正すべき課題を見つけ出すことは、比較的簡単なことである。その一方で、クライエントの長所やリソースは、問題や症状に多い隠されて見えにくくなっていることが多い。
クライエントの資源や長所に目を向け、クラエイントの可能性を見出そうとする姿勢、そしてクライエントが資源や長所を発揮できるようにするためには、どのような方策をとることが役立つかを徹底的に考える姿勢が、良い心理的アセスメントをおこなうために必要である。
●心理検査などのアセスメントツールを使いこなす力 P28
知能検査や質問紙法では、「カットオフを超えているか否か」「合成得点は平均からどの程度離れているか」など、数量的な情報のみに注意が向きやすい。しかし、知能検査や質問紙法であっても、観察に基づく質的な情報に目を向けることが、被検査について有用な示唆を与えてくれることが多くある。
同じ評価点6であっても、「鉛筆の握り方や芯が折れそうなほどの筆圧」から、余計な力が入ってしまっていることがわかる。「記号は乱れがちで枠内に納まっていない」・・・「サラサラとたくさんの記号を記入しているが、とにかく誤りが多い」という場合では、彼らが生活のなかで体験する困難、そして支援のあり方はそれぞれ全く異なっているだろう。
うつ病症状の自己記入式評価尺度であるSelf-rating Depression Scaleの「自分が死んだほうがほかの者は楽に暮らせると思う」という項目だけ空欄になっている場合、それを単なる欠損値として読み取るのではなく、そこだけに回答できなかった被検査者のメッセージを考えることの重要性を示唆している。
参考文献:津川律子(2018) 『面接技術としてのアセスメントー臨床実践の根幹として』金剛出版、村瀬嘉代子(2012)『アセスメントと仮説』『事例で学ぶ臨床心理アセスメント入門 臨床心理学 増刊第4号』金剛出版、Psychoanalytic Case Formulation. Guilford Press,1999. 成田善弘(監訳)『ケースの見方・考え方ー先進分析的ケースフォーミュレーション』創元社,2006.
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