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聖教新聞、2024/06/01、誓願 418~419ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉


 ファンファーレが鳴り響き、総長らと共に山本伸一が入場し、シドニー大学のシンガポールでの卒業式典が始まった。
 同大学のクレーマー総長も、キンニヤ副総長補も女性教育者であり、なかでも総長は、さまざまな社会貢献の活動が高く評価され、オーストラリアの「人間国宝」に選ばれている。
 副総長補が「推挙の辞」を読み上げ、総長から伸一に、名誉学位記が手渡された。
 引き続き、学生たちへの卒業証書の授与となった。名前が呼ばれると、四十五人の卒業生が順番に総長の前に進み出て、証書を受け取る。その時、総長は一人ひとりに、温かい言葉をかけていった。
 「今、どんな課題に挑戦しているの?」
 「社会に、しっかり貢献していくのよ!」
 「楽しみながら進むことが大切よ!」
 母親が、わが子を慈しみ、励ますような、ほのぼのとした光景であった。伸一は、そこに、情愛に満ちた大きな教育の力を感じた。
 謝辞に立った彼は、創価教育の父・牧口常三郎初代会長が、一九〇三年(明治三十六年)に発刊した『人生地理学』で、自らが着用していた毛織りの服の原料がオーストラリア産などであることを例に、誰人の生活も、世界の無数の人びとの苦労と密接に結びついていると論じたことを紹介した。そして、牧口が日本の軍部政府の弾圧で獄死したことを語った。
 「帝国主義の吹き荒れる時代のなかで、牧口会長は、いち早く、『地球的相互依存性』への自覚を促し、そして、他のために貢献し、自他共に栄えていくという『人類共生の哲学』を訴えたのです。
 さらに、人類は、『軍事』や『政治』や『経済』の次元で、他を圧しようとするハード・パワーの段階を終え、『人道』を新たな指標として、文化、精神性、人格というソフト・パワーによって、切磋琢磨していくことを強く提唱したのであります」
 伸一は、二十一世紀は、人道をもとに、思いやりをもって、自他共に栄える人類共生の時代であらねばならないと展望していた。

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