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【ドイツバレエ留学】初のコンクール挑戦4

夏休みが明け、ドイツでの2年生が始まった。
次に控えていたのは、ローザンヌコンクールのビデオ準備だった。
期限まで残された時間は1ヶ月。
クラシックについては、以前から娘が学校だけでなくオープンクラスにも通っている、尊敬する先生が引き受けてくださった。
クラシックの動画はレッスン映像のみで構成されるため、比較的余裕があった。

しかし、問題はコンテンポラリーダンスだった。
こちらはヴァリエーション作品として仕上げ、提出しなければならない。幸運にも、学校の先生が娘のコンテンポラリーを褒めてくれており、その紹介でプロダンサーとしても活躍する方に指導をお願いできた。

費用についても心配していたが、学校経由で依頼したからか、日本でお願いするよりもはるかにリーズナブルだった。
しかし、ドイツでのコンテンポラリーのレッスンは難易度が高く、
娘は
「いままでのバレエっぽいコンテじゃなくいから、わからなすぎて難しすぎてクソ下手クソ!でも先生がめっちゃ優しくていっぱい教えてくれる。
しかもクッソイケメン!」と奮闘していた。
母としては、娘、口が悪くなった?と、そっちの方が気がかりだった。

ある日、娘は
「今日は学校の授業と重なって個人レッスンはなしって言われたけど、『今週はローザンヌのレッスンを優先させてください』って翻訳機を見せながら交渉したら、今日もコンテの先生が来てくれた」
と報告してきた。
自分の意思を伝え、少しでもレッスンを受けたいという気持ちを交渉したらしい。
それ以来、
「先生が15分だけ見に来てくれるって!その気持ちがすごく嬉しい」
「今日は小さいスタジオ空いてたから結局2時間くらいみっちりレッスンしてくれた!」
などと嬉しそうに話していた。

クラシックもコンテの先生も応援してくれて、急なお願いだったのに時間を見つけてはレッスンしてくれた。
こうした積み重ねが確実に力となり、娘も次第に自信をつけていった。

撮影はなんとか期限の1週間前に終わった。
しかし、ここで問題が発生。
ローザンヌのコンテ作品は2分以内と決められていたが、5秒オーバーしていたのだ。
バレエ学校のオーディションビデオの場合、多少のオーバーは許容されることが多いが、コンクールでは失格のリスクがある。
何度も調整し、編集で5秒短縮する必要があった。
踊りの速度を変えると質に影響が出るため、最終的にカットすることがベストとの判断に至ったが、先生たちは踊りをカットすることに強い抵抗があり、この調整には苦労した。

撮影後、娘は
「特にクラシックは全然満足できなかった。カメラの前だとこんなもんしか実力出せないんだなって悔しかった。
思い通りにできなくて、泣きそうになりながら踊ったから、ほんとに出来がわかんない。でもこれが今の私の精一杯なんだと思う。
何度撮り直しても結果は同じだと思う。
でも、少なくとも日本にいた頃よりもアラベスクは確実にきれいになった。」

とにもかくにも、ローザンヌの映像提出は無事に完了した。
何度も出場している子たちは本当にすごいと思う。
初めての挑戦だったし、慣れない作業で余計にテンパっていたのかもしれない。
母としては、ここまでできたこと自体が十分な達成感だった。

ビデオ審査の結果は1週間ほどで届く予定だった。
しかし、結果を待ちわびるゆとりもなく、
次はYGPの準備、そしてヨーロッパの国立バレエ学校へのオーディションも5校ほど受けることになっていた。
次なる挑戦へ向けての準備が始まったのだ。


そして、ローザンヌの結果が届いた。

「残念ながら選考の結果、落選となりました。」


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