ものがたりまめ2
ふと、幼い記憶を思い出した。
ある人から、コーヒーと紅茶どちらが好き?と聞かれた。
即答で、「コーヒー」。
紅茶が嫌いなわけではない。
留学先で訪れたあの街で、大好きなフレーバーも見つけた。
でも、やっぱり馴染みがあるのは昔から飲んでいるコーヒー。
いつから飲み始めたんだっけ。
記憶を手繰り寄せてみれば、高校生の時にはもう飲んでいた。
ある友人から、「ブラックコーヒーなんて飲めなさそうな顔してるのにね。」と言われたような気がする。
じゃあ、いつからかなあ。
台所に立った時、思い出した。
小学生の時からだ。
小学生の時、土日は必ず祖父が相手をしてくれた。
午後10時を過ぎると祖父は必ずコーヒーを飲むのだ。
いつからか、「飲む?」と聞かれるようになり、小さな小さなカップを戸棚から取り出すようになった。
お湯は熱い。
やけどしないようにと、お湯を注ぐのは祖父の係、ぼくは砂糖とスプーンを用意する係。
びんに入ったざらりとした砂糖をかき混ぜるのが好きだった。
祖父はそれをざっくりとすくってコーヒーにこれでもかと入れる。
甘いの好きだなあ。
そう思いながらぼくはひとさじぶんだけ自分のカップに入れていた。
二人でほっと息をつく時間が好きだった。
ぼくがコーヒーを飲んで落ち着く原点はここにあったのかもしれない、と思った。
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