マガジンのカバー画像

私の映画鑑賞録2023(ネタバレ感想文)

83
年間84本鑑賞(新作34本 旧作50本)。内再鑑賞26本、劇場鑑賞71本。新作ベストは邦画『春画先生』、洋画『バービー』。
運営しているクリエイター

#カウリスマキ

映画『枯れ葉』 愛に溢れた映画。泣いちゃったよ(ネタバレ感想文 )

星5評価していますが、カウリスマキ作品の中で突出しているかというと、そうでもありません。 しかし、最近の、特に今年の(私が観た)新作の中では突出した作品です。 シンプルな話で、私の感想もシンプルです。 愛に溢れた悲喜劇です。 カウリスマキの映画愛、音楽愛、そして世の中と市井の人々に向ける愛の眼差し。 世界は悲劇と喜劇が隣り合わせていて、でも、生きていればいいことがかならずある。そういう愛に満ちた映画。 ネタバレになるので詳しくは言いませんが、最後に出てくる犬の名前が、

映画『愛しのタチアナ』 とってもロケンロールな話。マジでw(ネタバレ感想文 )

つまらねえ日常から逃げだすぜ!現実からの逃避行! ダチ誘って車ブッ飛ばすぜ! ちょっとそこいくお嬢さん、何?港に行きたい? OK、オイラの車に乗りな! だけどオイラが愛してるのはコーヒーとウオッカだけだぜ! というロケンロールなストーリー。 ワハハハ。マジでマジで。 女なんて写真ばっかりパシャパシャ撮って現実的でさ、 男なんてミエっぱりで自分の話ばっかりして、遺跡よりウオツカの方がいいなんて自分勝手でさ、 というロケンロールな話。マジでマジで。 ロックじゃなくて、ロケンロー

映画『真夜中の虹』 マックイーンやイーストウッドに申し訳ない(ネタバレ感想文 )

カウリスマキの長編第5作。「労働者三部作」の2作目と言われる一品。 原題は「Ariel(アリエル)」。 最後に登場する船の名前がこのタイトル。 なぜこの邦題かというと、ラストで流れるのが「虹の彼方に(Over the Rainbow)」。『オズの魔法使い』(1939年)ですね。 私は『パラダイスの夕暮れ』(86年)(労働者三部作の1作目でもある)で、カウリスマキは「去る者(去ろうとする者)」の話が多いと書きましたが、去りゆく者が乗る船がタイトル(原題)であること、その先を「

映画『ラヴィ・ド・ボエーム』 アキの永遠のテーマはボヘミアンだ(ネタバレ感想文 )

2007年以来の再鑑賞。 初鑑賞時は気付かなかったのですが、プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」で有名な、アンリ・ミュルジェールによる「ボヘミアンの生活の情景」という小説の映画化です。 アキ・カウリスマキは構想に15年もかけて「原作を台無しにしたプッチーニへの復讐をこめて」映画化したそうです。なんだそれ? 15年もかけて復讐するほど原作を台無しにしたのでしょうか? そのせいでしょうか、劇中「オペラは死んだ芸術」という台詞を吐きます。 そしてなぜかエンディングは日本語の歌『雪の降

映画『パラダイスの夕暮れ』 カウリスマキの「男と女」マジで(笑)(ネタバレ感想文 )

私、フィンランドの映画監督、アキ・カウリスマキ好きなんです。 本作は2007年以来の再鑑賞。 本作はカウリスマキの長編3作目。 カウリスマキの『男と女』。ワハハハ、マジでマジで。 本家『男と女』(1966年)はレーサーと未亡人だけど、本作はゴミ収集人とスーパーのレジ係。ワハハハ。 しかもカウリスマキ常連のマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンの夢の共演! カウリスマキは小津安二郎が好きなんです。 小津好きの映画監督は数多いますが、「小津の進化系」を見せてくれるのは