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私の映画鑑賞録2023(ネタバレ感想文)

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年間84本鑑賞(新作34本 旧作50本)。内再鑑賞26本、劇場鑑賞71本。新作ベストは邦画『春画先生』、洋画『バービー』。
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2023年9月の記事一覧

映画『春婦伝』 野川由美子3部作はもっと評価されていい(ネタバレ感想文 )

鈴木清順好きだってことは以前も書きましたっけ? きっかけは大学生の時に観た『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)。 『ミツバチのささやき』(73年)は生涯一の「最愛映画」ですが、 『ツィゴイネルワイゼン』は生涯一の「偏愛映画」。 この『春婦伝』は、40年近く前(清順初心者だった頃)に深夜の地上波放送で鑑賞し、その後2006年にケーブルテレビで再鑑賞して以来の再鑑賞。 そして、初の映画館での鑑賞。 たぶん最初はエロ目的での鑑賞だったと思うけど(笑)、二度目の時は(結果、遺作と

映画『ミツバチのささやき』 我が人生最愛の映画(ネタバレ感想文 )

1973年のスペイン映画ですが、日本での公開は12年後の1985年。 私が大学生になって上京して、最初に観た映画がこれ。 今は無き「シネ・ヴィヴァン・六本木」という西武系ミニシアターが公開館だったようですが、私が見たのは二番館だったのか再上映だったのか、「有楽シネマ」という、有楽町の駅前ビル(今はイトシアの敷地だと思う)の2階にあった映画館でした。 その日以来、30年以上にわたる私の「最愛映画」で、おそらく今回が14年ぶり9度目の映画館での鑑賞(DVDも持ってるんだけどね)。

映画『レディ・バード』 母と街と自分の名前について(ネタバレ感想文 )

父と子と聖霊の御名において、アーメン。 この映画は、まるでそのカトリックの祈りに呼応するかのように、嫌いだったり反抗したりしていた「母と街と自分の名前」について「受け容れる」までの物語です。 「受け容れる」とは「大人になること」です。 若い時は早く「大人」になりたいんですよ。エッチも含めて。 でも、思い通りにならなくてジタバタしているうちは、まだ大人になれない(そのジタバタが若さの特権でもあるのですが)。 『バービー』(2023年)が良かったので、グレタ・ガーウィグの他

映画『バービー』 フェミニズムの歴史と現在地。今観るべき作品。(長いネタバレ感想文 )

皆さんが「フェミニズム」という単語にどういう感情を抱くか分かりませんが、私はネガティブなイメージがないため、無頓着に使用しますのでご了承ください。 私は時折、近代カルチャー史(文化・芸術作品)における女性の扱われ方を考察することがあります。 noteだと、「探偵」における女性史的なことを長々語りました。 女性映画監督とフェミニズムのあり方にも興味があります。 (今回は海外の監督を中心に語ります) 「男社会」だった映画界でのエポックメイキングは、ジェーン・カンピオンの『ピ

映画『エドワード・ヤンの恋愛時代』 まるでウディ・アレン(ネタバレ感想文 )

私がエドワード・ヤンを好きになったのは、彼が亡くなった後です。 癌でしたかね。7年もの闘病生活の後、2007年に59歳で逝去しています。 結果として遺作となってしまった『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年)は若い頃に観ていたんですが、その時はピンとこなかった。 好きになったきっかけは、2017年に4Kレストアされた『牯嶺街少年殺人事件』(1991年)。衝撃の236分。思い出しただけでも鳥肌が立つ。 そして、その後観た『恐怖分子』(86年)で完全にノックアウト。 映画ってこ