建物探検隊
建物管理の面白いところの一つは、普段絶対に入れないところに、入れることです。
屋上に、免震層、ポンプ室にEPSの中、などなど、とにかく面白い場所がたくさんあり、5年勤務していても、つい最近まで足を踏み入れたことがなかった部屋もあるほどです。その中で、とても印象に残っている場所の一つが、機械式駐車場の中です。
ある時、毎月来て下さる、メンテナンス業者さんから、作業中に呼出しがありました。駐車場内の、消防設備の不具合についてお伝えしておきたい、とのこと。見ないとサッパリ分からないので、現場に連れて行っていただくことにしました。
現場は、車が格納されている地下のスペースということで、1階の、入口の乗降室のシャッターを開けてもらい、車が入庫する時のように、ターンテーブルに乗りました。ヘルメットを被ってしゃがんでくださいと仰るので、パンツスーツ姿にヘルメットを被り、ドキドキしながらターンテーブルの真ん中に座ります。
地下に居らっしゃる同僚に合い図を送られると、ターンテーブルが回り、下降を開始しました。しまっていかれる車の気分を一瞬味わい、彼らがしまわれる場所に到着。ターンテーブルの先を見ると、いろんな種類の車が、たくさんのパレットに乗って奥まで連なっています。
オオッ!と驚いている私に、業者さんが説明してくれます。入庫されると、車は奥に移動され、呼び出しがかかると、該当のパレットが奥から引き出されるそう。長細いパズルみたいデスね。そして、火災時の消防設備起動のための装置ですが、四方の壁と、奥に向かって車と水平に、線が張り巡らされています。駐車場内の温度が急激に上がると、この線が膨張し、消火設備が作動するという仕組みなのだとか。
今回は、一定の高さに浮いている状態のその線が、たるんできている、というお知らせでした。この高さでは、背の高い車が入庫した場合、いつその線に触れてしまうか分からないとのこと。万一触れて切れたりした場合、消火剤が車に降り注ぎ、特殊な薬剤による車への大きなダメージが懸念されるというお話でした。自分達の管轄ではないのですが・・と、自分達の仕事の領域を超えて、伝えてくださったのでした!
オーナーサイドに報告し、至急対応してもらったのですが、この時に、業者さんとの普段のお付き合いの大切さを、改めて実感しました。良好な関係でないと、“自分達の仕事ではないし、別にいいや”となってしまうからです。
“事故や不具合、不便になる出来事が、起こる前に潰す”という、仕事柄、とっても地味で、評価されにくい仕事と言えばそうですが、一つその可能性を潰せた、という達成感が、この仕事のやりがいの一つなのです。