経年による変化

退去後は、原状回復工事を担当する業者さんが、カーペットや壁紙を交換したり、傷を補修したりしてくださいます。

その後、次のご入居者にお部屋を引き渡す、という流れになるのですが、物件が立って10年が近くなるにつれ、ここ2、3年でいろいろな変化が出てきました。ご入居後に、“ここが気になる”というお声を、よく聞くようになってきたのです。

扉ががたつく、シャワーホースから水漏れがする、洗濯機が臭う、浄水器からの水漏れが止まらない、などなど。経年劣化による不具合や故障が、いろいろと出始めているようでした。原状回復の際、業者さんも対応してくださいますが、どうしてもいろいろ漏れが発生します。

建物内に、簡単なメンテナンスを行う担当部署が常駐している物件ではないですし、メンテナンス要員が車で巡回し、複数の物件を担当する、といったサービスも利用していない現状、誰かが対応を行わないといけません。

こんなことまでコンシェルジュがするべきなのか!?、という議論はありますが、本当にそれが深刻で、何か対策が必要であれば、決定権を持つ部署に、現状を報告し交渉するべき、と思っています。今のところそういった話にはなっていないので、目の前にある問題を無視して放っておくわけにはいかず、“もはや業者じゃないか”、と笑われながらも、自分の信じる道を進むことに決め、各部屋のチェックを、一人で細かく行うようになりました。

そこに住むご入居者と、管理側の目線では、確認の仕方や、それを行う場所が変わってきます。できるだけ当事者の目線で、を心がけ、キッチンの棚やクローゼット、引出しに、蝶番の外れはないか、異音はしないか、歪みや傷、汚れはないかを確認します。

ドアも、開け閉めしてみて、スムーズに開閉できるか、レールのストッパーなど部品の壊れはないか、をチェックします。臭いが気になるようであれば、オゾン消臭剤を設置したり、壁紙に消臭スプレーを振り、換気をする、を繰り返します。

洗濯機は、鼻を入れて臭いを確認。臭いが気になる場合は、高温洗浄したり、カビキラー洗浄を繰り返し行います。シャワーは、実際にお水を出してみて、ホースからの水漏れがないか、ヘッドは傷んでいないかを確認。間接照明や、換気扇、冷蔵庫内の電球も、忘れずに交換します。

空室が出る度、これを繰り返しているうちに、いつの間にか居室内設備に詳しくなり、ますます面白くなってきました。「入って右のベッドルームの、窓の網戸が・・」「ガラスの部屋の、扉のレールの上の部分の部品が・・」と、話し始められた時に、異なるタイプの間取りの中から、該当タイプの居室に入った時に目に入る景色を思い出して、その状況説明に、付いていけるようになってきたからです。

次の方がご入居される前に、何度も居室に入りチェックして、一つ一つ問題を取り除きます。ご入居の際には、ベストを尽くした状態にし、何もなかったかのような顔をして、お引渡しします。この地味さが、とても好きです。

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