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「ピザ」と「ピッツァ」は同じである


「ピザ」と「ピッツァ」

以前にTVを観ていた時の話である。東大卒でクイズ王などと称する伊沢君が何かのクイズ番組に出ていて、「ピザ」と「ピッツァ」は別物であるという説明をしていた。「ピザ」はアメリカ発祥でオーブンを使用し、「ピッツァ」はイタリアのナポリ発祥で石窯を使用するものらしい。
 
だが、私は一様に「ピザ」としか言わない。メニューに書いてあって、注文に誤解がないようにするために文字の表記通りにやむを得ずに読むことはあるかもしれないが、基本的に「ピザ」という表現で十分だと思っている。
 
英語でもイタリア語でも [pizza] の表記で、「ピッツァ」という発音もほぼ一緒である。アメリカ人にしろイタリア人にしろ、オーブン焼きか石窯焼きかで「ピッツァ」という表現を変えたりはしない。

マルゲリータ

ピッツァとはなにか?

では、日本人が「ピッツァ」と呼びたがるイタリアの「ピザ」とはどういうものなのか。調べてみると、イタリア国内でも地域によっても違いがあり、ナポリ風やローマ風のほか、フィレンツェ風やシチリア風などがあって、生地の焼き具合や具の内容が異なっているという。
そして、もっとも伝統のあるナポリの「ピザ」は、「真のナポリピッツァ協会(AVPN)」という団体によって伝統を守る形で定義が定められているそうだ。生地には「小麦粉、水、酵母、塩」のみを使用して手だけで伸ばし、薪などの木材を使用して石窯で焼くというものらしい。2006年には「真のナポリピザ協会」の日本支部も開設されている。
 

日本のピザ専門店

恐らく、日本の各地で本格的なピザ専門店ができ初め、修業を積んだ日本のピザ職人たちが自分たちの作る「ピザ」はナポリの伝統的な本格的な「ピザ」であり、アメリカ風の冷凍食品として出回っている「ピザ」とは違うことを強調するために「ピッツァ」という表現にこだわったのだと思われる。そして、その味を求める客たちも同じように「ピッツァ」という言葉にこだわって使ってきたのだろう。 
 

シチリアン・ピザ
 

「ピザ」と「ピッツァ」の発音

製法の違いならば、誤解を招かないように「ピザ」でいいはずである。ナポリ風「ピザ」と言えば違うものだと単純に理解できる。それを「ピザ」と「ピッツァ」で言葉を分けるから紛らわしくなり、人によってはアメリカ人が「ピッツァ」という発音ではなく「ピザ」と発音していると勘違いしている人たちまでいる。だが、アメリカ英語でもイタリア語とほぼ同じ「ピッツァ」である。イタリア語の方が「ピ」で多少の間延び感はあるが、ほぼ一緒と思っていい。
(pizza [ˈpiːt.sə] 最初の[piː]の長さが少し違う程度でほぼ一緒の発音である)

日本での流通

ではなぜ、日本では長い間「ピッツァ」ではなく「ピザ」という言葉が一般的に広まったのだろうか。戦後、国内でイタリア人による店舗のメニューにしても、アメリカから「冷凍ピザ」が輸入されるにしても[pizza]という表記がなされていたはずだ。それが「ピザ」という言葉で広まっていったのは、当時の日本人に「ピッツァ」という言葉は言いづらかったからなのかもしれない。詳細は不明であるが、輸入業者などが国内で広く流通させようと「ピッツァ」ではなく、言いやすいように「ピザ」という言葉を選んで展開させたのかもしれない。
  

石窯焼き

言葉について

言葉というのは広義の意味と狭義の意味の両方があり、趣旨によって使い分けがなされる必要がある。狭義の意味にこだわったからと言って、広義の意味を簡単に否定すべき話ではない。個人的なこだわりで「ピザ」と「ピッツァ」という表現を分けるにしても、広義の意味としての「ピザ」を否定できる話ではないのだ。「ピザとピッツァは違う」という主張は、こだわりをもった狭義の意味でそうであるにしても、広義の意味を否定しているという点では正しくないのだ。なので、東大クイズ王などと称している伊沢君は、広義の意味で許容されるはずの表現を否定している点で間違っていることになる。
 
ちなみに伊沢君はTV番組で「モッツァレラチーズ」においても言及しており、手で引きちぎっていないものは「モッツレラ」ではないとやっていたが、これも許容されるはずの広義の意味を否定している点で間違っていることになる。
 
私は今後も、イタリア風「ピッツァ」であってもできる限り「ピザ」と言おうと思っているし、熟成させていないフレッシュチーズであれば包丁で切られていても「モッツァレラチーズ」と呼んでいきたいと思っている。




(写真)
CC BY-SA 4.0 File:Pizza Margherita in Naples 2015.JPG by Kos88
 CC BY-SA 3.0 File:Pizza im Pizzaofen von Maurizio.jpg by Claus Ableiter

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