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東京オリパラの残り香。ANA「HELLO 2020 JET」JA741Aの悲哀
2021年7月から9月にかけて開かれた東京オリンピック・パラリンピック。
スポンサーの全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)は、大会の開催を記念してさまざまな特別塗装機を運航していました。
それらはオリパラの閉幕とともに次々と通常の塗装へと戻されましたが、実は羽田空港に1機だけカラフルな「TOKYO2020」のデザインを残したまま駐機している機体があります。
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その名は「HELLO 2020 JET」。
ANAが2018年1月に国内線に就航させたものの、搭載エンジンの問題から東京オリパラの期間中に空を飛べなかった特別塗装機です。
特別塗装機「HELLO 2020 JET」
「HELLO 2020 JET」のデザインはANAが開催した「東京2020機体デザインコンテスト」の応募作品から選ばれました。
この塗装が施されたのはボーイング777-200ER(登録記号JA741A)。機体側面には富士山や桜といった日本の自然や、さまざまな大会種目のシルエット、そして東京スカイツリーや東京タワーなどの建造物が描かれています。
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機内もオリパラ仕様となっており、座席シートにはオリンピックとパラリンピックのエンブレムがデザインされたヘッドレストカバ−が装着され、客室乗務員も特別デザインのエプロンを着用していました。
「HELLO 2020 JET」は2018年1月29日に羽田発福岡行のNH243便でデビューし、派手で色鮮やかな機体は各地で注目を集めました。
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しかし2020年に入ると状況は一変。コロナ禍による航空需要の蒸発と東京オリパラの延期、そしてプラット&ホイットニーPW4000系列のエンジンで発生した事故が「HELLO 2020 JET」の運航に暗い影を落とします。
オリパラ輸送のシンボルになるはずが……
新型コロナの感染拡大に伴って出入国の制限が強化された上、県をまたぐような長距離の移動の自粛が求められたため、航空機の利用者は激減。国際線、国内線問わず大幅な減便を余儀なくされます。
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ANAは運航費用を抑制するため大型機の整理に着手し、国内線に投入しているボーイング777-200と、長距離国際線に投入しているボーイング777-300の退役が進められました。
国内線に就航していた「HELLO 2020 JET」は、2020年7月に開幕する予定だった東京五輪が、2021年7月からの開催になったことで、そのままの塗装で運航を継続していましたが、そこに搭載エンジンの問題が追い打ちをかけます。
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まさかの運航停止へ
2021年2月、ユナイテッド航空のボーイング777-200のPW4000系列型エンジンが離陸直後に大破し、エンジンカウルなどが民家に落下するという事故が発生しました。
2020年12月にはJALの機体でも同様の事故が発生したため、国土交通省はPW4000系列型エンジン搭載機の商業運航停止を指示。運航停止の対象機材となった「HELLO 2020 JET」は、よりにもよって一番の晴れ舞台である東京オリパラの期間中に空を飛ぶことなく、羽田空港の駐機場で閉会の日を迎えることになります。
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2022年5月現在、JA741Aは「HELLO 2020 JET」塗装のまま羽田空港に留まっています。
ANAはPW4000系列エンジン搭載機について第1四半期中(4月―6月)の運航再開を目指しているとのことです。東京オリパラの残り香をまとった機体が再び羽ばたくことができるのか、要注目です。
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