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子連れでゆっくり過ごせる酒場「ニューサカバペンギン」を作った理由
2023年8月28日、鹿児島の騎射場に、新店舗ニューサカバペンギンがオープン。
僕ら夫婦にとって2店舗目の飲食店。
コンセプトは、子連れでもゆっくり過ごせる酒場です。
おかげさまで、開店からたくさんの方に来ていただいて、順調にスタートできました。本当にありがとうございます。
年末年始を経て、少し落ち着いたこのタイミングで、あらためて僕ら夫婦がニューサカバペンギンを作った理由をまとめてみたいと思いました。
文章にしてお伝えすることで、僕ら夫婦がお店に込めた意図を、より深く理解していただけたらと思っています。
長文、また、いくつかのnoteにまたがるとは思いますが、読んでいただけたら嬉しいです。
・子連れで外食することの大変さが、わかっていなかった。
僕は学生時代から、酒場が好きでした。いろんな酒場に通ったし、スタッフとして働いてもいました。酒場で食べる、飲むだけじゃなく、いろんな人と出会って、話すことも楽しかったからです。
結婚してからも、はなちゃんと一緒にいろんな酒場に行きました。妊娠がわかってからも、たまに行ってました。子どもが生まれて、数ヶ月はあまり外食自体をしていませんでしたが、僕はそのうちまた行けるようになるだろうとのんきに構えていました。
でも、それは間違っていました。
子連れで外食する大変さを、まったくわかっていませんでした。
赤ちゃんには、赤ちゃんの大変さがありました。
べビーカーでおとなしく寝ていてくれる時間は短くて、
飲食店では、常にどちらかが抱っこしてないといけませんでした。
動き始めたら、また違う大変さがありました。
テーブルの上のものすべてに興味を示して、
とにかくなんでもさわって、口に入れようとしました。
歩き始めたら、とにかくじっとしていてはくれませんでした。
店の中を歩き回り、すぐに外に出ようとしました。
しゃべりはじめたら、大きな声で僕たちに話しかけてきたり、
まったく食事に手をつけず、遊びたい、帰りたいと繰り返したり。
夫婦ともに、食べた気がしないままに、急いで店を出ることも多かったです。
いつになったら落ち着いて外食が出来るようになるのか、まったく見当もつきませんでした。
フードコートや、ファミリーレストランですら大変でしたから、酒場でゆっくりお酒を飲むなんて、想像もつきませんでした。
結局、家が一番落ち着くね。
そう言って、夫婦で酒場に行くことはほとんどなくなってしまいました。
・どんな酒場なら、子連れでゆっくり過ごせるか、考えてみた。
結婚して、子どもが出来るまで、夫婦で酒場に行っていろいろ話す時間が好きでした。
でも、子どもが生まれてから、なかなか夫婦でゆっくり話す時間がとれなくなっていました。
仕事が終わって、家に帰ってから、寝るまでの時間。
休みの日に、子供たちを寝かしつけてからの時間。
リビングでお茶しながら話すのも、ぜんぜん悪くないのですが、たまには外でお酒飲みながら、夫婦でゆっくり話したいなーと思っていました。
じゃあ、どんな酒場だったら、子供たちを連れてゆっくり飲みに行けるんだろう。そんなお店があったら、自分たちも行ってみたいよね?
そこからすべてが始まりました。
まずは、日本のどこかにもう誰かがそういう飲食店を作ってるんじゃないかな?と思って、先行事例を探して回りました。
そして、キッズスペースがある飲食店やフードコートなどを参考に、自分たちの作りたいお店のイメージを固めていきました。
・お店のレイアウトとして、なるべくテーブルとキッズスペースを隣接させたい。
・幼児用のおもちゃや絵本だけじゃなく、小学生から高校生まで幅広い年齢の子供たちに対応出来るようにしたい。
・保育園や屋内プレイパークのような内装じゃなく、お酒を楽しむ雰囲気がある内装にしたい。
・お酒も、ノンアルコールドリンクもたくさんの種類をそろえたい。
・大人が食べたいフードメニュー、お酒を飲みたくなるフードメニューを作りたい。
また、飲食店に限らず屋内空間で、子供たちが退屈せずに過ごせる場所ってどんな場所かなあ、と考えた時に、
・子育て支援施設の遊び場
・こども図書館
・小学生以上になったら漫画喫茶
などが思い浮かんだのですが、もうひとつ子供たちが大好きな場所がありました。
自分たちのおうちです。
自分たちのおうちは、子供たちにとって、好きなおもちゃや本があり、遊び場があり、いつもそばにお父さんやお母さんの存在を感じられる場所。
大人にとっては、人の家におじゃまするのも、自分の家にお招きするのも、なかなかに気を遣います。
でも、子連れでの「家飲み」ってかなり落ち着きますし、食べ終わった子供たち同士が遊んでいる間は、大人たち同士でゆっくり話せたりもします。
遊び場や図書館、漫画喫茶、そして自分たちのおうち。
ここから、それぞれの要素を取り入れて、子供たちが「もう帰りたい」と言うことなく時間を過ごしてくれる環境が整えられた、大人たちにとっても魅力的な酒場を作り上げる。
一見、無理難題に見えましたが、もし実現できたら、と考えるとドキドキが止まりませんでした。
・実現するために考えた、具体的なポイント。
今回、内装デザインをお願いしたのが、1店舗目のペンギン酒店と同じ、ネジアーキテクツの上間さんでした。
(ネジアーキテクツ上間さんのインスタグラム。他にもたくさん、おもしろいコンセプトのお店や家を作ってます)
僕たちがお店のコンセプトを作った段階で、上間さんに入ってもらい、そのコンセプトに基づいて具体的にお店を作り上げていくところから、一緒に話を進めていきました。
・お店のレイアウトとして、なるべくテーブルとキッズスペースを隣接させたい。
→結局キッズスペースがひとつだけだと、そのまわりの席だけが人気になってしまい、その席に座れない方には、来店する意味がなくなってしまいます。
なので、大きなキッズスペースをひとつではなく、いくつかのキッズスペースを作って、出来るだけ多くのテーブルをその周りに配置するレイアウトを検討しました。
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・幼児用のおもちゃや絵本だけじゃなく、小学生から高校生まで幅広い年齢の子供たちに対応出来るようにしたい。
→兄弟姉妹で来ることを考えると、幅広い年齢に対応できるものを準備したいと思いました。
低年齢の子供たち用のおもちゃや絵本だけじゃなく、小学生、中学生、高校生まで楽しめるように、各年齢の男女に人気の本や漫画などもそれぞれ充実させていこうと思いました。
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・保育園や屋内プレイパークのような内装じゃなく、お酒を楽しむ雰囲気がある内装にしたい。
→保育園や屋内プレイパークの中では、ゆっくりお酒を飲む気になれないと思いました。
あくまでも酒場やレストランとして、大人だけでも利用したい雰囲気の、落ち着いた内装にしようと話しました。
おだやかなトーンの青色と、木の色を使って、コンクリートの天井と床面を活かした内装を提案していただきました。
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・お酒も、ノンアルコールドリンクもたくさんの種類をそろえたい。
→もちろん昼間も営業するので、コーヒーやソフトドリンクなどの種類も必要。それに加えて、昼間も夜も、お酒の種類を豊富に用意することで、お酒を飲む人も飲まない人も一緒に楽しんでもらえるようにしました。
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・大人が食べたいフードメニュー、お酒を飲みたくなるフードメニューを作りたい。
→基本的には大人向けの酒場メニューを作って、そこから子供たちが好きなメニューを抜き出して、アレンジすることで、大人も子供も嬉しいメニューを作りました。
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自分たちの作りたいお店をカタチにしていくために、議論を重ねていったのですが、さらにこの3点については、さらに深く考えました。
・トイレについて
・授乳室について
・そもそも個室にするか、しないか。
ひとつめの
・トイレについて
お店の設備、特に水回りは最初に作り込まないと、あとから変更が難しいです。
まず、子供たちのトイレに関しては、必要な設備がいくつかありました。
オムツ交換台、オムツ用ごみ箱、子供用の便器、子供用の洗面所。
これらを親子で入れる個室と組み合わせて、設置するというのがポイントでした。
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ふたつめの
・授乳室について
授乳室は赤ちゃんにとっての食事場所。
飲食店は食事をするための場所。
赤ちゃんにとっても、お母さんにとっても、落ち着いて授乳できるスペースを作りたいと思いました。
まず個室にして、カギをつけました。
授乳する時に、出来るだけ疲れることがないように、座面が広い、ひじ掛け付きのソファーを置きました。
授乳からオムツ替えまでは一連の流れだろうということで、オムツ交換台とオムツ用ごみ箱も置きました。
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最後の
・個室にするか、しないか。
子連れで外食した時に、個室だと、僕らも正直すごく嬉しいです。
他のお客さんのことも、ある程度気にすることなく過ごすことが出来ます。
でも、ニューサカバペンギンは、あえて個室を選択しませんでした。
逆に壁を取っ払って、すべての席を見渡せるようなレイアウトにしています。
隣の席とテーブルをくっつけられるので、席同士の距離も近いです。
キッズスペースも、あえて共用にしていて、別のご家族のお子さんたちと同じスペースで遊ぶようになっています。
これに関しては、賛否あるとは思いますが、現段階では個室にしなくてよかったなと思っています。
・ニューサカバペンギンの感じは、ちょっと大きなサイズの家飲み感
結局、僕ら夫婦がニューサカバペンギンをどんなお店にしたかったのか。
今回この文章を書きながら、僕が考えていたのは「ちょっと大きなサイズの家飲み感」がほしかったのかもしれないということです。
友人たちと過ごすおうちでの家飲みと同じように、食べ終わって遊んでいる子供たちと大人たちがちょこちょこ関わりながら、自分たちの子供も、ほかの人の子供も、どちらも気にしながら、全員で時間と空間を共有できたらいいなーと思っています。
子供が走っていたら、近くにいる大人が「あぶないよ」と声をかけたり、
使ったおもちゃをゆずりあったり、最後は大人も子供もみんなで片付けたり。
もしかしたらその中で、ちょっとめんどくさいことも、起こるかもしれません。
でも、いろんなめんどくささも含めて、ニューサカバペンギン特有の、なんだかあたたかな優しい時間と空間が出来つつあるとも感じています。
言葉にするのはむずかしいですが、ぜひ体感しにニューサカバペンギンに来ていただけるとうれしいです。
(僕たち家族も、お客さんとして過ごしてみて「かなり、最高!」って感じてます笑)
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