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推し将棋棋士へのファンレターが書けないと悩むかたへ


推し棋士に想いを直接伝えたい

将棋棋士のファンになるきっかけは、今ありとあらゆる場面に溢れている。さすがに地上波TV放送は少ないものの、ABEMAやYouTubeなどのインターネットTVや動画配信の全盛時代である。将棋と検索するだけで一日中将棋を楽しめる環境で私たちは生活している。

触れ合うチャンスが多ければ多いほど、この先生素敵!お強い!カッコいい!と思うのは必然だろう。
どの棋士先生も、将棋だけでなく指導や普及活動等のご経験から頭の回転が早く、人当たりも良く、会話も時折ユーモアを交えるなど社交性抜群だからだ。
将棋のイベントで揮毫してもらえたり、写真撮影が許可されていたりすると、画面で観ていた憧れの先生に至近距離でお目にかかる事もできる。
TwitterやInstagramなどで幸せな気持ちを呟くだけでは、溢れる想いを全部伝えきれない、もっとたくさん応援や感謝の言葉を届けたい!というかたに朗報がある。

「ファンレター」という万能ツールだ。なんだそんなこと知ってるよと言うなかれ。たったの84円で便箋3枚くらいに気持ちを綴って先生にお渡しする事ができる。
ところが、よし、書こうと意気込んでペンを取ったはいいが、そこで止まってしまった経験のあるかたはたくさんいらっしゃるだろう。学校ではファンレターの書き方なんて教えてくれない。しかも憧れの先生が目にしてくださると思うと余程文章に自信のあるかた以外はきっと書き出しの一文字目から悩んでしまう。
拝啓とかは堅すぎるかしら、とか、前略、といえば道の上よりみたいで(一世風靡セピア→若いかたはキョトン)変だよね、などと考えているともうそれだけで大変だ。
かくいう私も勇気を振り絞り、投函に至るまでに1年以上もかかってしまった人間だ。
そこで今回の記事では、読むだけでファンレターが仕上がることを目標として書き進めていきたい。


最初にする3つのこと

  1. 好きな便箋と封筒、84円切手を用意する

  2. 封筒に宛名を書いてから切手を貼る

  3. 一番伝えたいことをあらかじめ決める

2.については、宛名書きが終わっているだけで気分的に全然違うし、大きな前進だ。まずご自身の推し棋士・女流棋士が関東と関西どちらの所属かを確認する。日本将棋連盟公式ホームページの棋士データベースには所属が書かれていないので、下記将棋連盟関西本部に記載が無い先生方は関東所属と考えるとわかりやすい。時折関東・関西間で移籍される先生もおられるので注意したい。宛名の書き損じを考慮して切手は最後に貼ろう。

※2022年9月現在のファンレター宛先
【関東】
〒151-8516
東京都渋谷区千駄ヶ谷2-39-9
公益社団法人 日本将棋連盟 東京本部 気付 ◯◯先生

【関西】
〒553-0003
大阪府大阪市福島区福島6-3-11
公益社団法人 日本将棋連盟 関西本部 気付 ◯◯先生

※2024.10.1〜関東は下記新会館へ移転しました
【関東】
〒151-8516
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-5
公益社団法人 日本将棋連盟 東京本部 気付 ◯◯先生

3.が悩ましい。あれもこれもお伝えしたいことなんてたくさんある。ただ、多忙な推し先生に読んで頂けるなら一番に伝えたい事をはっきりと心に決めておくだけで、手紙の途中で着地できずに空中分解してしまう事を避けられる。
何か具体的なエピソードや、感動した一手、棋譜、イベントでの先生の振る舞いでもいい、ファンレターを出したいと思った最大のモチベーションに思いを巡らせる時間も楽しみのひとつだ。


手紙の文面で注意する3つのこと

  1. コワく、重くなっていないか

  2. ラフになりすぎていないか

  3. ご負担を求めていないか

自由に想いを綴るなかで注意したいのは、文字は想像以上にメンタルへの影響力が大きいところだ。実際、Twitterでもたった140文字なのに良くも悪くもズシンと心に響く文章を目にする事がある。顔が見えない自分と手紙を通しての初対面となるわけで、できれば先生には朗らかで元気の出る優しさに満ちたプラスの言葉をお届けしたい。例えば先生が負けて毎日悲嘆に暮れております、どうか頑張ってくださいなどと書かれても、申し訳なくは思われても嬉しいとはお感じにならないだろう。

逆に笑いを取ろうとするあまりに先生をイジるような物言いは、信頼関係が出来た間柄ならともかく、顔の見えない手紙ではちょっと失礼だと感じる。笑いの要素としてはよく使われる自虐ネタも、そのかたをよく知らないと笑ってよいのか戸惑うのでお勧めしない。
素直に、先生に感動したところや、周囲の評判など、先生が目にされて嬉しいとお感じになる言葉を意識して使いたい。誰しも自分が頑張ったところを褒められるのは気分がいいものだ。
書き出しは冒頭に書いたような拝啓、謹啓のようにビジネス書式でなくてOKだが、例外として季節の挨拶などはその手紙を書いた時節の風情も感じられるので好印象だと思う。

そして、気持ちはわかるものの、返信用の封筒などを同封して先生に返事を求めるのはマナー違反だ。私たちは日頃神社などで神様に願い事をして、返事をくださいと迫る事が無いのと同じである。忙しい先生が自分の手紙をお読みくださっているのだと感謝して、幸せに浸ろう。
どんなに人気の先生でも、ファンレターを書こうと思う人、さらに投函まで漕ぎ着ける人となると、かなり数が絞られてくるはずだ。大丈夫、こんなにも応援したいと思うような先生が手紙を読まずに捨てるなんて絶対に有り得ない。


封をする前の最終チェック

  1. 携帯番号など個人情報を書いていないか

  2. 枚数が多く重量オーバーにならないか

  3. 香りものはほどほどに

書き上げたら最後に日付を書いて署名するが、ここに個人の携帯番号やLINEのIDなどを書くのはNGだ。ご自身の個人情報保護の観点からも危険だし、先生方としても個人情報の入った書類として迂闊には扱えなくなり、何より顔も知らない相手に番号を知らされても困るはずだ。

また、必ずしも本名ではなく、SNSでの通称やアカウント名を使いたいというかたもいるだろう。その場合でも、封筒には自分の住所と名前を書いておきたい。なぜなら万が一、重量オーバーで切手の料金が不足していたら、差出人が分かれば差出人のもとへと戻されるが、不明な場合は受け取った先生方が料金を支払わなくてはならないからだ。

そしてこれはもう絶滅したテクニックかもしれないので蛇足だが、便箋に香りをつけること。読むときにフワッと香るのが印象づける、などと大昔の乙女雑誌には書いてあり、真に受けた私はせっせと香水の霧の中に便箋をくぐらせていた。これもたとえ石鹸の香りなどライトなものでも匂いに敏感なかたには迷惑でしかないので、自粛したい。

封をする時は必ず糊やセロハンテープなどしっかりと粘着力のあるものを使おう。可愛いマステが好きなかたもおられるだろうが、封緘には適さないのと剥がれて中身が露出したり他の郵便物にくっついたりしては大変だ。


デジタル時代にこそ、手紙を

ものすごいスピードでブラインドタッチを操り、文章を作成していく現代。Eメールであれば送信後は瞬時に相手に届く。投函したポストから、トラックに載せられて、配達のスクーターで運んで。こんな気の遠くなるような時間と人の手を介してやっと推し先生の元へと送り届けられる手紙は、もうそれだけで十分に価値があると思うのだ。

特に手書きの文字にはそのかたの人となりが表れる。文字が美しいに越した事はないが、たとえ文字に自信がなくとも、一文字一文字丁寧に、心を込めて書いたその手紙は真心がこもっていて、きっと推し先生の心を励ましたり、癒したりと大活躍してくれるはずだ。

実際に先生方へのインタビューでも、もらって嬉しいものとしてファンレターを挙げておられるかたは多い。私自身、推し先生の貴重な時間を私ごときが奪ってはならないと頑なに手紙を出さずにいたが、大盤解説会などの対面イベントの機会や参加できる人数も制限される今だからこそ、応援するファンの多さを実感していただき、推し先生の励みになるのならという気持ちが芽生え、初めてお送りした。

先生はもうお読みくださったのかまだなのか、知る術はないけれど、重要対局に向かう前の心の勇気にお役に立てていたなら本当に嬉しく、ファン冥利に尽きる。ファンがたくさんの応援の気持ちを届けて、推し先生が素晴らしい将棋を披露される。こんなに素敵なサイクルは他に無いと思う。

この記事を読んでくださったかたにはぜひためらわずに一歩踏み出して、推し先生のご活躍に追い風を送る仲間入りをして頂きたい。そして送ったという事実だけでご自身の気持ちも上がり、応援にもさらに熱が入り、楽しめることは間違いない。
手紙の向こう側には、きっと笑顔で読み進める推し先生がいらっしゃるのだ。

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