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『血と霧』1&2/多崎礼

吸血鬼×スチームパンクの『血と霧』
といっても、明確に吸血鬼という言葉は一度も出てきません。
血をカクテルのように接種することはありますが、普通に食事もするし、血を吸うために他人を襲うようなこともありません。
ただ、よくある吸血鬼の物語以上に血が重要な設定となっていて、その設定の面白さに、グッと惹かれました。


血によって階級や能力も決まり、血液の明度・彩度・色相で能力が判明するのが面白味のある設定です。
自身に流れる血はどのレベルか?それによって人生が決まってしまう世界。

・明度 → 強さ(レベル1から10)
・彩度 → 持続性
・色相 → 能力の種類(赤は肉体強化、青は思考を読む、緑は情報分析)

その設定を十二分に生かしつつ、ストーリーは進んでいきます。
主人公は一冊目の表紙にもなっているロイス・リロイス。血の明度はレベル9で、本来なら高い地位にいておかしくないはずですが、何故か下級街のバーに住み込みで探偵仕事をしています。
そこに「ルークという少年を探してほしい」と依頼がやってくるところから物語は始まる。
ルークは二冊目の表紙の少年であり、血と霧は彼ら二人の物語です。

割とよくありそうな始まり方で、設定は惹かれるものの、ストーリーはありがち?と思いましたが、徐々に面白くなっていき、中弛みするどころか、右上がりに面白くなっていきました。
終わり方も、潔い締め方をしていて、最初から筋が一本ピンと張っておりました。


読み終わって翌日。
改めて最初の方を読み返しました。最初読み始めは、まだまだ腰を据えずに読んでいたので、全貌を知った状態で、改めて読みたくなったのです。
ファンタジーやSFなど、知らない用語や登場人物が多い物語は、全容を知った後に、改めて最初を観たり読んだりすると以前より数倍の感覚で楽しめます。
読み進めて行くときは知らない楽しさがあり、改めて読む時は知っているからの楽しさがある、一粒で二度美味しいのは嬉しいモンです。

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