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少年よ本は好きか?のイタリアンシネマ

ある丘に小さな本屋があり、老人が一人で営んでいます。
ワンルームぐらいの大きさの本屋で、置いてあるのは古い本ばかり。表紙や角の部分なんかも紙がボロボロになっている本が多く見られました。

そんな本屋の前で、コミックを眺めている少年がいます。
彼はどうやら貧しいようで、本を買うお金は無いようです。老人は「一冊好きなものを持って行っていい」と言います。
プレゼントではなく、貸してやるから読み終わったら返しに来なさい、という意味でした。
少年は一冊選んで、近くの公園でさっそく読み始め、その日のうちに返しに来ました。老人も「早いな」と笑顔で驚きつつ、また別のコミックを貸しました。

そんな感じで、老人と少年の本を通しての交流を描く『丘の上の本屋さん』を観たのですが、これがとてもいい映画でした。


シーンはほとんどが老人の営む本屋で描かれていて、登場人物は本屋の老人、本が好きな少年、隣のカフェの兄ちゃん、それから本屋のお客さんが数名で、良い意味でこじんまりとしています。
少年がどういう家庭環境なのか?、どう考えているのか?、も描かれませんし、同じく老人の本屋での姿以外も描かれません。ですが、あれこれと多くを描かない分、ゆったりと落ち着いた気持ちで鑑賞出来ました。

さながら老人は少年にとって本のソムリエのよう。コミックを2冊続けて貸した後は、次にピノキオの冒険を渡し、それから白鯨や星の王子様も渡していました。
そして、少年が本を返しに来ると必ず老人に感想を聞かれます。少年は簡素ながら素直な感想を言うのですが、この時の少年と老人のやり取りが読書をする人にとって響くものがありました。

老人「本は自分で読まなきゃわからない」
少年「何を読んでもいいの?」
老人「もちろんだ。食べ物と同じだよ。食べてみなけりゃ好きか嫌いか分からない」

丘の上の本屋さん

上記は、老人と少年の会話の一部ですが、他にも色々とありました。老人の言葉はちょっと道徳過ぎる感もありましたが、後半では二人の会話シーンは音楽のみで語られていて、何を話しているのかが不明です。
きっと上記のような会話をしているのでしょうが、そのまま会話シーンにしてしまうとくど過ぎてしまうかもしれないので、音楽に乗せてスキップしていくのは良い演出だと思いました。
この映画、音楽自体もとてもいいですし、低くて渋い老人の声が心地いい。

noteである記事を読んで、面白そうと、Amazonプライムのリストに入れていた一作。
あまり見ることのない類の映画でしたが、落ち着いた空気の脚本と音楽が気に入った良いイタリア映画でした。


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