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吉田 翠*詩文*
2020年9月7日 16:57
どんな季節にしても、夕方というものは気持ちを鷲掴みにしてくる。忘れていた事をグッと空に浮かびあがらせて突きつけてくるかのように。あの時漕いでいたブランコの、キコキコいう音までも。歓声を上げた汗のほとばしりを。もう二度と会えない人の皮膚の温度を。やがてフェードアウトしてゆく切れ切れを、決して掴ませないように、大夕焼けという舞台装置に立ち上らせる。人の夕暮れ。ここを越えて、忘れ去る事が