「ゼロパーティデータ」はデータ活用のみちしるべとなりうるか
こんにちは、ペンシルです✍️
このnoteでは今話題の「0 Partyデータ(ゼロパーティデータ)」をテーマに、データ収集における現在と私たちの考える新たな視点についてお伝えしていきます。
改めまして、ペンシルの研究開発部門であるヒューマナライズマーケティング研究室の高木と申します。 主に心理学の分野を研究しており、その知見をもとに分析業務を行っています。
はじめに
プライバシー保護の強化が叫ばれる現代、
GDPR(EU一般データ保護規則)の適応やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)の制定など、世界的に以前にも増して個人の情報を取得することが難しくなってきました。その影響は日本企業にも及びます。
ユーザー個人の行動を追うことが難しくなり、
行動分析やセグメント、クラスター分析などユーザーを起点とした細かな分析をすることが困難な時代に突入しています。
颯爽と登場「ゼロパーティデータ」
そんな中、よく耳にするようになったのが「ゼロパーティデータ」。
以下のような概念にまとまっています。
ざっくり言ってしまうと、「ユーザーが同意して企業に渡してくれた個人のデータ」です。
今までのサードパーティデータ〜ファーストパーティデータと違い、ありのままのユーザーの情報を取得できると言われています。
現状の問題点
しかし、「ゼロパーティデータ」という概念にも問題があると考えています。問題は大きく2つです。
1. データをどうやって取得するのか
2. データを扱う or 解釈する我々マーケターの考え方
上記の通り、1つ目は、データ保護が進む中で「どうやって今後取得していくのか」です。この問題に関しては、様々な企業、マーケターが日々考え工夫し解決していくことでしょう。
よって、今回は2つ目について触れたいと思います。
2つ目は、データを扱う、または解釈する我々マーケター自身の考え方の転換です。
ここで1つ、このnoteを読んでいただいているみなさんに質問です。
「個人のデータを取得することが今よりも許されていた以前、そのデータを十分に活用できていましたか?」
この問いに自信を持って「もちろん!」と即答することができた人は少ないのではないでしょうか?
ぜひ、同僚の方にも質問してみてください。
何が言いたいかというと、
「個人のデータを取得することが難しくなった」と嘆く人は多いですが、今までも十分に活用できていなかったのなら、取得することが難しくなったとしても、現状と変化はないとも言えるということです。
しかし、「じゃぁ、いいか」とはいきません。
現状が変わらないということは安定しているように感じますが、「変化がない」ということは「安定」ではなく、変化の激しい現代社会において、停滞、むしろ衰退でしかないのです。
つまり「ゼロパーティデータ」という概念を受け、それを活用していくためには、我々自身も「データに関する考え方を変革していかなければならない」ということです。
「ゼロパーティデータ」活用の鍵は我々の視点にあった?!
では、もう一度サードパーティデータ〜ゼロパーティデータの概念をおさらいしましょう。
今の概念の主題は「どこで・誰が取得したデータなのか」という点です。ここに問題があると考えています。
データを分析・解釈する際、そのデータが「 "どこで" 取得されたか」よりも、そのデータは「 "どんな" 意味合いなのか・人が "どんな状態にいる時" のデータなのか」という点のほうが重要です。
そのデータの意味合いを理解していない分析や解釈の結果はねじ曲がってしまいます。
また、データの取得元を注視した分析はデータのつながりから意識を逸らし、単なる集計にとどまってしまう可能性があります。
そこで私たちが提案する概念は、データの "意味合い" にフォーカスした、以下のようなものです。
この概念ではその人が、どんな状況にいる時のデータなのかという点にフォーカスしています。
新しいけれど今までにもあった不可欠な指標『ルートゼロデータ』
さらに、私たちはこれではまだ足りないと考えています。
「ゼロパーティデータ」は
データの取得元という意味では
「ユーザーが同意し、提供してくれた個人のデータ」
データの意味合いという意味では
「ユーザーの細かなプロフィール情報」
ですが、現状のゼロパーティデータからみえるのは、あくまでも自身が「認識している自分」あるいは「こうありたいという理想の自分」です。
つまり「顕在化している自己」でしかないのです。
しかし、人間には自分でも意識していない部分、潜在意識や性格特性、欲求などが存在します。
どんな意味合いのデータかにフォーカスすることが大事なのであれば、顕在化している自己である「ゼロパーティデータ」の他にもう一つ、潜在化している自己という意味合いのデータ、つまり別次元のデータが必要です。
次元が違うわけですから、顕在化している自己と潜在化してる自己を混ぜて考えることは危険です(※)。
私たちはこの潜在化してる自己のデータを『ルートゼロデータ』と名付けました。
(※)例えば、潜在化している自己に対して訴求したとしても"潜在化"しているのですから、本人が認識していない部分であり訴求そのものは響きません。
訴求には顕在化している自己に対して行う必要があり、その訴求の中に潜在化された自己を刺激するような表現を組み込む必要があるのです。
あくまで、顕在化された自己は結果であり、その多くの原因は潜在化された自己の組み合わせ、掛け合わせにあります。この2つを一緒に考えてしまうと両方とも結果、または両方とも原因にみえてしまいます。
ルート(root)とは根っこという意味で、この様々な方向に張り巡らされた複雑な潜在化された自己が、観測可能な顕在化した自己を形づくっています。
(また、これからのデータ活用の道(route)となれば、という想いも込めています。)
サードパーティデータ〜ルートゼロデータまでをまとめたのが下図です。
これらの視点を活用し分析することで、自社のサービスをユーザーのどんな時の欲求に訴求するのかを判断しやすくなります。
『ルートゼロデータ』に関しては新規獲得にはもちろん、以前ご紹介した既存売上の最大化プロジェクトである『ロイヤルクラスタプロジェクト(LCP)』にもおおいに活用できると考えています。
そうは言っても、もちろん『ルートゼロデータ』には「ゼロパーティデータ」と同様、データの取得方法という課題が残りますし、潜在化された自己の解釈には心理学や行動経済学、社会学、生物学など様々な知識とアプローチが必要になります。
しかしこれらは将来的に必須スキルになると考えています。
なぜなら、将来的に今よりもより人のあり方、生活様式が多様化していくことが予想されます。
そうなると、もちろんデータも多様化していくからです。
これからの時代は、データを解釈するアプローチの豊富さが鍵になってきます。
『ルートゼロデータ』とWEBの未来
これからのWEBの未来の可能性の一つに二次元と三次元の境界が不透明になり、様々なサービスが一つのIDで連結するという世界線があります。(詳しくは次回触れます)
そんな未来がやってきたとき、
自社のサービスをどういった形で、どんな状況の、誰の、どんな欲求に届けるのか、どう届ければそのユーザーは幸せになれるのか、を今よりもいっそう、考えていく必要があります。
そんな時、大きなヒントを与えてくれるのが
『ルートゼロデータ』を含めた新しい視点だと考えています。
そして何より、そんな未来では『ルートゼロデータ』の取得も今よりも容易になり、不可欠になりそのデータをうまく取得し活用できる企業や個人とそうでない企業や個人の差が今よりも大きく開いてしまうでしょう。
ではどうやって取得するのか、どのように活用していくのかを含めて、次回は「WEBの未来とゲーミフィケーション」というnoteでお伝えできればと思います。
お読みいただきありがとうございました。