【映画感想文】『あたしの!』
日本人としてこの世に生を受けて、1つ残った唐揚げの所有権さえ主張できない生活を続けているとこの「あたしの!」という姿勢は新鮮に映る。
なーんてこと言っても、人生をまあ、織田信長の言うところの半分以上は生きてくると、ずうずうしくもなってくるもので。
先日、飲み会をはしごしてきた私は友人に「食べ物は少しでいいかも」と言いつつ、一番積極的に食糧の獲得に動いてた卑しさを思い出しながら
みずみずしい「あたしの!」の感想を書いていきやす。
映画のプロフィール
原作:幸田もも子「あたしの!」
監督:横堀光範
脚本:おかざきさとこ
出演:渡邉美穂、木村柾哉、齊藤なぎさ、ほか
102分 日本語
☆2.9
あらすじ
誰にでも正直に物申す関川あこ子(渡邉美穂)は
学校のプリンス・御共直己(木村柾哉)が留年したことで同じクラスになる。
新学年登校初日からざわめく教室、あこ子も例に漏れず、恋に落ちるのだった。
並みいる強豪が直己に告白して玉砕していくなか、あこ子も直己に告白する。
一度は振られるもまっすぐなあこ子はアタックを続ける。
しかし、親友の谷口充希(齊藤なぎさ)も直己に気があるようで、「もめたくない!」という気持ちとは裏腹に関係がこじれていく……。
感想(ネタバレあり)
いわゆるキラキラ映画と呼ばれる作品。
キラキラ映画って定義が難しいんですが、女子高生をターゲットとした恋愛映画で「少女漫画原作」とか「高校など学園が舞台」といった構成要素が主ですが、それが必須というわけでもなく。
おおむね、高校を舞台とした恋愛映画で演出がポップかつ俳優陣に若者に人気のアイドルなどが起用された作品というのが当てはまるんじゃあないですかねぇ。
キラキラ映画は一部からはその手軽さやポピュリズム的な俳優人の起用により、なんとなーくバカにされがちなジャンルですよね。
でもね、映画としてはなかなか骨太といいますか、若者に訴求するという点についてはかなり真摯に取り組まれているので侮れない。
というか、かなり面白い映画ジャンルなんですよ!
今回はですね、注目している渡邉美穂さんという女優さんが主演を務めるということでいち早く観てきました。(ただのおひさまです、すいません)
まあ、ここまで熱く語ってきましたが映画の感想としては少々微妙というのが正直なところ。
ぼくにとっては、キラキラ映画にはキャラの魅力がかなり要になってくると感じています。
今作はテーマとかコンセプトの打ち出し方が弱いと思っちゃった。
この映画は素直でまっすぐなあこ子が親友と同じ人を好きになっちゃったけど、その好きにもまっすぐに向かっていく。
あこ子は充希も直己を好きになっていそうなことに気づいて、「本気でいっていいのか」という確認までまっすぐ行う。
どちらも親友ともめたくない様子。
まっすぐ行くあこ子に比べ、充希は「わたしは大丈夫」と言いつつも、直己にアタックを仕掛ける。
3人は恋と友情のあいだで揺れ動きながらも、それぞれの答えを見つけていく。
あこ子の正直さや正直になれない充希のもどかしさ、
それによって壊したくない友情が壊れそうになってしまうこと、
彼女たちの友情は壊したくないという優しい直己
といった葛藤が面白い作品だと思う。
しかし、キャラクターの積み上げやコンセプトの打ち出し方が本当に弱い。
直己をかっこいいと思うきっかけがない。
初対面からかっこいいだけで突き進んでいく。
直己のアクションも恋人作るつもりはないといいつつも、女たらしのようにボディタッチをしてくる。
優しい人間性のほのめかしこそあるが、それをまっすぐ受け止められるほど丁寧には描かれていない。
映画サイズに直しているからか、各展開が唐突で物語になっていないように感じる。
人間性の表現も展開も上記した描きたい未来に向かってこなすように立ち現れていくだけ。
だから、キャラクターに魅力を感じないし、このあるある展開に一番のスパイスを加えているのはあこ子のキャラと充希との関係といったところだと思うけれど、それが効いていない。
「あたしの!」というタイトルから、そういうグイグイ系の女の子というのがコンセプトに来るのかと思うけれど、それがイマイチ伝わってこない。
設定を楽しむだけの展開がないから、グイグイ系の女の子よりも3人の恋模様だけに視線がいき、そうなってくると話自体はありきたりだなぁという評価に落ち着いてしまったというのが正直なところだ。
役者陣の演技は素晴らしかった。
齊藤なぎさはこういった小賢しい女子をやらせたら右に出るものはいない。
日向坂時代から知っている渡邉美穂がどんどん役者として目立ち始めているのもうれしい。
元気、強気といった属性のかわいらしい女性という枠で新しい選択肢になりうるパワーを感じた。