見出し画像

絵本『だれでものいえへ』ongoing project vol.13

ページ送りを考えながらストーリーを作る・編集者の目

ページ送りを考えながらストーリーを作る

『こども食堂』のための物語は、キーワードの説明でもリアルに『こども食堂』へ行くことを描くのでもなく、『おばけのこども』を主人公が『こども食堂』へ辿り着く、誰が読んでも面白いと思えるストーリーにすることが決まりました。

ストーリーはラフ段階ではノートにコマ割りを作って進めてきましたが、この先は『ページ送り』を考えながらの制作になります。
まず、ページ数に合わせた自作のノートを作ります。
コピー用紙を折って重ねて、今回のページ数11見開きのノート、擬似的な束本を作ります。
こうすることで、それぞれのページを『開いて見る』かんじがわかってきます。

人によって色々な方法があります
真ん中を輪ゴムで止めてノートにするひとも
わたしはコピー用紙を折るだけ

さて『おばけのこども』を主人公にして『面白い』ストーリーを作る、ですが。
『面白い』にも色々あるじゃないですか、、、。
最初に思いついたのは
『おばけの家族が災難にあって大変な思いをするけれど、どうにか『こども食堂』に辿り着き、こどもたちは大人からの贈り物をたくさん受け取って、自分の力で生きていけるようになる』
という物語でした。

しかしこれでは、家に住むおばけが町の中ではとても小さかったりして、おばけの大きさが全く実感できないですよね。
矛盾しているので、自主的に描き直します。


最後の後ろ扉の絵を紛失してしまいましたが、そこには
『おばけのこどもたちは自分で自分の家を作る』シーンが描かれていました。
これを持って、編集者土井章史さんの元を訪ねます。

編集者の目


土井さんの指摘は
「まず、災難が災難すぎる。今回のテーマはこういう天変地異ではないはず」
そして、とても印象的だった指摘がもうひとつ。
「最後に、おばけの子どもが家を作るという『こどもの未来』を大人の目線で絵で描くことに疑問がある」
これは深く心に刺さりました。
『こども食堂』は、こどもたちの未来のために、実際に苦労をして手を動かして『未来』を作り出そうとしている。そこに掲げられる未来は、だから手触りがあって、ひとの手の温かさや、実際にそのために費やしている時間が感じられて『未来』に責任を持っている。
だから浜園さんの運営する『こども未来食堂マイカ』の『未来』には、大人の覚悟が、ありありと見える。
でもわたしの作るストーリーの中で、戯画としてそれを描くのは、どこまで責任が見えるのかってことなのかなと思いました。

土井さんといると感じるのは、常に『こどもが見るこどもの絵本』を作らなくちゃいけない、という視線です。
おばけのこどもが歩くのはわかるけど、その先、こうなりなさいよって言うのは違うんですよね。
『未来』は画面の外に描こう、って思いました。
そして再度ラフの制作です。

再度このラフを持って土井さんの元を訪ねます。
土井さんの指摘は
『ストーリーはいいけれど、おばけはちゃんと町の中を歩いて行ったほうがいい。飛んでいくのは楽そうだし、町の中に『こども食堂がある』ことが大切。最後色々な町に『こども食堂』があることがわかる、というオチなら、なおさらちゃんと歩いていったほうがいい』
でした。
ほんとうにそうです。
わたしは夜空に色とりどりのおばけのこどもの飛ぶシーンを描きたかっただけでした。
編集者さんって、すごい。経験値もすごいんだろうけど、編集者の視線って、作家と世の中の間にあって、しかも鋭くて厳しくて、すごく深い。

ページ送りとストーリーが決まったので、次からは、画面構成を考えたラフの制作になります。

つづく
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2024/10/10
ペレカスブック新井由木子
記事の制作公開は、編集者土井章史さん、クライアントこども応援ネットワークPineさんのご了解をいただいています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


リアタイでは作画に文字を載せて
仕上がり絵本の実際の大きさの雰囲気を見ています
作画はまだまだ進行中

記事:ペレカスブック店主イラストレーター・デザイナー:新井由木子
ペレカスブックは埼玉県草加市の小さな書店。
実店舗は2023年5月にクローズ。新店舗を持てるように奮闘中です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?