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絵本『だれでものいえへ』ongoing project vol.23
印刷工場と打ち合わせ
さて、いよいよ印刷工場丸庄さんとの打ち合わせです。
印刷用紙を決める
編集者土井さんが選んでくれたのは『b7トラネクスト』という紙でした。
実はこの紙は受注生産で、発注してから生産される紙。
土井さんからは「時間がかかるから早めに発注しないとだよ」と言われていました。また今回の絵本の刷り部数は3,000冊と、大手の出版社の刷り部数からはかなり少ない冊数(このタイプの製本だと)なため、受注生産してくれるかとの心配もありました。
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日本製紙のカタログ
しかし鈴木さんが言うには「全く同じ紙で名前が違うものがあるんです」らしい。
それがこちらモンテアルバ。
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「この紙とこの紙は全く同じなんですよ」と鈴木さん。
しかし実は、わたしは占い師はおろか医者の言うことすら直ぐには信じない質(たち)でして、、本当に同じなのかと、食い下がるのでした。
鈴木さんは一度奥に入ると紙厚測定器を持って再び現れました。
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確かに斤量は同じ。そして紙の質感も同じです。
b7トラネクストとモンテアルバが同じ紙だと腑に落ちました。
(証拠写真も撮ったし大丈夫………)
b7トラネクストと聞いてモンテアルバがあると元々知っている鈴木さんに感謝します。
更に製本について、鈴木さんが直々(じきじき)に製本工場と打ち合わせてくださる約束もいただき、それでも心配だったら製本に立ち会えるように工場にお願いしたら良いとアドバイスもいただきました。
先にも述べたように、わたしは本当に色々なことを直ぐに信じたりしない質なので、この後に及んでも製本まで心配なのです、、、。
そして最後に原画をお渡しします。
鈴木さんは「すごい原画だ、、、製版、がんばります!」と言ってくれました。
わたしは1年の間原画と向き合い続けて見慣れすぎて、もうすごいのかどうかはわからなくなっています。
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しばしの別れです
さて、大事な話が終わったところで、話題は丸庄さんの歴史について。
「創業200年なんですよ」
「それって江戸時代じゃないですか!」
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手に持って現れたのは
千住の地番表記
千住の日光街道の地番表記には、江戸時代から明治昭和と町並みが変遷していく様子が見てとれます。
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昔は紙問屋が軒を連ねていた千住宿で、今まで残っているのは丸庄さん!
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「どんどん古いルーツが出てきて、創業何年って言ったらいいのかわからないんですよ、、、そろそろちゃんと決めないと、、、」
そう話す鈴木さんはとても誇らしそうで、このひと、会社のことが本当に好きなんだなあと感心したのでした。
そして帰りの車(もう原画持ってないのでバスで帰ると言ったのですが、また送ってくださると、、)の中で鈴木さんと話したのは、営業活動の大切さ。
実はわたしもつい先日落とした案件があり、営業の仕方が良くなかった(お客さんの話をもっともっと丁寧に聞けば良かった)かな、なんて思っていたので話は弾みました。
「営業を丁寧にすれば、こんな意外な仕事を頼んでくれるの?っていう案件が立ち上がったり、競合より見積もりが高いのに当社を選んでくれたりするお客さんと巡り会えるんですよ」と鈴木さん。
わたしも自営業なので制作から営業まで全て自分でしている訳ですが、やはり、大切なのは、真心(まごころ)なんだ。
それが絵空事ではないことが鈴木さんの経験値ある言葉で強く感じられました。
きっと鈴木さんは現役のすごい営業マンなんだろうと思い、わたしは訪ねました。
「鈴木さんは今営業部ですか」
「わたしは専務です」
専務だった!
しかも世襲ではない専務。
さっき名刺もらったけどちゃんと見てなかった!
「専務じゃ、おいそがしいでしょうに、なんでわたしなんかに時間をさいてくださるんですか?」
鈴木さんは答えます。
「仲間の仕事ですから」
仲間。
ともすれば空虚に響く単語ですが、仕事の上で聞くと真実な響きを持って心に刺さってきます。
西新井の駅につくと夕方6時。
「まだ仕事がてんこもりなので」と、車をひるがえして去る鈴木さんを見送りながら、絵本を妥協しないで作ってお客さんに届けて、丸庄さんにもいいことが起こるようにがんばろう!と心に誓いました。
つづく
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2025/01/29
ペレカスブック新井由木子
記事の制作公開は、編集者土井章史さん、クライアントこども応援ネットワークPineさんのご了解をいただいています。
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リアタイでは茅場町の、とある本の場所を見学に行きました。
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記事:ペレカスブック店主イラストレーター・デザイナー:新井由木子
ペレカスブックは埼玉県草加市の小さな書店。
実店舗は2023年5月にクローズ。新店舗を持てるように奮闘中です。