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1人、前に進むときに思い出すこと
先日、20歳の旅人に出会った。彼は歩いて北海道を一周しているらしい。
話していて、若え~エネルギッシュ~(体力的な意味で)と思ったし、彼のインスタを見ると北海道のマジで何もない果てしない道を一歩一歩ひたすら歩く様子が載っていてその途方もない、でも後にも引けない覚悟が垣間見えて応援したくなった。彼はどんな大人になるのだろうか。
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ふと、誰もいない、誰にも気づかれない、そんな場所を走り続ける感覚を思い出した。道東の端っこからの帰り道。すでに22時を回っていた。仕事ですでに体力は底をついているのに、Googleマップで表示された自宅までの所要時間は車で2時間。毎週の出張と激務で疲弊していた。もう、いい加減にしてくれ。そんな自棄の念でいっぱいになりつつ涙が止まらなくなる。街灯のない山道で孤独感が増す。いつも一人で戦っているような気持ちだ。自分のしていることは、果たして本当に正解なのか。ネットで検索してもこの仕事の攻略方法は書いていない。というかこの世に存在しない。正解がないからどれだけやっても自分に対して「仕事できるようになったね!」と肯定してあげることは出来なかった。でも、この辛くて修行みたいな日々が、無駄な努力だねと誰かに言われてしまったら心が死んでしまう気がしてむきになって仕事していた。
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ひたすら道東の果てしない道を走り続ける日々で、いつも尊敬する上司の姿が力になっていた。上司は、自分なんかより何十倍も仕事していてよく事務所の人たちが「上司の〇〇さん、タスクが今80個溜まってるらしいよ」と噂されていて、ゴールドマンサッ●ス証券並みのスケジュールのはずなのに何百キロもかけて直接人に会いに行くような人だった。自分の目で必ず現場を見て、「〇〇さんのおかげで助かっています、ありがとうございます。」とわずかなことでも褒めて、正面から伝える人だった。丁寧にコミュニケーションを築いて、聞き手にまわり、公正に判断する。同じ部署の社員たちからいじられるような穏やかな雰囲気の人だったけど、理不尽をものともせず進んでいくその姿は、今までどれだけの苦労を乗り越えてきたんだろうと思わされるほどだった。とある夏、辺境の地で誰かがすぐに応援に来てくれる状況でもなく希望も絶たれて、1人でどうやっても終らない仕事量とそれでもやらないといけない使命を目の前に半泣きになっていた時に、突然現れて「手伝いにきました」と言った上司。簡単に来れる距離ではないのに、と思ったら号泣してしまった。
そんな上司が突然前触れもなく異動が決まった。異動の直前にもらったメッセージには、「あなたがいたから変わった店が沢山あります。」「あなたのおかげ、という声を店から沢山聞いてきました。」と、細かく書かれていて、私が一番試行錯誤して変えようと取り組んでいたことや、自分でも気づけなかった変化や周りの人からの声にまで気付いていて、「あなたの行動は間違いではない」と肯定してくれていた。それがとても、今までの日々が報われて、力に変わった瞬間だった。一人ではなく、見ていてくれる人がいる。物理的に近くにいなくても、一人じゃないと思えた。感謝してもしきれないくらい、たくさんの勇気をもらった。
そして、職種上いつ異動でいま関わっている人たちと離れるか分からないからこそ後悔ない日々を送らねば、思った。
毎日、同じような景色のなかの道を走っているけど、毎日起きる出来事は面白いくらい同じではなくて、言い合いや喧嘩をしたり、なんでこんなに頑張るんだろうねとお互いに思うくらい一緒に仕事に夢中になったり。
この道はきっと1度しか通らない。何度も当たり前にみんなに会いに行ける距離ではないし、いつかは必ずお別れがくる。
会ったその時に、誰かのためになることは今すぐに動いて、良いと思った部分や感謝の気持ちは真っすぐに伝えよう、もう2度と通らない道だと思って、やる。と思いながら過ごした1年間だった。
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退職するときに、お世話になった方々から「2年も頑張ったんだからなんでもできるよ!」「大好きだったよ」「出会ったとき、私の持っている知識を全部教えても良いと思えた」「この2年は10年分くらいの苦労があったと思うよ」「〇〇さんの人生に残れたら最高だよ」「ありがとう、楽しかったよ」「また遊びに来なさいや、ここで会いましょ」、、まだまだ沢山、本当に本当に、関わった全員から学びと愛をもらって。でも、これまでたくさん言い合いも衝突もした人たち。最初は互い違いのボタンを1からかけ直していくような感じだったからこそ、どうしてここまで、みんな温かく見守ってくれていたのだろうか、と泣けてきてしまう。昔先輩に、「どうして仕事続けられているんですか?」と聞いたときに「人が好きなんだよね。」と言っていたのを思い出す。その感覚が、今なら分かる。
この経験を忘れない。一人、道を進むときに、その記憶を愛しむ。この燃料は一生尽きない。
今日、開業届を出して個人事業主になった。
まだまだこれからだー