【紫陽花と太陽・下】第0話 翠我遼介というひと
【紫陽花と太陽・下】第0話 翠我遼介というひと
(文字数 約5,500字 読了目安 約14分)
茜色した柔らかく細い雲が浮かぶ、西の空。
コツコツコツと規則正しい靴音。
ローファーの靴音は二人。私と、友達の。
西日の眩しさに目を細め、いつもの街並みをいつものように帰る。
見えてきた。私の住んでいる家が。
「日向、もう、ここで大丈夫だ」
「ん? そう? 玄関まで送り届けるけど?」
「……いつも、本当にすまない。でももう家はもうすぐだ。日向もあまり遅くなると……」