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恋するあの子に憧れて
人付き合いは得意な方だ。人と会うことが私のストレス解消法だし、誰かと話すことが好きだ。例えそれが、始めましての人であったとしても。友達は多い方だし、ちゃんと知り合いを増やす努力をするタイプだ。
でもなぜか、恋愛だけはいつも上手くいかない。
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まだ誰ともお付き合いをしたことがない。
別に、ずっと女子校だった訳でも、恋愛に興味がなかった訳でもない。私だって彼氏と、手を繋いで下校する高校生活を、下宿先で日がな一日セックスする大学生活を、送ってみたかった。
「誰かを好きになること」自体の経験値が低すぎるせいで、「好きなタイプ」や「恋人にされたら嫌なこと」みたいな、恋バナでよくある話題にすらついていけない。だからしょうがなく聞き役に回る。それを続けているうちに、だんだん恋バナ自体が苦手になってきている。
ラブソングを聴いても、いまいち感情移入できない。失恋ソングをうたって、うっかり自分の恋愛体験を思い出して泣いたこともない。一緒にカラオケに行った友達がそうなっているときは、どうしていいのかわからず、ただ隣で狼狽えている。
では極度の男性恐怖症なのかと言われると、決してそうではない。異性の友人もちゃんといる。でも、何かのはずみで好きになったり、深い関係になったりはしなかった。ときめく気持ちに気づかないふりをしたことも、あったかもしれないけれど。友達にうっすら恋をしていても、やっぱりそれは友達だから。
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はじめて会ったのに、話をする時目をそらさない男の人がこわい。話をするのにふさわしい人物か、見定められている気がするから。わたし、友達として楽しませる自信はあるけど、恋人としては全然魅力的だと思わないよ。
可愛いとか綺麗とか色っぽいとか、男性に言ってもらったことは一回もないし、誰かに熱っぽい視線を向けられたことも一回もない。
私のからだ、けっこう綺麗なのにな。誰にも見せずに終わってしまうのかもしれない。好きな人に「綺麗だね」って言ってもらえないまま、死ぬのかもしれない。早くわたしの知らない可愛いところを、見つけてほしいのに。肌寒いから、寂しいから、そんな些細なことを理由にして誰かに愛されたい。甘えてみたい。
でも、したいことはたくさんあるけれど、私はどうも「してみたいね」 を誰かと言い合えたらそれでいいようだ。
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惚れっぽい女の子は、私とは違う星に住んでいると思っている。かつて恋多き女だったあの子は、いつも好きな人がいて、振られるたびに落ち込んで、でもまた好きな人ができて。あの子自身も、それにちょっと疲れていたくらいだった。けれど、私は知っていた。「恋愛なんてしないほうがまし」と言い張るあの子の、惚けた顔がいちばん綺麗なこと。
急がないと、私が最も若くて美しいときを、逃してしまう。そう遠くない未来、経験がないことを「重い」とか、「世間知らず」とか言われて、惨めな思いをする時が来るのだから。
そんな風にはなりたくなくて恋活を始めたと言ったら、あの子はわらうだろうか。