絶対値チャレンジ
2024.08.10
ペぎんの日記#127
「絶対値チャレンジ」
夏休みに入る前の、数学の小テストでのこと。
数列の小テストだったのだが、最終問題で
という遊び問題が出た。
言ってしまうと、この問題はフィボナッチ数列の問題であった。授業中には扱っていないフィボナッチ数列の規則性を瞬時に見抜き、かつ大量の足し算を素早く正確に行う必要がある。
有名な数列だからクラスの何人かは既に知っていたようだった(後日談)が、それにしたって残酷な問題である。足せば足すだけ、ミスをするリスクが上がるから。
どこまで点数を伸ばせるか。でもどこまでだったらミスなく計算できるか。冷静な判断と計算能力が求められる。
もちろんフィボナッチ数列の一般項を使ってもよいのだが、複雑な式を覚えている人はさすがにいなかった。結局足し算。ひたすら足し算。小テスト中の教室には、いつにない緊迫感と、計算を書きなぐるシャーペンの音が響く。
その結果…
うわあ''あぁ"あ"あぁ"あ"!!
小テスト返却の際、教室のあちこちから悲鳴が上がった。点数が負の世界に突入した者たちの、悲痛の叫びである。
酷い人は -20点 くらい行ってたんじゃないかな。
そんな、小テストに向けて必死に(?)勉強して挑んだのに最終問題でチャラになってしまった生徒に、先生が最後のチャンスを与える。
先生「はい、点数がマイナスになっちゃった奴いるな?そんな人たちに、最終チャンスです!なんとここから!絶対値チャレンジ〜!」
「う、うおおおぉ!?」
一瞬の間を置いて、先生の言葉の意味を理解した攻めすぎ男子たちが大きくどよめく。
先生「チャレンジ内容は…。1番大きい素数言った奴が絶対値〜!」
それを聞いて、「くっ、終わった…」だの、「よし!あるあるある!」だのと反応する男子たち。「マジ無理〜笑」だの「え!絶対わかんない〜」だのと保険をかける女子たち。
チャレンジ内容を聞いたあとの顔つきが一人ひとり違うのが面白い。
さぁそしていよいよ始まる絶対値をかけた素数チャレンジ。オークション形式で言いたい人だけ言っていき、ミスした人は回答権を無くす形式。
「2」
「3」
「5」
先生「別に飛ばしてもいいんだぞー」
「109」
「お、ちょバカ飛ばしすぎ。てかお前マイナスじゃないやんけ!」
「もしお前に絶対値かかったら俺が負けるんよ!」
「…113…頼む…!」
先生「おー…素数です」
「っしゃー!」
「127」
「129」
先生「アウトー!」
「え?あ、うわ馬鹿、3の倍数って、うわぁ…」
先生「じゃあ127より上いませんか?」
長い沈黙を破ったのは、田中(偽名)の声だった。
田中「…にせんにじゅう…なな?」
「え、マジ?笑」(ザワつく教室)
先生「2027…お!素晴らしい素数です!」
「え''ー!?」(もはや引かれてる)
田中「え、だって、西暦の因数分解って、みんなやらない…?」
(全員クビを横にフルフル)
田中「え、あ、ちょ申し訳ないんだけど笑」
先生「さぁ!2027より上!いない?10,9,8,7,6,5,4,3,2,1、田中おめでとう〜!」
教室中で、「くっそおぉ!」やら「いやあれは無理笑」だの、田中くんへの賞賛だか素数への批判だか分からない声が飛ぶ。
絶対値チャレンジ。いやこれ凄く面白い競技だ。私も、誰かと点数勝負している時にマイナスに突入したら使ってみよう。
あ笑、実は田中くんはゲームを盛り上げるために数字を出したのであって、間違って優勝してしまったのだと。本人がそう告白してしまったせいで、田中くんがマイナス勢からリンチにあってたのはまた別のお話。