豆腐を数える私の家族
2024.07.20
ぺぎんの日記#106
「豆腐を数える私の家族」
妹の算数教育の名残が、我が家の食卓に不思議な会話を生む。
「今日、豆腐って1人何個?」
3年ほど前、小学校高学年になっても割り算を上手くできない妹を心配して、母親が冷凍豆腐を買ってきた。
つまりはこういうことである。
一口大にカットされ、冷凍されている冷凍豆腐を、数を数えながら味噌汁に入れる。夕食の時間になると妹をキッチンに呼び、味噌汁の温めと配膳を担当させる。
と、ここで問題が出題される。「今日のお味噌汁には15個の豆腐が入っています。家族は全員で5人です。さぁみんな平等になるように、豆腐の個数を考えてよそってください。」
妹は必死に考え、3個という結論を出し、数えながらよそっていく。もしそれが間違いであれば、よそっている段階で気付いて、直感的にミスに気づけるというわけだ。
なかなか良いシステムだった。そもそも冷凍豆腐というのが使いやすい商品だし、みんな平等にお味噌汁を食べることができる。
そして何より、妹の計算能力は格段に向上していった。
母「今日は20個の豆腐が入っています。5人で等分するには?」
妹「1人4個」
母「すばらしい!」
母「今日はパパが仕事で居ません。20個の豆腐はみんなで平等に分けられますか?」
妹「20は4も5も約数だから、4人でも5人でもちょうど分けられるよ」
母「良い考え方!じゃあママも今日お味噌汁要らないって言ったら?」
妹「20個は3人だと分けられない。20の約数に3はないから。」
母「おっけい!ママの分も含めて4人で等分しておいて〜」
妹「1人5個ね。わかった〜」
母「この味噌汁には豆腐が30個入っています。この味噌汁は今日の分・明日の分の、2日分です。今日も明日も5人で等分したいです。今日は1人何個よそいますか?」
妹「10人分よそうって考えるから、1人3個」
母「すばらし〜」
妹「1人4個、あまり3個になるんだけど〜」
母「あれ、1人5個のつもりで入れてたんだけど数え間違ってたかな。あと何個入れれば5人で等分できる?」
妹「2個」
母「分かってきたじゃなーい!」
値がどうしても小さいのは問題だったが、でも妹はこの豆腐カウントシステムを導入し始めてから、割り算系の問題の処理能力をメキメキと伸ばしていった。算数の考え方の基礎の部分は、やっぱり実生活で身につけるのがいいらしい。
そんなこんなで無事に妹の割り算教育を終え、役目を終えた豆腐カウント。
に!思えたが、なんとこのシステムが次は物価高騰への対策として、我が家の食卓で機能し始めたのだった。
私「味噌汁よそっちゃうよ〜」
母「待って!今日は2個までね」
私「えー!2個ってマジ?」
母「マジです。ケチっていきましょう」
私「はーい…」
妹「味噌汁よそうけど、今日は何個?」
母「2個。あのー、妹ちゃん、とても良い意識だけど、他人の家行って絶対それ言っちゃだめだからね!笑」
妹「わかってるよ笑」
父「豆腐数えてますってめっちゃビンボー臭いな笑」
母「笑い事じゃありませーん!」
父「すみませんでした〜」
こんな話し顔の知れた友人にはできないから、匿名の空間で思いっきり書きたくなる。
我が家の食卓には今日も響く。
「今日は豆腐何個?」の声。