【時々エッセイ】猫の手ざわりは魔法でできている 81
かなり昔、まだ家の猫がジョルジュだけの頃、おやつの入っているキャビネットの扉を私が開けようとしているのに、そこにジョルジュが「早く、早く」と頭を押しつけているせいで開かないことがありました。
「それやってたらなお遅くなるよ、もう、可愛いなあ」
と言って笑ったものでした。
そして、今、おやつの缶を開けると顔を突っ込み、今から3匹分のおやつを分けようとしている皿の上に足をのせてくるルネ。
かなり前のめりに食べ物を欲しがります。
さらに、ガツガツ来るはずみに横に置かれていた洗いたての箸を床に落とし、それを洗い直す作業を追加してくれるので、おやつの準備ができません。
結局、皿の3つのったトレーを左手で支え持ち、カウンターの上からルネの前脚が届かない場所に移動して空中でおやつを3等分します。
トレーをいかに美しく持ち、素早く空中配膳をするかを競う競技があったら、私が優勝です。
それから、ルネは早食いです。
自分だけ先に食べ終わって、兄や弟のおやつを狙います。
なので、ママはルネが食べ終わるのを観察し、他の子のおやつに突進しようとしたら、手をパーにして両腕を大きく広げて上下させ、脚を左右に動かしてバスケのディフェンスのポーズで防ぎます。
ディフェンスをかいくぐって行ったら、次はタックルです。
胴を抱えて止めて、他の子が食べ終わるまで拘束します。
百均の丸いメラミンの皿は中が直角で、低い位置からだと中身が入っているのかいないのかわからない時があります。
もうジョルジュが食べ終わったと思ってルネを解放すると、こっちからは見えない端っこにちゅるびーが一個残っていて、しまったと思う時があります。
ルネに「待て」と言ってみますが、もちろん聞きません。
ディフェンスしたりタックルしたり虚しい「待て」をやって1人オリンピックで奮闘しているママに協力して、ジョルジュも少しは早く食べてほしい。
といっても、早食いは猫にとって良くないことだから、やはりママが気をつけるしかないでしょう。