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【イギリス紀行】女王陛下のEmpty Garden ④

今回は大本命のナショナルギャラリー、そして、意外な穴場かな、と思ったサー・ジョン・ソーンズ美術館です。
早く着いたからトラファルガー広場を散策しようかな、と思っていたら。
写真で見たかの有名なナショナルギャラリー…は、ある。
もっとポピュラーな(はずの)トラファルガー広場がない。
目の前にはビビッドな色の囲いのある広大な工事現場だけ。
あれ?囲いの向こうに見えるのは、超有名なライオンの像では。
もしかして、環境アーティストのクリストがトラファルガー広場全体を包む巨大オブジェを…?いつから、そこまで前衛的に…。
そんなわけない。ただ、何らかの工事中でした。
見える場所からライオンとあと、彫刻の数々を写真に撮りながら"トラファルガー工事現場"を一周しました。

トラファルガー工事現場①
トラファルガー工事現場②

大英博物館と違ってナショナルギャラリーは朝一で行ったので、比較的速やかに入れました。
ルーヴルもそうですが、部屋が枝分かれしていてどこから見てどこへ行けばいいのか、順路が分かりません。
興味に従って観て行くことにしました。
入ってしばらくはどこを観てもアカデミックな古典絵画でどれも魅力的なので、どれも正解順路みたいなもんです。
ここで会いたかった絵はまず、『大使たち』。

『大使たち』 既にアングルが骸骨寄り

ガイコツが仕込んであることばかり意識したせいか、真正面からは全く見なかった気がします。
あと、『アルノルフィーニ夫妻の肖像』。

『アルノルフィーニ夫妻の肖像』中央部の鏡に引き込まれかける

『シャムロックティー』という小説の中では、この絵の中央部に描かれている鏡を通って別世界へ行けることになっています。
神秘的な美しい絵で、本当に引き込まれそうになりました。
体重があと5キロ軽かったら、間違いなく引き込まれていたでしょう。
『レディ・ジェーン・グレイの処刑』の巨大ヴァージョンもありました。
ナショナルギャラリーは怖い絵と神秘的な絵の宝庫です。
ランチは館内カフェ、ミュリエルズ・キッチン。

野菜たっぷりのキッシュとクロテッドクリームたっぷりのケーキ

欲しいものをトレーに載せて最後に払うカフェテリア・スタイルです。
キッシュにたっぷり野菜をつけてもらって、嬉しかったです。
私の好みのせいで主食とデザートのバランスがおかしくなっています。
クロテッドクリームが我が人生に悔いなしと思うほどおいしかったので、次に行く機会があっても私は同じ組み合わせにするでしょう。
ゴッホの『ひまわり』、モネの『サン・ラザール駅』、スーラの『アニエールの水浴』等の近代絵画もありました。ほぼほぼ、印象派です。

スーラの『アニエールの水浴』点々が細かい

アカデミズムの信奉者から「絵じゃない」とこき下ろされた絵たちが、新しいアカデミズムとなってナショナルギャラリーに堂々と並んでいる。
芸術の真価は時間が証明してくれるんだなと思いました。
『ゴッホの椅子』が特に印象的でした。
タンスや本棚と違って椅子は持ち主の不在をくっきり浮き彫りにします。
ゴーギャンが去った後の部屋に残された二脚の椅子を描いたうちの一枚です。

『ゴッホの椅子』ゴーギャンの椅子はなかった

街中をちょっとはずれたところにあるサー・ジョン・ソーンズ美術館。
収集家の家をそのまま美術館にしたパターンです。
透明なバッグに自分のショルダーバッグを入れての入館。
絵と彫刻が所狭しと並んでいて、興味があっても人が後から来ているとじっくり観られません。
広々としたナショナルギャラリーから来た者としては、少し息が詰まる感じでした。展示品はよかったです。
セントジョン・バー&レストランの予約時間には早かったので、ブラックウェルズ・ブックショップに寄りました。
連れは本を、私はブックマークを買い、併設のカフェ「NERO」で一休み。
紅茶はでっかいプラカップにティーバッグを入れたままの状態で渡されます。
見ると、自分で持ってきたお菓子を食べてる人がいる。
自分で持ってきたミネラルウォーターを飲んでる人もいる。
まさか、そこまで自由な国だとは。
セントジョンバー&レストランでは、お腹がすいていなかったため前菜のクラブ・トーストとデザートのバターミルクプディングしか食べられませんでした。
それでも、ミュリエルズ・キッチンでの組み合わせを私は後悔していません。

左側はどうやって食べればいいのかわからない、粉砂糖まみれのガレット様のもの

夜、ホテルの部屋のテレビを観ていたら軍事式典が映りました。
ノルマンディ上陸作戦(D-DAY)80年記念式典でした。
アン王女が兵士の墓前に花を供え、遺族の中から選ばれたらしい人たちが追悼の詩(手紙?)を読み上げました。
音楽が奏でられ、ドローンによる光のショー。
退役軍人のスピーチ。
ジュリー・フォウリスが歌うパーティング・グラス(別れの盃)。
感動的でした。
誰かにとって大切な人だったことに変わりはなくても、戦死者(軍人)を盛大に悼むことができるのは、戦勝国の特権だなあと思いました。

セントジョン・バー&レストランへ行く途中にあった教会








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