【時々エッセイ】猫の手ざわりは魔法でできている 84
ぬいぐるみみたいに可愛いから猫を飼いたい。
そう思っている人に伝えたい、リアルがあります。
床に転がる、丸い頭と水カキのある足と尖った尻尾の干からびた死骸。
気が滅入ります。
ヤモリは別に家の食料を食べないし菌をばらまかないし、害虫を駆除してくれるから家にいてもいいと思うのです。
だから、見かけたら「ルネとモネに見つからないように隠れてなさい」と言っています。
(ジョルジュは、ハンティングに精出す年齢を過ぎているので)
もちろん、ヤモリに警告が伝わるはずもなく、猫たちに朝ご飯をあげる準備をしていると、床に無残な姿を見つけることがたまにあります。
狩りをしなくても、ご飯ならちゃんといつもあげてるでしょうと言っても無駄。
生きるために備わった本能というか、習性がさせていることですから。
元をたどれば人間は、ネズミを食い殺してくれるから猫と一緒に暮らすようになったわけだし。
人間だって肉を食べるけど、誰かが自分の代わりに殺してくれた牛、豚、鶏を、生きていたことを想像させない形状にして食べるというずるいことをしているわけですから、こういう時に猫を責めるのは筋違いというもの。
それでも、いつも玩具で模擬ハンティングをしているせいかなとか、逆にその遊びが足りなかったからかなとかいろいろ考えてしまいます。
転がっているのを発見するだけでもきついものがあるけど、動かなくなったヤモリを前脚でつついてまた動かせてハンディングごっこの続きをしようとしているルネを見て、動物と暮らすってこういうことなんだと自分に言い聞かせました。
出したものや抜けた毛の後始末だけじゃないんだと。
そして、手や顔を舐めてくるのがジョルジュだけでよかったと思っています。