【時々エッセイ】猫の手ざわりは魔法でできている 80
「いてえっ!」
夏の裸足の足裏に激痛が走ります。
ここはリビングのど真ん中。
こんなところまでマキビシ(猫砂)がまかれているとは。
黒づくめ、もしくはツートーンカラーの忍者が肉球に挟んで持ち歩き、投下していったものと思われます。
猫トイレの周りにまき散らして、いつの間にか周囲に砂場が完成しているのはよくあること。
猫砂の掃除をすると、ついでにホコリの掃除もできるからありがたいと思おうとしたけど、その綿ボコリを作っているのも猫の(主にルネの)抜け毛です。
猫砂の掃除くらいなら、そこまで苦になりません。
本当に、これやらなきゃいけないの?と思うもっと厳しい苦行が、夏にはあります。
それが、虫。
蛾、何だかよくわからない甲虫、ダンゴムシ。
そして、脚や羽のある生き物が完全な姿でひっくり返っていることはほとんどありません。
虫が自己解体するはずがないから、これは明らかに猫たちの仕業。
小さくて動くものは全部、虫も猫じゃらしも飼い主の指も猫たちにとっては獲物です。
しかも、猫たちが「虫、殺っちゃったから片付けといて」と場所を教えてくれることはありません。
飼い主は無意識に近づいてから気づくか、もっと悪い場合は踏んづけてから気づきます。
ほとんどの場合、干からびていますが気分のいいものではありません。
自分の不運を嘆きますが、ハンティングの本能だけで殺された生き物にしてみれば不運どころじゃない悲劇です。
話して説き伏せられるわけもなく、築50年以上のだてにでかいボロ家を隅々まで清潔に保とうしたところで無理があります。
外から虫が入ってこないように閉め切ったら、エアコンのない部屋では窒息してしまいます。
こうして今日も、何だったかわからないパーツをなるべく柄の長いホウキを使って片付ける、あきらめの夏です。