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切貼民話のプロセス〜「コラー獣」の変化に着目して〜

民話の本やインターネットなどから、面白そうな民話を見つけ、行ってみようと思う。この時には、まだ「コラー獣」の完成形は全くイメージできていない。

民話ゆかりの地を訪れる。これだけいろいろな情報(もちろん写真に収められた以外にも様々なものが広がっており、それらの総体として埼玉県吉川市の「中井沼」という場が生み出されている)がある中で、その時、その瞬間にピンときたものに思わずカメラを向けてしまう。この時にも、まだ「コラー獣」の完成形は全くイメージできていない。

フィールドワークをした日の中井沼の写真。

帰宅して写真データを見返し、印刷する画像を選ぶ。撮影時に「とても面白い!」と思ったはずのものが選ばれず、逆に「なんかとりあえず撮っておこう」と思ったものが選ばれることは割とよくある。実物が画像データに変化することで見え方が変わったのだろう。この時にも、やはり「コラー獣」の完成形は全くイメージできていない。

枯れた蓮の葉
トラロープのほつれた結び目
面白い形の花
木のこぶ、うろ

プリンターがないためコンビニで印刷する。画像データが紙ベースになることで、さらに見え方が変わってくる。ここでも、切り抜く写真と、印刷したけれど使わない写真とが選ばれる。さらに、どこを切り抜くかという選択も行われる。紙にハサミを入れた瞬間、もう後戻りはできない。この時にも、まだまだ「コラー獣」の完成形は全くイメージできていない。

切り抜いた紙をあれこれ並べる。すぐにピンとくる並べ方が閃く場合もあれば、ちょっと時間を置く場合もある。必要に応じて、ちょっと紙を切って形を整える。この時から、ようやく「コラー獣」が姿を現し始める。

切り抜かれ、試行錯誤しながら並べられていく素材たち

並べた紙を、他の紙に糊で貼る。今のところスティック糊を使っているが、より手軽で滑らかな糊があれば良いなぁとぼんやり考える。糊が付いた瞬間、もう並べ替えはできなくなる。実物→画像データ→画像が印刷された紙→バラバラになった断片→それらの、なんとなくの集合というプロセスを経て、ようやく「コラー獣」の形になる。

形になった「コラー獣」
形になった「コラー獣」

形になった「コラー獣」に名前を付ける。民話に因んだもの、ちょっと駄洒落感のあるもの、既存のものにならないもの…自分なりの条件を満たすために結構悩む。ちなみに、中井沼で集めた素材から生まれた「コラー獣」たちの名前はまだない。名前が付いた瞬間、「コラー獣」というカテゴリーから固有の存在が誕生する。

以前制作した「かぶたん」

誕生した固有の「コラー獣」が既存の民話に登場したらどうなるかをイメージする。民話の続きが生まれるのか、それとも民話そのものを改変する必要があるのかを考える。「子どもたちにも伝えられるもの」という自分なりの判断基準があり、したがって恐怖心を煽る、残酷、グロテスク、呪いや不幸、死に纏わるような物語には絶対にならないようにしている(そもそも私個人がホラーや残酷なものが苦手なため、民話を選ぶ時点で自分なりのフィルターを設けている)。こうして固有の「コラー獣」たちが物語の世界で動き始める。

「かぶたん」が登場する物語

切貼民話をしていく中で、「コラー獣」に焦点を当てただけでも、これだけの変化が生まれている。さらに、もしこの「コラー獣」を見たり「切貼民話」を読んだりしたことで、その人の中に新たなイメージが湧いたなら、さらに「コラー獣」は変化していくことになる。

他にも、もともとの民話、ゆかりの地、そこにある山川草木や人工物、雲、水、影などのものも変化している。さらに、別の日・別の時間にフィールドワークをしたら目に入るものやピンと来るものは変わるはず。となると、目には見えない様々な状況や文脈も変化している。もっと言うと、これらに影響を受け、影響を与えながら私自身も変化している。

こうして、今日も切貼民話は変化し続ける。



【告知】
埼玉県吉川市のイオンタウン吉川美南店さんで開催される「和妖折衷ものづくりフェス」に出展させていただき、中井沼などで集めた素材から生まれた作品たちを展示させていただく予定です。11月23日(木・祝)にはコラー獣作りワークショップも開催予定。ぜひぜひお越しください✨

最後までご覧いただきありがとうございました!

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