スノーピークの新会員制度が受け入れられなかった理由 ブランドとファンの関係
11月20日にスノーピークの会員制度が改正されるという発表があってからTwitterなどのSNSでは改悪だとかなり炎上してしまったようです。
その後会員からの抗議を受けて新制度の再検討をするという判断をするほどの反響がありました。
https://www.snowpeak.co.jp/news/p20211124/
僕はあまりスノーピークのキャンプギアは持っていなくて、会員にもなっていませんでしたが、たまに店舗を覗くと思わず欲しくなる道具や服などが用意されていて良いブランドだと思っていました。コアなファンもたくさんいると思っていただけに、今回の炎上がなぜ起こってしまったのか気になり考えてみました。
メンバーシップの変更に関する詳しい内容は上記をご参照ください。
制度変更のポイント
詳細はリンク先の説明を読んでいただきたいので割愛しますが、今回変わったポイントは大きく3つです。
①ブラックとプラチナ会員になるには、これまで累積利用額が超えれば良かったが、今後は年間の利用額で判定され利用額が基準に満たないとランクダウンしてしまう。
②ポイントはLVpt(ライフバリューポイント)という名称に変更。キャンプや食事、イベントなどのアクティビティはポイントが2倍つくようになった。
③クレジットカード会員になれば利用額が基準を満たさなくてもブラックとプラチナ会員を維持できる。
特に炎上しているポイントは一つ「①のブラック会員とプラチナ会員の判定基準変更」です。
変更前ブラック会員になるには累積の利用額が100万円を超える必要がありました。今後ブラック会員を維持するには年間50万LVptを貯める必要があります。Twitterなどではこれまでコツコツスノーピークの商品を買い続けてようやくブラック会員になった人が、それを維持することの困難さに対する怨嗟が聞かれました。
スノーピーク側と会員のギャップ
では実際累積で100万ポイントを貯めるのと、新制度下で50万LVptを貯めるということがどの程度大変なのかを考えてみたいと思います。
例えば、キャンプギアをテントからテーブルまで一式ゼロから揃えた場合の金額は以下の通りです。ブラック会員と仮定して7%上乗せしてます。
あまり細かくは選んでいませんが、主に必要そうなテントや寝袋などを選んでいて、中でも大きくて高いものを選んでいます。これだけ一式揃えて50万円ほどです。他に細かいものを色々追加したとしてもプラス50万はいかないと思うので、ギアだけで100万円を使うのはそこそこ大変だということがわかります。当然、これらは買ってから何年も使うものなので毎年この出費が発生するわけではありません。
では年間50万LVptは無理ゲーなのか。数字からわかる遊びを促すメッセージ
スノーピークは2020年に社長が創業家の山井梨沙さんに変わりました。山井さんはデザイナー出身で2014年にスノーピークのアパレルブランドも立ち上げており力を入れています。
前述したキャンプギアの買い替えは頻度としては低いと思います。一方で今回の会員制度変更ではアクティビティは利用金額の2倍のポイントがつきます。アクティビティとアパレルをガンガン利用したとするとポイントの貯まり方は以下の通りです。2人でペア利用するイメージをしています。
特にグランピングやイベントに参加することの難度はともかく、アクティビティでポイントが倍付になっているのが効いて会員を維持することができそうです。
ポイントは大きな問題ではないのでは
これまでこつこつとギアを買ってブラック会員になった人が例えば年間20万円スノーピークに使っていたとすると、プラチナ会員の人よりも多く還元されるのは2,000ポイントです。正直20万円分のギアを買える人からすると大した金額ではないと感じます。他にもブラック会員にはカタログの送付やイベントへの優先案内などの特典があるようですが、そもそもイベントなどにガンガン参加するロイヤリティの高いユーザーであれば会員ランクの維持も難しくないのではと思いました。
ちなみにブラックカードを維持するには年間50万LVptを貯める他に、クレジットカードのゴールド会員になる方法もあります。ゴールドの年会費は33,000円です。ちなみに33,000円分の会員費をポイントで取り返そうとすると415,000円使う必要があります。そこまでしてブラック会員を維持するよりはプラチナ会員に落ちてクレジットのクラシックカード会員になった方が3,300円でプラチナ会員のポイント還元を受けられるのでポイントの還元だけを考えればそっちの方が良いのではと思います。
数字だけではないブランドとファンの関係
数字だけ追っていくと、今回の炎上が起きた一番の理由はスノーピーク側と会員のギャップが単純な金銭的な優遇ではないことがよくわかります。
これまで好きで好きでずっと貢いできたのに裏切られた、そんなファンの気持ちがあるのでしょう。この制度を数字で見て思ったのは決して新制度が数字的に見て改悪だったとは全く思いませんが、コミュニケーションミスだったのだと思います。
ブラック会員というネーミングだけ残っていれば、チタン製の素敵なカードさえ手元に残してくれれば、きっと細かい数字などはあまり関係なかったのでは。ブラックというネーミングに誇りを持っていたユーザーの気持ちは汲み取りながらアクティビティに誘導する、そんなブランドとファンの関係をうまく作る数字だけではない制度設計が望まれていたのではないでしょうか。
次回また新制度の見直しがあります。今回は前回の評判を受けての発表となるので難易度は遥かに高くなってしまっていますが、是非ファンを振り向かせる制度設計を実現してほしいです。