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数学的帰納法という高校数学における最重要証明法についてのお話②

 こんにちは。今回は前回の続きです。

 長い前置きの後、数学的帰納法は厳密に帰納法でなく演繹法であるというお話をさせていただきました。
 その中身、概要、凄さについては一言も説明してなかったので、そちらをこの記事でお話します。

 そんな数学的帰納法ですが、大まかな説明をするとこんな感じ。
①すべての自然数nについてある法則Aが成り立つことを示したい
②まず、n=1のときにAが成立することを確認
③n=kのときに成立することを”仮定”したら、それによってn=k+1の成立が示せることを確認
④③において、k=1としたらk=2は成立することになる
⑤③において、k=2としたらk=3は成立することになる
・・・
最終的にすべてのnについての成立が示せる□

 ざっとこんな感じですね。よくドミノ倒しに例えられる理論で、後ろのドミノが倒れれば前のドミノが倒れることと、最初のドミノが倒れたことの二つさえ確認できれば、あとはすべてのドミノが倒れることが確認できるといった雰囲気です。
 実際演繹法なのですが、①n=1での成立②n=kの成立を仮定したうえでのn=k+1の成立
という特殊的成立を確認すれば一般的なnでの成立が言えるので、その点では前に記述した特殊→一般という帰納法特有の展開方式になっています。だから数学的帰納法と呼ばれているのです。

 これの何が凄いかといいますと、これによって「全ての自然数について~~~が成り立つことを示せ。」といったような高校数学の試験問題は、95%くらいは示せてしまうことです。

 もうひとつ。数列に漸化式というものがあります。なんかしらの法則で並んでいる数字の並びを数列と呼び、隣同士の数字の関係を表す式を漸化式と呼びます。高校数学にはこの漸化式から一般項を導く問題がありますね。
 これも本来なら色々な等式のルールや定理を用いて導いていかないといけないのですが、変な攻略法の穴がありまして。
 適当に「一般項こんなもんじゃね?」と予測して、あとは数学的帰納法を使って合ってたらそれで正解なんです。これが凄い。
 中学・高校と培われた「数学は答えが分かってもわかるまでの過程を正確に記述しないと満点を取れない」という受験数学の大前提がある意味これによって壊れているんです。
 数学的帰納法が正確な記述じゃないというわけではないんですが、今までは適当に答えを予測してもそれが正しいと示すのに結局正攻法でやっていかなければいけなかったのが、適当に推測して数学的帰納法が成り立つので正しいです!が普通に○をもらえちゃうので、めちゃくちゃな近道をしている感覚なんです。

 そんなわけで、ある意味では高校数学の中でも異質な証明方法です。
 自然数nに限った整数問題や、数列の一般項を求める問題では大体数学的帰納法を使えないか一旦考えましょう。思わぬ近道が出来る場合が多いです。実際に解答に載っている解法が数学的帰納法でないこともよくありますが、その場合でも使えば〇ですので、数学の証明が得意になりたければ一番早くマスターしたいテクニックです。


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