ユトリノヒトリ【05】 #ガールズバー
「ちょっと!ウチには全部話して下さいよ!」
アキの私に対する敬語が中々消えないなぁ…なんて思いながら、梅田にあるHEPの近くのファーストキッチンで携帯を気にしながら、行き交う通行人をチラチラと見てる私に何度も聞いてくる。
あぁ、何て話そう。
どう説明すればいい?
簡単に説明すると私は、ドライブに行ったあの日から毎日メールや電話をしていたのだ。
誰と?あの日……私が完敗した彼と。
彼はお店での源氏名がジョージさんと言って、実はお店のNo. 1だった。
だからビックリするくらい自由人だったんだ。と私は少しビビっていた。敵うわけなかったのだ。何から何まで仕組まれているような錯覚に陥ってしまって、溺れそうだった。
救援ボートに乗りたくて、アキに全てを話すことにして、助けてもらおうとしたのだ。
・・・・・・・
結局あれから私は……アキとアキの地元の友達リカちゃんと3人でまたお店に行った。
アキは私を連れてくるように言われたと言っていたが、私は内心、楽しんでいた。
その日、ジョージさんは他のお客様が居て、結構忙しそうだったので、私たちは3人でテーブルについて、アキのお気に入り君とリカちゃんにまわってくるホストの皆さんと会話をしていた。
そしてジョージさんは、私たちが帰る10分前くらいに来て、すごく謝っていて、私はその数だけ「大丈夫です」を繰り返した。
お店を出る時にリカちゃんはジョージさんと仲良しのアツシ(仮名)さんを指名していたので、私とジョージさんの4人で先に外に出た。
リカちゃんはアツシさんと遊びに行く約束をしていて、ジョージさんはデートしよっていうセリフを繰り返していた。
私はアキが遅いなと思ってお店の入り口に行くと、急いでこちらに向かって来るアキとぶつかりそうになった。アキはこそっと
「ジョージさんとどうなんですか?」
「まだ何とも……」
「何が不満なんですか!」
とちょっとふざけ気味で笑った。私はどこかで彼に惹かれながらも、騙されたくないという気持ちもあったし、皆が簡単に付き合っていることに少し違和感を感じていた。そんなすぐに付き合う程の恋をするのか?と言うかそれは恋なのか?
なんてことを考えていると、リカちゃんが私に携帯の番号とアドレスを教えて欲しいと言ってきて、交換した。
アキはこっそり「気をつけて下さいね」と耳打ちしてきたのを今でも覚えている。アキ……リカちゃんとそんなに仲良くないんだなって軽く思っていた。
その日の夜にリカちゃんから仕事しませんか?という連絡を貰って、面接に一緒に行くことになり、大阪の北の方にあるガールズバーで、2日後の面接になった。
・・・・・・・
当日、リカちゃんと合流して、お店まで行くとホストみたいな人が来て、お店の鍵を開けて、名前を聞かれたり、身分証を見せてコピーを取ると、
「早速明日から入れる?」と聞かれた。
するとリカちゃんは、「今日って体験できますか?」って……え!?今日!?と、採用されたことにもビックリしていたのに今日から?と私は怖気付いてしまっていた。
でもオーナーさんは「めっちゃやる気あるやん。時給は体験のになるけど働いてみる?」みたいな感じで話がどんどん進んで行き……
何故か……何故か何も言っていない私まで当日に体験入店みたいな感じで働くことになり、服装はワンピースでヒールならOKだったので、2人とも着替えずにオープンまで近くのお店で時間を潰した。
その日、18時オープンで、12時まで働いたが、私はぜーんぜん話せない。もうビビり倒していた。リカちゃんは結構上手く会話していて、私はサポートしてくれた先輩に助けて貰いっぱなしだったことだけ覚えている。
それから12時でガールズバーがクローズして、深夜1時からボーイズバーがオープンするというシステムらしくて、ホストみたいなバーテンダーさんが来た。
「新人さんやー!頑張ってなー!」
そんなノリで彼は手際良くオープンの準備をしていた。そして、先輩が「事務所行こう」と言って、全員で何故かホストクラブへ……
実はオーナーさん、元々ホスト出身で……夜のお店を何店舗も展開している方で、ラウンジやスナックなど、他にもあった。恐ろしい。
そこで送りと言って、お店のドライバーさんが従業員を家まで送ってくれるシステムなのだが、各店舗の女性達が居るので、順番待ちでホストクラブに入っていったのだ。
ちょっと思考停止しかけた私にリカちゃんがコソコソと話しかけてきた。
「ここのホスト良い人居ました?」
「えっ?見てなかった」
「さっき聞いたんですけど、送り待ちの時にここで飲んでもいいらしいですよ」
とサラッと言いながら辺りを見渡していた。アホな私でも流石に気付く。それって本末転倒ってやつじゃない?とは……言えなかった。
それから暫くしてリカちゃんと私の番になり、リカちゃんは兵庫県で、私は梅田方面なので車は別になった。他の人に連れて行かれたリカちゃんに手を振ったらオーナーが現れて、ドライバーさんに「先に〇〇ちゃん送ったって」と言って私は更に待たされることに。
すると1人になった私に何人かのホストさんが気不味い雰囲気を読み取って、話しかけてくれた。なのに上手く応対できずに自分の不甲斐無さを思い知った。ただのポンコツだ。
少ししたらオーナーが「お待たせ!俺が送るわ!行こう!」と言って手を伸ばしてきたので「あ、すみません」と私も咄嗟に手をとった。そしてホストさんたちに「お先に失礼します」と一礼してから小走りでオーナーの車までついていった。
私の人生で、一番ポンコツな時期
目に入るもの全てが新鮮で
何もかもが刺激的だったあの頃
私は乗ったらすぐには止まれない
高速道路へと向かっていた
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主人公はゆとり第一世代のマコ(一ノ瀬真琴)アラサーになったゆとり世代が歩んできた、デコボコ道をほぼノンフィクションで小説にしました。
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こちらも再編し、小説になっています。人物名、団体名、場所など一部フィクションですが、ほぼノンフィクション小説になっております。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。また更新しますね!
peco
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