見出し画像

ユトリノヒトリ【02】 #黄色いカーテンと見栄っ張り


ユトリノヒトリ【01】▶︎▶︎


18歳で友人と大阪でのシェア生活がスタートした私はまず最初に人生初の挫折を経験する。

ダンスの専門学校はきっちり単位も取らないといけない。私はHip-Hopが好きだったけど、バレエにジャズにタップダンス。

それに加えて舞台史や英会話、そして参加しないと単位が取れないミュージカルの練習。


そんな忙しい毎日の中で、私は足に違和感を覚える。すぐに病院でレントゲンを撮ると……

両足共、小指の骨が元から逸れて生えていたり、土踏まずにある骨が1つの場所に2つあったり。病院の先生からはこう告げられた。


ダンスを仕事にできる足ではない。
続けるなら手術をして
根元から付け替えるしかない。
もちろんリハビリをするから
2年は時間が必要


家に帰るまでの記憶がない程のショックだった。まずは母に電話をして、報告だけしてどうするかは伝えないでおいた。

次の日に診断書を提出して、先生方に説明。

出来るだけ授業には出る、無理はしないという話になったけど、練習は必要だ。

骨が軋む痛みに靴下さえ締め付けられているように感じてしまう。痛みの原因がわかった途端に痛みが増したように感じた。


どうして高校生の頃に発覚しなかったのかと言うと、練習量がまるで違うのだ。

バイトが終わって夜中に2、3時間の練習を毎日なら少し痛いくらい。でも、1コマ90分の授業を朝から平均5コマ。プラス自主練をしていたので、帰る頃には激痛だった。


いつもノーテンキだった私はこんなことになるなんて、考えてもみなかった。

自分は至って健康体で、アレルギーや小児喘息はあっても、支障はない。後は背が低いだけだと思って生きてきた。

大袈裟かもしれないけど、お先真っ暗と言った状態で、スタジオに入るのが辛くてある日学校を休んだ。


そこから3日休み、1週間休んだ。
やる気がゼロどころか、マイナスになってしまったのだ。

小さい頃から飽きっぽい私は習い事が1つも続かなかった。唯一続いたのは習字を小1〜小6まで習った事くらいだ……


でもダンスだけは自分から続けてきた。

ダンスイベントに出てみたり、仲間と一緒にオリジナルのイベントを開催してみたり、先輩のチームのショーケースを見て勉強する為だけにクラブにも通った。ダンスをすると無心になれたのだ。


これからどうするか、学校もう辞めるのか。
何も考えられなかった。


とにかくずっと塞ぎ込んで、母が送ってくれた、真っ黄色のビタミンカラーが眩しいカーテンをじっと見つめているだけの日々を過ごした。

入学してから気付けば冬になっていて、春が来ようとしていた。いつものように黄色いカーテンを眺めていてふと思う……


もう、地元帰ろうかな。
でも就職する?地元で働く?
実家で暮らす?皆に何て言う?
ダンスはどうする?
私の人生ってそこで終わり?


私は何故か、地元に帰れば人生が終わると思っていたのだ。何故か見栄を張った。どうしても、うまくいってると思われたかった。情けないけど。

そうして、私は入学から1年で専門学校を中退することになった。

両親は内心、ホッとしたに違いない。
何故ならその頃、父親は独立前。元々知り合いだった社長から搾取されていたので、金銭的な余裕が全く無かったのだ。


私はダンスに関わる全てを封印した。
当時大好きだった洋楽。OMARIONやBow WowのCDもDVDも。ダンスイベントのフライヤーもポスターもチケットも写真も。全てを奥の方に仕舞い込んだ。


そして、ストリートダンサー仲間だった友人と久しぶりに会うようになった。彼女はとっくにダンスを辞めていた。

慣れない濃いめのメイクを教わり、髪を明るく染めて、スカートやヒールを履くようになり、夜の街へ出かけるようになった。


あの真っ黄色のカーテンだけは変わらずそこにあって、私の変化をずっと見ていたような気がする。ずっと……


私の足は日常生活には支障は無く、ヒールやパンプスも長時間で無ければ履ける。だが、痛い。激痛だ。大学に行ったことが無いので就活なんてしたことはないが、きっと死んでいたに違いない。色んな意味で。

今でも立ち仕事は向いていない。
どうしてもって時は出来るだけ足が痛くならない靴を発注している。


皆痛いもんだと思っていた10代の頃にレントゲンを撮っていなければ、今も謎の痛みを我慢していたかもしれない。



ーーーーー


主人公はゆとり第一世代のマコ(一ノ瀬真琴)アラサーになったゆとり世代が歩んできた、デコボコ道をほぼノンフィクションで小説にしました!


ーーーーー



こちらも再編して、小説にしています。が、この【02】だけはあまり変えていません。次からはもっと小説っぽくなっていきます。


今回も最後までお付き合い頂きありがとうございます。また更新しますね!


peco




この記事が参加している募集

サポートして頂く方へ♡ありがとうございます。あなたのサポートがとても大きなチカラになります☺︎