見出し画像

Peak2Peakのデジタル写真講座:第3回  写真にとって「画質」とは何か 後半

風景写真や山岳写真を撮影し作品として完成させていく時に必要な思考やテクニックを、毎回お伝えして行きます。今回のテーマは「画質」その後半です。

マガジンを定期購読すると、全ての記事を読む事ができます。

<画質と創造性は別問題>
ここでお話しする「画質」は、前回(写真にとって「画質」とは何か 前半)で述べたカメラの設定項目にある画質ではなく、写真の仕上がりに関する事柄です。
最初に断っておかなければならないのは、「画質が良い写真=優れた写真作品ではない」ということです。「画質」はある程度定量的に測れる指標のようなもので、画質の良し悪しと写真の創造性や作品性は別問題です。いわゆる画質が悪い写真であっても、優れた写真はたくさんあります。また画質の悪さを表現手法にしている場合もあります。

<画質とは情報量の多さとエラーの少なさ>
シンプルな言い方をすれば「画質」の良し悪しは「情報量」に比例しています。カメラがその性能をフルに発揮した時に記録することができるはずの情報量が、何らかの理由で損なわれ失われていくほど、画質は低下していきます。逆に言えば、情報を損なわないように、失わないように記録し画像化できれば、画質の低下を避けることができます
また最新型のデジタルカメラのセンサーは、一般的にいって過去のセンサーよりもたくさんのより質の良い情報を記録することができます。優れたレンズは、解像度が高くきめ細かな像を作ることができます。つまり、エラーが少ない質の良い画像を作ることができます。使っているカメラ、レンズの持っているポテンシャルを最大限に引き出すことができれば、良い画質の写真を生むことが出来ます。

ではデジタル写真において写真の出来上がり「画質」を左右する主要な項目で、画質を落とす原因となるケースとその解決方法を見ていきましょう。

<ノイズとざらつき>
画像において「ノイズ」とは、本来は無いはずの画像信号です。下のサンプルをみていただければわかるように、拡大表示すると、暗部に本来は存在しないはずの光った点が多数を見ることができます。

画像1

(サンプル①  上:ISO400 露光時間25秒     下:一部分を拡大)

画像2

暗部に見える細かい光、これが画像の中にあるノイズです。ノイズが発生する主な原因は、長時間露光高感度設定です。このサンプル①のノイズは、主に長時間露光によるものです。つぎのサンプル②は、ISO51200  露光時間1/5秒で撮影したものです。

画像3

それを拡大したのが下の画像です。暗部にノイズが発生しています。
画像4

サンプル②は同じ撮影状況で、感度をISO51200という超高感度に設定して撮影したものです。高感度にした分だけ、シャッタースピードは1/5秒と早くなっています。種類の違うノイズが出ているのが分かります。こちらは高感度設定が原因のノイズです。
このように、画質を低下させるノイズの原因は、高感度と長時間露光の二つがあります。(発生するノイズの種類も「輝度ノイズ」と「カラーノイズ」の2タイプがありますが、ここでは詳細を省きます)

被写体の明るさが同じ場合、露光設定における<ISO感度、シャッタースピード、絞り値の組み合わせ>は複数あるので、なるべくノイズが出ない組み合わせを選んで撮影すれば、画質低下を防ぐことができます。

画像5

上:ISO400 f=5.6  30秒

画像6

上:ISO1600 f=5.6  8秒

画像7

上:ISO12800 f=5.6  0.8秒

ここでもうひとつ、画質低下の原因となっている「ざらつき」もチェックしておきましょう。上の3枚を比べると、ISO400で撮影した画像がもっともざらつきが少ないことが分かります。これは粒状性と呼ばれるもので、感度が上がると、ざらつきが出る=粒状性が低下します。ノイズがなく、粒状性が細かくざらつきがないのは、ISO感度が低い設定です。

<風景写真を撮る際のベストの組み合わせ>
さて、晴れた日の太陽光線が十分にある風景の明るさは、ISO感度とシャッタースピードと絞り値の組み合わせで言うと、ISO100  1/250秒 f=8 です。これは全世界共通の絶対的な値です。ぜひ覚えて(暗記して)ください。
これが何を意味しているかと言うと、晴れた日の、十分に明るい屋外で撮影する時、ISO感度は「ISO100」と言う十分に低い値に設定しても、手振れを心配する必要がない1/250秒と言うシャッタースピードで、絞り値=8で撮影できる、と言うことです。この組み合わせは、画質の観点から見た場合、風景写真を撮る際のベストの組み合わせのひとつです。

画像8

上:実際にISO100  1/250秒 f=8 で撮影した写真

<撮影後のノイズ処理>
ノイズは、「ノイズリダクション処理」が可能です。方法は2つあります。ひとつめは、カメラボディ内で撮影時に処理する方法。これは「メニュー」の「撮影メニュー」の中に、「ノイズ処理」(ノイズリダクション、NRなどの表記)の項目があります。
カメラは撮影後にRAWデータからJPGデータを生成していますが、その時にこのノイズリダクションを行うことができるのです。
メーカーによって設定項目に少し違いがありますが、先の述べた高感度のノイズ、長時間露光時のノイズ、それぞれについてノイズリダクションをせってできるカメラもあります。
もう一つの方法は、RAWデータをパソコンに取り込んで、アプリケションで処理します。下に作例を掲げました。
ISO25600で撮影した画像を拡大したものです。上がノイズ処理無し、下がアプリケーション上でノイズ処理を行ったものです。

画像9

ISO25600で撮影  上:ノイズ処理無し 下:事後的にノイズ処理有り

画像10

ここから先は

3,540字 / 13画像

¥ 300

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?