MELODY&NUTS #17 PIZZA&BEER
『今回の件は俺に任せろ』
『任せろってなんだよ』
『いーから俺に任せろよ
俺は家族も彼女も居ないし
居るのはメロ
お前くらいなもんだ』
『俺だってナッツと
大して変わらないさ』
『嘘つくんじゃねー』
ナッツは力強く言い放ったあと
ポケットから紙を出した
『東堂真一郎
お前の父親だろ』
ディーが持ってきていた
野外フェスのチラシだ
『ディーに聞いたのか?』
『違う』
『じゃーなんで
知ってるんだ』
ポツポツと雨が降り始めた
ナッツはサングラスを外した
『この前三人で飲んでる時
俺、途中で起きちゃったんだ
悪いなとは思ったんだけど
きっかけが無くて
そのまま‥』
そうかあの時に聞いていたのか
『ナッツ黙っていてごめん
俺も思い出したくなかったんだ』
『いいよ
そんなことはいいんだ
メロはメロだ!
でも
たまに見せる
あの悲しい顔の理由が
過去にあるのなら
決着つけてこいよ』
『気持ちは嬉しいよ
ありがとう
でも今回の件とは別だ』
ナッツがメロに飛びかかる
馬乗りになったナッツが続ける
『全然別なんかじゃねー!
いいかメロ
今回の件で俺もお前も
捕まってしまったら
どうなる?
すぐに身元がバレて
マスコミが殺到する
お前の家族にも迷惑が掛かる
そんなことになったら
二度と父親とフェアに
会うことなんて出来ないんだぞ
最初で最後のチャンスだ』
ナッツは目に涙を溜めている
『メロ時間がない』
震える手の振動が伝わってくる
『俺の気持ちを踏みにじって
安い友情を取るか?
過去とケリをつけて
二人で漢になるか
今すぐ選べ』
『選べるわけないだろ
そんなこと』
『それでも選ぶんだ』
二人の心を映すように
雨は強さを増す
『俺ばっかり
都合が良いじゃないか』
『今回はたまたま
そうなっただけだ』
『どうして
そこまでしてくれるんだ』
『何回も言わせんな
俺に居るのはメロくらいだ
俺のそばに居てくれるのはメロくらいだ』
『でも!』と
何か続けようと
俺はナッツが納得する
理由を探したが
『今回の件
お前は何も知らない』
ナッツの優しさに勝てる
理由は見つからなかった
『わかったよナッツ
俺は何も知らない』
ナッツはメロに手を差し出し
体を引きあげた
『朝飯がまだだったな
奢らせてくれ』
『ピザとビールがいいな
腹一杯』