アーカイブ3 渡邉格さんのお話 4 循環型経済の話 (2016年11月19日)
・循環型社会の作り方
ここからは循環型社会の作り方という話題に入っていきますが、派遣と正社員、あるいは右翼と左翼とか、あの人の家は安いのにうちは高いとか、そういうことで庶民同士がバラバラと分断していってることに、私はすごく不安に思います。
分断対立は弱い者、知らない者に向かい、「中国が攻めてくる」とかいろんなこという方もいらっしゃって、「日本はもっと一致団結して戦わねば」とか言っちゃってる方もいて。それなら何で3.11の後に攻めてこなかったんでしょうかね?
そんなことよりももっと大きな問題は、そこで庶民が分断されて、資本の論理に利用されてしまうんではないかなと思うわけです。
結局私は資本の論理が悪いと思います。
お金の論理、株とかマネーゲームというところで日本が動いていくところが、一番怖い状況に陥る原因になんじゃないかと思います。
ここをなんとか変えていきたいと思っているんです。
私ごときがこんな提案しても意味がないかもしれませんが・・・。
しかし、小さな商売人として提案したいんです。
今日本のGDP、2012年500兆円ぐらいなんですね。
そのうち個人の消費は60%あって、数字に直すと300兆円ぐらいです。
これが、皆さんが日々使うお金なんですね。
意外と企業って60兆円ぐらいしか使ってないんです。
なので、この300兆円をもっと有効に使えないか、という風に考えています。
300兆円の内、食品関係の産業を加算すると70~75兆円ぐらいあります。
エンゲル系数から考えてもそんなものだと思います。
この食費、つまり食料関係の業界は一日三食の需要があるんですね、だから別にマーケティングとかしなくても、大体普通に売れていく。
これがぐるぐるまわっていったらもっと面白いんじゃないかと、私は思っています。
もう少し言うと、家計の内の食費を下げると給料が下がっていくのだとしたら、この食費を上げていってもいいんじゃないのと思うんですよ。
私が言いたいのは、もっといいものを食べて、もっといいものを作って、ぐるぐる循環させていくと、困るところはどこかというと、お金とか金融商品とか虚構経済で稼いでいる人達なんですね。
この層は庶民の食が安い方が一人一人の給料が下がって、その上前を企業利益として株価に反映させて利益を稼ぐから・・・。
・徹底的に良いものづくり
先ほど話したように、菌は循環型社会を守るために生きているわけですね。
そのとき困るのは人間の欲望です。
もっともっと欲しいんだからって土から収奪しようとすると、菌が腐らせて土に還すという話をしました。
それと同じことが起きるんじゃないかと思うわけですね。
食料を正しい価格でどんどん循環させていけば、大きすぎる欲望は無理がたたって腐ってしまうのではないかという話です。
もちろん家財とか住居、被服とかも含めて、もっともっと暮らしに関連する商品も付加価値を増やしていったらいいんじゃないかと思います。
そうしたら保険とか医療とか光熱費とかどうするんだって、これはたぶん国がやるべき問題じゃないかと思うんです。
でもこの世の中の流れとしては、水道も民間企業に売り払っちゃうという話も出てますし、これからどうなるかわかりませんが、やはり我々が今できることとしては、政府に対してNOをいうということもすごく重要ですけれど、NOをいった後にどういう社会を作るんだということも用意していかなきゃいけない。
だったら、科学技術もインフラもしっかりしているようなこんな国で、もっと豊かに暮らしていって世の中がより良くなっていくなら、そっちの方がいいんじゃないかということで、私はどんどん高い食料品を作っていくべきだと思っています。
ここで大事なことは、お金よりも価値のある商品を作ることです。
それは一言で言うと、徹底的にいいモノを作るという事です。
今、缶詰工場で作られているものが、明日から価格が10倍になりましたといわれたら、単なるインフレで暴動が起きるわけです。
そうじゃなくて、ちゃんとしたものを手間暇かけて、皆にわかるストーリーで作っていくということですね。
良いものは一人じゃ作れないんです。だから10人の雇用を作って、みんなに給料を渡して、そうするとこの価格になるんだからしようがないでしょうという、新しい産業スタイルを作らなきゃいけないと思います。
それがお金よりも価値のある商品だと思いますし、その商品はみんなに値切られることがない。そういう商品を作っていきたいと思っています。
・美味しい食で、変わる世の中
そこで重要なことがもう一点あります。
消費者は賢くなっていると思うんですが、ほぼ9割がサラリーマンであるこの世の中では、お金の使い道、流れは決まってきちゃいます。
食費を、給料の4分の1使っていたのを2分の1にしましょうなんて、なかなかサラリーマンにはできない。
そこで私が提案したいのは、事業家を増やすということですね。
簡単にいうと、事業家は何かを買うという行為を、消費ではなく投資としてとらえます。
こういう産業が増えていくんだったら、巡り巡って自分の事業の利益に繋がるから、うちは高くてもいいから買いますよ、というのが事業家の強味じゃないかなと思ってます。
事業家をどんどん増やしていかなきゃいけないのに、日本は自分で商売をやっている人が年々減っているのが現状です。
もう1割ぐらい、現在11.6%って書いてありますけれども、これには家族従事者も入っています。
うちは家内が社長みたいなもんでね、その人たちが強いかもしれないですが。
とにかく事業家の比率が低すぎる。もっと増えていけばいいなというのが、私の提案です。しかも、田舎で増えていくといいんじゃないかな。
そうして田舎の価値もどんどん上がって、食品の価格も意義ある形で上がっていって、都会の労働者の給料も高くなっていくという循環を作っていきたいと思っています。
それが、おいしい酒と美味しい食べ物を食べることで世の中が変わるんじゃないか、という提案ですね。
・タルマーリーの働き方
私たちがタルマーリーでやろうとしていることは、仕事を通じて環境をより良くしていくということですね。
まだまだこれは全然できてないので大きなことは言えませんが、森を守るために、できるだけ薪をつかった熱源を使っていきたいと思います。
そうすると水が綺麗になる、空気が綺麗になる。そうして里山が綺麗になれば、ここに麹菌とかね、発酵菌が棲みやすくなるので、菌が採り放題でうちは安泰なわけですね。
そんな形で事業をどんどん循環させていけば、本当に楽しい人生が送れるんじゃないかと思っています。
昔のやり方で働いていますが、スタッフたちがついてこれなくて辞めてしまうとかね、色々あるのは大変なんですが。
でもこういう働き方をしてすごく思うのは、生活と仕事と遊びに隔たりがなくなって、仕事も含めて自分の人生の時間になっていくということが、素晴らしいですね。
これが人生の楽しみ、つまり醍醐味なんじゃないかと思っています。
もうひとついうと、夫婦でうちはやっていますのでね。
同じ時間をずっと過ごせるんですね。
大変なこといっぱいありましたが、いまは夫婦同等で戦える、というか。
これも気づいてみたら、分断というのは個人も家族も起きているけれど、これを繋ぎ合わせてみたら、昔のやり方になってしまったという話で締めくくりたいなと思います。
美味しいものを食べて、みんなで世の中を変えていけたらいいんじゃないかという、そんな講演をさせていただきました。どうもありがとうございました。
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