ちくわのあなから世界を覗いたら。
ちくわの穴から、世界を覗くというはなし。
ちくわの穴を覗いたことがある方ならご存じかと思うけど、ちくわの穴の先にはなにもない。特になにも起こらない。いつもの景色がちくわにきりとられて、「ぽつん」と存在している。
いつもの見慣れた部屋の風景が広がっている。ちくわの穴から世界を覗いても、一秒前となにも変わらないし、一秒後には何の変化もないだろうと思う。
そしてまさか、みなさんが覗くちくわの穴のさきに、ナイアガラの滝や、ナパバレーのブドウ畑や、仁徳天皇陵が見えることは、僕は想定していない。
でも、想定はしていないけれど、覗く人によっては、そういう世界が見えるのだと僕は思っています。
僕が今、ちくわを覗くと、こんな世界が見えます。
なんか、城から望遠鏡つかって誰かが城下を見下ろしていたけど、あれって誰だったかな、信長かな、秀吉かな、いや、フック船長なのかな、志村けんなのかなぁ、ちくわって以外に柔らかいから両手で持たないとまっすぐ先が見れないんだよなぁ、望遠鏡みたいだなぁ、やっぱり。フック船長って、片手はフックだったから、たしかフックのところに望遠鏡を添えて見てたよなあ。懐かしい。
そういえば子供の頃に、法事かなんかで港町に行ったときに露天でちくわ焼いてうってたよなぁ、細い竹に魚のすり身を塗って焼いてたなぁ、あの焼いてるおばちゃん終始笑顔やったなぁ、前歯の一部金歯だったけど。
そう思えば、あのちくわも、このちくわも、海を泳いでいた魚だったんだよなぁ、どんなもの食べてたんかな、海老かなぁ、貝かなあ、ちいさい鰯とかかな、タコの子供かもしれない。意外に集団で大きなサメとかを襲って食べてたかもしれない。逞しいなぁ。
その魚たちは夜にはどうやって眠ってたんだろう。夢は見るんかな、子供のこととかどういう風に考えてるんやろ。ほかの魚に食べられることとか、人間の網に捕まることについてどういう気持ちになるんやろ。わくわくしたりすることってあるんかなぁ。
意外にテレビの埃って目立つなぁ、ケサランパサランみたいな埃がコンセントのとこについてるやん、電気食べてるんかな、あいつ。火事なるからあとで取ろ。しかしちくわがぬるくなってきたな、さきから目にもちょこちょこ当たってるし。
これってもしかしたら、ちくわの工場の人とかも、検査のひとつとしてちくわの穴を覗いたりしてるのかな、ドモホルンリンクルの工場の人みたいな感じでまじめな顔してひとつひとつちくわの穴を確認したりするのかもしれんなぁ。だれかのポケットのクリップとか、FRISKとか入ってしまったら大変やからなぁ、しっかり覗かんと。ちくわ食べてクリップ入ってたら苦リップで苦立腹やん。何言ってんのおれ。
しかし世の中はほんとにだれかの仕事でなりたってるわ。魚とる人、捌く人、すりつぶす人、棒にすり身を付ける人、焼く人、あ、すりつぶすとこからは機械でできるか。そしたら、機械技師の人とか、設計士の人とか、部品加工の職人さんとか、めちゃくちゃ関わってくるやん、すごいなそれ。
パッケージの印刷会社の新人さんなんて、ちくわのパッケージを初めて任されてデザインしたかもしれない。上司に起こられたり誉められたり残業したりしたんやろなぁ、大変やったなぁ、ちゃんと見るようにするね、パッケージ。このちくわ運んでくれてる人もいるし、店に並べるひともいるし、それを冷蔵する機械をつくるまた機械系の人たちの登場やん。
レジで買うときもレジの人とか、商品登録した人とか、レジの機械の人とかまた、機械の人やん。機械の人需要あるなぁ。このちくわを加熱するフライパンとか、箸とか、皿とか、もう職業が数えきれない。こりゃもう、覗くの止めて、
感謝して食べんと、魚から箸職人まで失礼やん。だから、 ご馳走様 って人はいうのか。すごい。
以上、ちくわの穴から中継でした。
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