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「ATBユーロプログレ」を語る

以前、「各音楽の出会いと深化 ~Prog Rock編」にて、PFMとNEW TROLLSについて書きました。
どちらもイタリアンロックの至宝であり、とうぜんユーロロック(ユーロプログレ)の枠に入ってくるんですが、前回この二つのバンドをとりあげたのは、単なるブリティッシュロック好きとしてのフロイドやクリムゾンファンだった私を、いわゆるの“プログレバンド”に目を向けさせるきっかけになったバンドだからでした。
つまり、フロイドやクリムゾンは、プログレッシヴロックというカテゴリーを意識するにはあまりに巨大すぎる存在だった、したがって、単体でジャンル扱いしていた…というわけです(ゆえに、ここで今後記事にするかもしれません)。
そんなわけで、私自身がユーロプログレというジャンルを掘り下げていく作業の指針になったのは、むしろ五大プログレバンドよりもイタリア勢あり、そこに基準を置いていたような気がします。

例えば当時、GENTLE GIANTの『Octopus』を買っていますが、これもPFMが影響を受けていた、という話を聞いていたから興味を持ったのです。マーキー誌にも「ブリティッシュの巨人」というコーナーがあり、そこで名前は把握していたのですがやっぱり“PFM”というワードが刺さったのでした。

また、CAMEL、RENAISSANCEといった抒情性を売りとする英バンド群にも手を出しています。そのきっかけは、当然シンフォニックでクラシカルな感性に惹かれたのではありますが、やっぱり当時のイタリアンロックの…QUELLA VECCHIA LOCANDAやLOCANDA DELLE FATE、RDMような美しさに先に触れていて、その流れの源流を求めていったがゆえの探訪でした。

そういった“水が流れるが如き音像”、“リリカルに妖精が飛び交う情景”にひかれますと、例えばカンタベリー系やクラウトロックは後回し…などという愚策もとってしまいがち。
当時マーキー誌でも大絶賛だったOPUS AVANTRAあたりも、さっぱりわかりませんでした(←初めて遭遇した板起こしだったので、「正規なのになんじゃい」…という怒りもあった。今思えばこのへんは修業期間だったかとw)。でも、仕方ないではないですか、当時バリバリの厨二病だったんですからw

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さて、話を戻してそんなシンフォ系ユーロのなかで気に入ったものをあげていってみたいと思うのですが、それに関連するようなネタとして、かつてツイッターで「#ATBユーロプログレ」という酔狂な企画が行われていましたのを思い出しました。
ATB…すなわち、ユーロプログレ(英は除く)のアルバムのオールタイムベスト投票をしましょう、というわけです。
ちなみに一人につき投票できるのは7枚でした(たぶんツイッターの文字数に則して)。その時の私の投票をみてみましょう。

…あれからもう8年もたってしまったのですね。
いま見直すと、なんでこんなセレクトにしたのか、さっぱりなのですが、たぶんいろんな国を入れようとした結果なんだと思います。あえてイタリア抜きなのも、それだとイタリアばっかになっちゃうから、あえて自重したのでしょう。
しかも、シンフォニックなロックを求めているというより、奏者がクラシックの素養があったゆえ、結果的にそういう音になってしまったようなものを選んでいますな。

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TRACEなんてその典型で、ある意味“オランダのキース・エマーソン”といっていいリック・ヴァン・ダー・リンデンによるインストバンドです。有名クラシックナンバーのアレンジしたがるのも本家同様だし、たまにジャージーな展開に持っていくのも類似しているので、まさにELPの弟子筋と言えそうですが、今聞くと結構イモっぽいところや冗長なとこも気になります。

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スペインのLOS CANARIOSも、ヴィヴァルディの「四季」をロック化するという驚異的作品を残しています。その作品感や演奏能力を鑑みると、ユーロプログレのなかの評価があまり高いとは言えないのはもどかしい気分です。
ただし、正統的なプログレッシヴロックとしてこれをセレクトするのが正しいとは思えない不思議な感覚があります。芸術性の高さゆえ、ロックとして楽しむ作品とは違うといったところでしょうか。大好きな作品に間違いはないのですけれど…

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フランスのWilliam Shellerも似たような感覚があります。実際に出てくる音は、完全に現代音楽的なもので、折に触れてシンセやドラム、エレキギターが顔を出したりするので、音感的にこっちに分類されることもあるのかな…的な感じの一枚です。難解さもあり、上記OPUS AVANTRAにも通じる世界なので、いくら完成度が高いとはいえ、なんでこれを選んだのか自分でも謎です(少しだけNEW TROLLSのコンチェルト・グロッソっぽい部分があるからかもね)。

たぶん、他の人が選ばないとことか、こっちのが高尚だろう…とかいった変な思惑があったんだろう…と。

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でも、最後にあげたフランスのPULSARは今でも大好きなのでありました。リストにあげたバンドの中では演奏能力は少し劣ると感じるかも。
とはいえ、ソロをひけらかすようなスタイルではなく全体のアンサンブルを重視するゆえそう感じるのかもしれません。
出自がサイケデリック方面だったことも含め、PINK FLOYDを連想させるところもあります。素朴で牧歌的でありながら非常に空間を感じさせるのあたりも似ていると思います。
私がくどくど言う以前に、amebaに素晴らしいレヴューがありました。

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…ということで、現在の思いといろんな乖離があったので、いつかの機会に最新の「ATBユーロプログレ」をあげてみたいと思いましたです、はい。

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