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密教に伝わる禁断の呪術:髑髏本尊歓喜法
髑髏本尊歓喜法と呪術の歴史
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今回は、夏なのもあり「髑髏本尊歓喜法」という気味の悪い呪術についてお話しします。
そもそも呪術は歴史を振り返ると、密教の発展とともに多くの呪術が生まれてきました。
密教の起源と発展
密教はインドで発展しました。現存している密教は、チベット仏教と、天台宗の密教である台密(たいみつ)と、それに対する東密(とうみつ)といわれる真言宗の3つだけとなっています。(諸説ありです)
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奈良時代に密教は日本にあったとされていますが、奈良時代は密教という名ではなく、雑密(ぞうみつ)と呼ばれていました。
その後、空海が京都を中心にし、密教を定着させ、高野山に瞑想の道場を開きました。
空海が体系化した密教は真言密教とよばれ、その教えを教義(きょうぎ)とする教団を「真言宗」といいます。
「真言」とは、真理を表す秘密の言葉という意味です。
仏教と密教の違い
オープンにできない秘密の仏教を密教と呼びます。
従来の仏教は、釈迦が説いた教えを聞き書きの形式で伝えていますが、密教の教典である『大日経』(だいにちきょう)は、宇宙の祖であり、存在自体が宇宙とされる、大日如来から直接教えを受けたものです。
そして、その聞き手は修行時代の釈迦自身。
つまり、仏教の真の教えは大日如来が教える密教なのだ。
というのが基本的な密教の考え方です。
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密教の教えでは、即身成仏を達成すると特殊な力が得られるとされています。
例えば、霊視や透視、テレパシー、前世や過去を知る能力、瞬間移動、願いを叶える引き寄せの力などが挙げられます。
さらに、密教では、仏教で禁止されている愛欲の力や呪術の力も認められています。
仏教の世界では、僧侶たちは性行為を禁止されていましたが、密教では性行為を「陰と陽の和合(わごう)」として肯定していました。
権力者たちを魅了した密教の力
時の権力者である天皇や貴族、あるいは戦国武将たちは、学問的な仏教よりも、祈祷や呪い、派手な曼荼羅、そして性行為までも認められる密教に魅了されていったのです。
密教は相手を倒す呪術や願いを叶える力を持っているとされ、これが彼らを引きつけました。
余談ですが、上杉謙信と武田信玄が互いに呪術合戦を繰り広げていたことも有名です。
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また、平将門の乱の際には、天皇の命令で真言宗の高僧が命じられ、真言宗最大の秘法「大元帥法(だいげんのほう)」という怨敵への最大呪術を平将門に向けて行わせました。
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その結果、平将門は戦闘中に額に矢が突き刺さり死亡しました。
平将門を倒した者が名乗り出れば英雄となるところでしたが、矢を放った者は不明であったため、真言宗の呪いで殺されたと伝えられています。
また、聖徳太子も呪術を使い、物部氏と蘇我氏の争いに加勢したとも言われています。
これらの話が真実かどうかは不明ですが、日本では昔から呪術や密教が歴史の裏で多く使用されていたとされています。
死者を蘇らせる呪術
話を戻しますが、密教の中には、死者を蘇らせる呪術や、死者の亡骸を使う「反魂術(はんごんじゅつ)」があります。「反魂」とは、死者の霊魂をあの世から現世に呼び戻すことを意味します。
これらは死者を蘇らせる術や民間信仰で、僧は死なず永遠の瞑想に入り、その亡骸がそのまま仏になる即神仏のようにして、死後もその人物の力を頼り祈願祈祷するもので、日本以外にも多く信仰されていますよね。
宗教にもよくある、派生したり信仰が独自解釈されたりとするものですが、いまから紹介する髑髏本尊歓喜法はまさにこのような密教から派生し邪教とされた信仰で、宗派の名前は真言立川流です。
邪教「真言立川流」と髑髏本尊歓喜法
真言立川流は、かつて一大勢力を誇っていた密教の一派でしたが、現在では弾圧を受け、邪教として滅び去りました。鎌倉時代から室町時代にかけて、その影響力は非常に大きかったようです。
立川流が邪教として糾弾されたのは、1270年に書かれた『受法用心集(じゅほうようじんしゅう)』においてです。この書物では、立川流が禁断の密教として紹介され、以降、立川流は邪教として認識され、衰退していきました。
『受法用心集』には、立川流が複数の男女の性交を通じて即身成仏に至ろうとし、人骨の頭蓋骨、特に髑髏を使った「髑髏本尊歓喜法」という呪術を行っていたと記されています。
その呪術の作法は以下の通りです。(閲覧注意です)
人の髑髏をよく洗い清める。できれば亡くなってすぐのものが望ましい。髑髏にはランクがあり、最も良いのは高僧のもの、次いで修行僧や国王のものとされ、髑髏の質が良いほど、優れた髑髏本尊ができる。
真言を唱えながら髑髏に漆を塗り、次に顎や歯をつけて生前の状態に近づける。
復元が済んだ髑髏を桐の箱に納め、枕元に安置する。
その後、複数の美女と性交し、双方の体液を髑髏に120回塗り続ける。
毎夜12時から2時まで特殊な香を焚き、その香を髑髏に染み込ませ、「反魂真言」を唱え続ける。これを1週間続ける。
髑髏に金箔を張り、性液を混ぜた絵具で曼荼羅を描き、最後に化粧を施して完成させる。
8年後、髑髏本尊には偉大な力が授かり、願いを成就するとされる。
しかし、この髑髏本尊に関する記述が含まれる『受法用心集』は、真言立川流を攻撃するために書かれたものであるという説もあり、立川流が本当に邪教であったかは今となっては不明です。
蘇る現代の呪術
現代の呪法についても、実際に呪術が利用された事例があります。
その一つが1970年に結成された「呪殺祈祷僧団(じゅさつきとうそうだん)」です。
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この組織は、日本の公害問題に対して、原因となる工場や企業の経営者を密教の呪術で地獄に連行するとして結成されました。
呪殺祈祷僧団は「呪殺」と書かれたのぼりを掲げ、公害企業の前で「呪殺の儀式」調伏法を行いました。調伏法とは、怨敵や悪魔などを調伏する修法であり、まじないによって人を呪い殺すことを指します。
彼らが企業に送った声明文には、「公害企業の経営者は環境を破壊し、地域住民を苦しめている。これ以上悪業を積めば、何度生まれ変わっても地獄から抜けられなくなる。そうなる前に、彼らを呪殺してあげるのが仏の慈悲である」と記されていました。
その結果、対象となった企業では幹部が次々に亡くなり、企業側が自社の過ちを認めて保障交渉に進んだという事例が報告されています。週刊誌には、病死や事故死、自殺などの原因不明の死者が多数発生したと記載されています。
現代においても、福島原子力発電所事故や安全保障法制への抗議を目的として、2015年に「呪殺祈祷僧団四十七士(JKS47)」が結成されました。
彼らは呪殺祈祷僧団とは直接のつながりはないものの、その思想を継承し、「再結成」を自称して活動を続けています。
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今回は夏でもあるので、気味の悪い話をしました。よかったらフォローの程お願いします(^^