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デジタル化が進まない職場とパワハラが蔓延する職場の共通点

 担当者が交代してもやり方は何十年も変わらない、という現象が起きてしまうのはなぜか?ということで組織の体質や文化といった要因を前回考えてみました。今回はこうした仕事上の手法の変わらなさに加えて、パワハラが起こる組織の体質や文化も一緒に考えてみたいと思います。


デジタル化の遅れとパワハラ蔓延、一見すると別の問題ですが

 私は、デジタル化が進まない、つまり、長年やり方を変えることができない組織はパワハラの蔓延という問題にも陥りやすいと思います。つまり、私の仮説は、このふたつは根っこが同じなのではないか?というものです。
 こんな仮説を持ったのは、他でもない自分自身がそのような組織にいたから、という身も蓋もない理由になるのですが、今、そこから離れて組織が持っている特徴を振り返ってみると、あらためてそれらの特徴がデジタル化が進まない理由であり、かつパワハラが蔓延する理由でもあったな、と感じています。

デジタル化の停滞とパワハラの蔓延に共通する3つの特徴

権威主義的文化と年功序列制度

 権威主義的な組織では、指導者や上位者に従うことが絶対とされます。また、年功序列的な組織では年齢や勤続年数が長い人が自動的に権力を持ちますので、両方の特徴を持っている組織では、年齢や勤続年数の長い人に従うことが絶対となります。そしてこの上下関係が逆転することはありえませんので固定です。年齢が高い、もしくは在籍年数が長いことで地位を獲得した人は、若い人や新しい人が在籍年数以外の軸、つまりスキルの高さや発想の豊かさのようなもので優位性をもってしまうと、自分の絶対的優位な立場を失うことになるため「自分が考えたやり方、自分がこれまで続けてきたやり方こそが正しい」という考えに固執し変化や改善を嫌悪します。したがって上位者がスキルの高さや先進性、発想力といった在籍年数や年齢以外の要素を持ち合わせており、かつ、年齢や在籍年数ではなくスキルなどが評価されたことで結果的に上位にいる、というケースでなければ新しいスキルや方法が取り入れられることは永遠にないでしょう。
 また、権威主義的で上司や先輩の命令は絶対であり、従わなければ罰せられるという風潮がある組織ではパワハラが蔓延することは想像に難くありません。上下関係が厳しく、下位の者が上位の者に逆らえない環境、上位の者は下位の者に対して何をしても許されるような環境はあたりまえですがパワハラを容認します。

心理的安全性の欠如

 立場の上下関係なく、従業員が新しいアイデアや効率化を実現していくためのスキル習得を提案する際に「どうせ却下される」「反対される」と感じる環境では、批判されるリスクを恐れて挑戦を避けるようになります。従業員が自分の考えたことを安心して主張できない組織がとる道は現状維持一択となりますので、当然ながらデジタル化など進みません。
 一方、パワハラが起きる組織も心理的安全性が欠如しています。ハラスメントを受けたと感じた従業員や、そうした現場に居合わせて問題だと感じた従業員がそれを上層部に報告しようとしたときに、それをすることによって逆に自分が罰せられたり孤立するという恐れがあると、声を上げることができません。その結果、パワハラが放置されていきます。

変化への抵抗と現状維持バイアス

 これは、年功序列で権威主義、そして心理的安全性が乏しいことの結果とも言えますが、従業員が「現状を維持することが正しい」 という考えに支配されると、意識的にせよ無意識的にせよ、変化に抵抗し拒否するようになります。こうした抵抗は新しい技術を導入するリスクや、知らないことに対する不安や恐怖、そして「自分(自分達)は変化にキャッチアップできずに落ちこぼれるかもしれない」という自信のなさによって引き起こされていると考えられますが、そこに向き合わない限り従業員も組織も現状に甘んじ、成長しようとする意欲を失います。
 同様に、パワハラが頻発する組織でも、上の立場の人が権力を使って下の立場の人を支配するというやり方がまかり通る中では「何かを変えるべきだ」という意識が共有されませんし、特に権力を持っている上層部にとっては変えることのインセンティブがありません。結果として、こうした変化に抵抗する組織では自浄作用も働かずパワハラが放置され、組織が腐敗していくのだと考えられます。

「過去に同じような事例はあったか?」で解決できると思っているリーダー

 このような組織のリーダーは率先して自分がリスクや責任をとって問題を解決しようとしません。組織に問題があると知っていても「自分はリーダーとして今この問題に対して対処する必要があると思う。だからこういうことをする」という明確な意見を持たず、ゆえに具体的な行動もできません。要するに自分の頭で考えることができない、あるいは仮にできたとしても放棄しています。そのようなリーダーの口癖は「前に同じような事例あった?そのときどうした?」です。過去の事例を踏襲することでその場をやり過ごし、自らの責任を回避しようとするわけです。
 当然ですが、デジタル化や昨今のDXという新しい手法や技術への対応は、過去の踏襲でOKというわけにはいきません。また、「(同業の)あの組織ではどうしてる?」というのもそうしたリーダーの口癖ですが、同業の会社がうまくやっていたとしても自分達と100%状況が同じということはあり得ません。ハラスメントへの対応も同じ。「うちでは過去にハラスメント対応をしたことがないので、目の前の事案にも対応しません」とか「去年は文書を出したから今回もそれで」でよいとは誰も思いませんよね?

 今、自分たちの組織がどういうことになっているのか、それを自分はどうしたいのか、リーダーが自分自身で理解して判断をしない、自分の頭で考えずに責任回避を続けているうちは、デジタル化の推進もハラスメントの解決もできないと私は思います。


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