Print House Session ライブアートブックスでの印刷
4人のデザイナーと4つの印刷会社がタッグを組み、横田大輔さんの冊子をそれぞれ作るプロジェクト、「Print House Session」。ライブアートブックス × 田中義久チームは、何度も印刷テストを繰り返しどこまで出来るのか限界に挑戦していましたが、ついに印刷です。
今回の一番の特徴としては、なんといっても片面の印刷が裏に透ける、写真集としては異例の白銀38kg(厚さ0.05mm)という薄い片艶クラフト紙が使用されていることです。
プリンティングスタジオにあるハイデルベルグの印刷機が使用されます。まず右側の赤い吸盤で持ち上げ、左側ので印刷機に紙が送られるのですが、紙厚がとても薄いため、ここから吸盤の細かい位置調整が行われます。
通常は表CMYK(4色)と裏CMYK(4色)で両面印刷された状態で出てくるそうですが、今回は正確に印刷されているか確認しながら片面ずつ印刷していきます。
裏表の写真が互いに影響しあって、写真でいうと多重露光したような絵に仕上がります。同時に色が沈んで暗くなるため、データの段階でかなり写真を明るく調整した版が作成されました。そして通常のCMYK4色だけで、彩度の高い写真の色をどこまで再現できるのかも重要なポイントでした。特に浅葱(あさぎ)色と呼ばれるエメラルドのような色は4色では表現が大変難しいらしいです。
各色の印刷機の上にはインクつぼと呼ばれる、印刷機にインクを供給する入れ物が左右にゆっくりと動いています。そのローラーの部分を上から見てみると、ストライブ模様になっています。このストライプ一つ一つが印刷物の色調をチェックする台の各番号に連結していて、ボタンで各セクションのインクを供給する量を細かく調整します。
今回使用される紙はインクが乗りにくく、通常の1.5倍ほどのインク量で刷られているため、ちょっとしたことでシワになりやすいと、少量ずつ人の手で細やかな調整をされていました。シワになると各色の見当がずれるため仕上がりの色も変わってきます。同じ位置に違う4つの色を正確に印刷を重ねていく重要さ!何十年と業界で働いてるベテランの方でさえ、「湿度などで紙の状態が同じ日などない。紙はいきものなんだ。」とおっしゃるそうです。
やはり紙の薄さのせいで静電気が発生し、途中なかなか素直に紙送りがされません。しかしそこは印刷のプロ。印刷物が仕上がって出てくるローラーの部分に、静電気を軽減するシートを手でつけていきます。
目視で紙がきちんと出てきているか一枚一枚チェックします。うまくいきますように・・・。
安定して仕上がりが出てくるようになりました。さすがです!
ホコリなどがついていないかチェック。
そして色調も綿密にチェック、チェック。
片面が刷りあがりました!紙を乾燥させて、手で全ての紙をきれいに揃い整え、その後裏面にも印刷されます。
「印刷所で両面が印刷された後、紙の表面に蝋を塗布し更に透けるように加工されるんですよ。」と最終仕上がりのサンプルを見せていただきました。強いワックスの香りと、パリパリとした質感に、とても薄い紙に印刷されたとは思えない独特の存在感が。
通常一台の印刷機に2名のオペレーターがつくみたいですが、今回は繊細な調整が必要な印刷ということで沢山の方が仕上がってくる印刷物を暖かく見守っていました。ライブアートブックスさんの高い印刷技術と、機械だけではない人の手による各工程での本当に細やかな微調整がなければ完成できない印刷現場を体感した日でした。
写真/文: 山中美有紀
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?