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ソーシャルメディア上での情報操作を防ぐためにできること

※このインタビューは2024年8月5日に収録されました

各国でプライバシー法の見直しが広がりつつある中で、サイバー空間での争いとデータ保護も重要なテーマになってきています。

今回はイスラエルの弁護士事務所Erdinast, Ben Nathan, Toledano & Coでデータ保護に取り組むリオアさんに、これからのデータ保護制度のあり方と対策についてお伺いしました。

前回の記事より

イスラエルではプラットフォーム上での情報操作に関して、何か新しい動きは起きているのでしょうか?

ソーシャルメディア上での情報操作を防ぐためにできること

Lior: ソーシャルメディアに関する情報操作の動きについてですか?

Kohei: そうですね。重要なポイントとして、9ヶ月くらい前に戦時中の偽情報に関する内容が各国のメディアで広く報道されていたことを覚えています。こういった偽情報に対して法的な措置や解決策の検討が進んでいればお伺いできると幸いです。

(動画:Fact check: Israel and Hamas misinformation surges as war continues)

Lior: まず初めに、規制当局ではこの問題に対して具体的な行動を始めています。世界的なソーシャルメディア企業を例にとると、Twitter(現在のX)では40〜50%がフェイクアカウントであるとも言われています。

ただ、ソーシャルメディア企業にとってフェイクアカウントがビジネスの利益を生み出していることも事実です。ソーシャルメディア上でのキャンペーンを展開することによってもたらされる収益に影響し、政治を始めとした多くのステークホルダーが商業目的を含めて広告出稿を行っています。裏では、数多くの問題が起こっていますが。

このような動きに対して、テクノロジー企業が適切な対策をとっておらず、政策者の立場で考えると多くの問題が集積している状況です。

欧州ではこういった問題への対応も踏まえて、欧州AI法案を提案し、今後AIを活用した問題に対しての規制強化を進めています。それ以外にも、認識操作を禁止するような動きもあります。

規制当局からも新たな動きが進みつつあります。数ヶ月前に法案は可決され、欧州ではテクノロジーが引き起こす問題に対しての議論を進めています。6ヶ月以内には具体的な内容が整備されていくことになります。

ただ、欧州を除くと法的な対応について明確な方向性を示していくケースは非常に少ないです。イスラエル国内では、欧州のAI法についての注目は集まっていますが、まだ新しいテクノロジーの動きに対しての変化をどのように受け入れるべきかを考え始めた段階で、欧州と同様の基準を採用するかは明確な答えが出ていません。

注目は集まっているが、制度設計までは時間がかかるというところではないかと思います。

それ以外には、イスラエルの科学省がガイドラインを公表し、AI利用や導入に対する一定の方向性は示しています。ただ、これもガイドラインレベルで法的拘束力があるものではありません。

まだ公的な対策についての議論が始まっているところで、ビジネスについては今後検討されていくのではないかと思います。

スタートアップ大国から学ぶプライバシー保護対策とは

Kohei: ありがとうございます。非常に興味深い動きですね。次に新興テクノロジー企業についてもお伺いしたいと思います。リオアさんの法律事務所ではスタートアップ企業の支援も行っていると思います。

小規模企業でもデータ保護対策が必要な中で、スタートアップ支援の際にデータ保護や他の規制対応についてどのようにサポートしているのか非常に興味があります。

また、新たにAIを導入しようと検討しているビジネスに対して、データ保護やプライバシー法周りの観点からどういったことに気を付けるべき必要があるのかを教えていただいてもよろしいでしょうか?

Lior: とても大切な質問ですね。その質問は多くの起業家から頂くことがあります。まず私がお話ししていることは、データ保護やプライバシーの重要性を理解するということです。起業家自身が、自分が展開するビジネスはプライバシー法の下で提供できるものか否かを判断することです。 

特にプライバシー専門家を交えて、プライバシーバイデザインをどのように実現すれば良いか話し合うことが肝心になります。

プライバシーに関する閾値を理解する上で、プライバシーバイデザインの理解が重要な要素になります。このバイデザインの考え方を理解した上で、サービスやプロダクトのデザインを考えていくことが重要です。初期の設計段階からプライバシーの基礎を組み込むためです。

デザイン段階からプライバシーについて検討する理由として、三つのポイントが考えられます。一つがバイデザインが標準的なものとして取り入れられているということ。

二つ目が市場による要望が高まってきているということ。最後に三つ目が、プロダクトやサービス設計後に変更することが非常に困難であるということです。

画像:一度生み出したものは、変更が効かない

そういった背景もあり、プライバシーをデザインするためには初期段階で重要性を理解する必要があり、コンサルティングや内部での議論を十分に行っていくことが大切です。

これが最も有効な方法だと思います。私はこういった活動を起業家や経営者と日々行っています。このような議論は社内での連携前に実施する必要があるのです。サービスやプロダクトのアイデアづくりの段階から議論を始めていきます。

プロダクト開発段階に入ってからも、継続して議論は実施していくことになります。

こういった段階を経て、世の中にベータ版のようなプロダクトが公開され、一定数のユーザーが利用を始めた段階で具体的なドキュメントやポリシーに落とし込んでいく作業を行います。

これは、先程のデザインとは異なる段階になるので別途マイルストーンを整理します。ドキュメントやポリシーに落とし込む前には、別のコンサルテーション作業を実施します。

ステージごとに異なるコンプライアンスの形

スタートアップ企業に対しても、データ保護影響評価を実施し、特に十分に資金調達しているレイターステージの企業に対しては十分な対策をお伝えしています。

影響評価を実施する際に確認する内容としては、コンプライアンスの管理について伺うケースが多いですね。資金調達を十分に実施して、一定数利用者がいるプロダクトを展開している場合には、プライバシーリスクがより高くなるのでサービスやプロダクトへのコンサルティングとポリシー、ドキュメントに関するコンサルティングを同時に実施します。

プライバシーバイデザインを実施するためのコンサルテーションだけでなく、評価審査や管理について、またデータ保護責任者の設置についても事前に話をします。公開会社として活動する場合には、また検討事項が必要になりますが。

Kohei: ありがとうございます。プロダクトやサービスの設計段階から、基本的な権利についての考え方を理解し、デザインしていくことはとても大切ですね。プライバシーバイデザインをスタートアップ企業が理解することがより重要な対策になると思います。

では、最後にリオアさんから視聴者の皆様へメッセージをお願いしてもよろしいでしょうか?これまでイスラエルで数多くのビジネスをサポートされてきていると思うので、その観点からもお話をいただけると幸いです。

Lior: まず伝えたいこととして、プライバシーコンプライアンスやプライバシーバイデザインについて基本的な理解をすることが大切です。もし不安なことや支援が必要になれば、いつでもお声がけください。イスラエルへの展開を考える際にも、何かお役立てできるかもしれません。

Kohei: ありがとうございます。イスラエルには新興テクノロジー企業が数多くあるので、国内への展開だけでなく、国を越えて連携する際にも法的な考え方の違いや対策について理解しておくことが重要になりそうですね。リオアさんの活動が、そういった橋渡しを行うファシリテーターになっていくのだろうと思います。本日はインタビューにお越しいただきありがとうございました。

Lior: 今回はインタビューの機会をいただきありがとうございます。

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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