これまでのセキュリティ、そしてプライバシーの歩みと活動を始めた理由
※このインタビューは2024年3月12日に収録されました
AI利用が進む米国では、包括的なプライバシー法の議論が以前より進んできています。
今回は米国シンクタンクのR Street Instituteでプライバシー及びセキュリティ調査に関わるスティーブンさんに、米国連邦プライバシー法の現在地と関連法案の今後についてお伺いしました。
Kohei: 皆さん。こんにちは。本日もPrivacy Talkにお越し頂きありがとうございます。本日は米国からスティーブンさんにお越し頂いています。彼はプライバシーやセキュリティに関する素晴らしいリサーチャーのお一人です。スティーブンさん。本日はお越しいただき有難うございます。
Steven: こちらこそ有難うございます。
Kohei: 有難うございます。始めに彼のプロフィールを紹介したいと思います。スティーブン・ワードさんは米国シンクタンクであるR Streetのサイバーセキュリティと脅威への対策チームでプライバシー及びセキュリティに関するフェローとして活動されています。
連邦や州レベルでのデータセキュリティやプライバシー、サイバーセキュリティに注力し、新たなセキュリティ分野や国防における脅威、サイバーセキュリティの民間部門における影響についても調査を行っています。
スティーブンさんは10年近く法執行機関に関わり、パトロール部門や感知部門で殺人、強盗、性的暴行やホワイトカラー犯罪、児童虐待等の調査に関わっていました。彼はコンピューターフォレンジック調査員としても活動し、サクラメントバリーハイテック犯罪タスクフォース及びサクラメント子供向けのインターネット犯罪対策のメンバーとしても活躍されています。
スティーブンさんはカリフォルニア大学ヘイスティングス・ロー・スクールで博士号を取得し、ロサンゼルスのカリフォルニア州立大学ではトップ数%の成績を納め、英語での学位を納めています。
ロースクール在学中に米国連邦委員会でインターンシップを経験し、連邦及び州ごとのプライバシー法や競争法、ブロックチェーン技術に関連した消費者関連の課題に関わっていました。
米国政府で活動する前には、人工知能を法の分野に活用しているシリコンバレーのスタートアップSpeedLegal社でインターンも経験し、プライバシーやコーポレートガバナンス、人工知能による契約管理の質の担保についても関わっていました。
スティーブンさん。本日はお越し頂き有難うございます。
Steven: こちらこそ宜しくお願いします。
Kohei: 有難うございます。
では早速インタビューに移って行きたいと思います。スティーブンさんはこれまでにプライバシーやセキュリティ分野で素晴らしい経験をされてきていると思います。ここからはなぜセキュリティやプライバシーで働き始めたのか教えてもらえませんか?
これまでのセキュリティ、そしてプライバシーの歩みと活動を始めた理由
Steven: 私がプライバシーやセキュリティに興味を持ち始めたのは、法執行機関で働くようになってからです。当時のフランク判例に関わり、携帯電話からコンピューターまで広くセンシティブな情報の扱いについて執行機関がアクセスしていることがわかりました。
全てのデータにアクセスできるようになっていたのです。2015年か2016年にはいくつか同様のケースが問題になっていました。一つがライリー判決でカリフォルニアの裁判所によって特定のケースで逮捕を行う前に、携帯等へアクセスするためには令状が必要であるという判決が下りました。これまでは職員の権限で疑わしい場合には調査令状無しで携帯電話を探り、逮捕することができたのです。
(動画:No More Warrantless Cell Searches, Unless You Consent)
こういった判決を積み上げていくことで、このようなことは基本的にできなくなって行きました。これ以外にもサンバーナーディーノのテロリストのケースが該当するのですが、このケースでは鍵のかかったiPhoneへのアクセスをFBI職員が試みたのですが、結果的に情報が暗号化されていたためアクセスできなかったようなケースがあります。
政府職員はAppleが提供するスマートフォンのバックドアを通じて法執行のための調査に利用しようと考えていたのです。対象者とAppleが政府職員と戦った結果、最終的にFBIは個人の情報へアクセスすることができませんでした。
(動画:Apple vs FBI | San Bernardino Terrorist's Phone)
一方で、政府が多額のお金をサイバーセキュリティ企業へ支払うことによって解除できる可能性もあります。私はこういったテーマに魅了されて、ロースクールで法律を学び、今起きている問題に対して何か貢献できないかと考え、今のプライバシーやデータセキュリティの活動に繋がっています。
特に新領域のテクノロジーについては、非常に面白いと考えています。まだ未開の地も多いため、答えが出ていない領域も数多く存在します。答えが出ていないということも、私が引きつけられた理由の一つでもあります。
Kohei: 素晴らしい動機ですね。先程プロフィールでも紹介させていただきましたが、スティーブンさんはコンピューターフォレンジックにも取り組まれていると思います。このテーマでもお話をお伺いさせて頂いてもよろしいでしょうか?
R Street Instituteと連邦政府での活動と経験
Steven: そうですね。ロースクールに入学する前からデータプライバシーについては取り組んでいました。そのタイミングでコンピューターフォレンジック調査に関わっていたのです。 この調査は、私がサクラメントハイテックタスクフォースの一員として関わっていて、経験や知見を地域の政府に対して提供していく組織として活動していました。
この組織の活動を通して、小規模の部門から大規模部門までデジタル空間での子供の虐待や殺人等の犯罪に対して調査を実施していました。この仕事はとても魅力的で、楽しかったです。
Kohei: 子供や技術が複雑になったことでより被害に遭いやすい方々への配慮はとても重要なことですね。フォレンジック対策はより重要な意味を持つようになると思います。スティーブンさんは現在RStreetsでサイバーセキュリティと脅威への対策チームに関わっていると思います。ここからはスティーブンさんの現在のお仕事と連邦政府でのご経験についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
Steven: R Streetでは政府や市場に関する分野を中心に調査を行っています。特にデータプライバシーやセキュリティに関連したテーマについて、連邦政府や州政府レベルでの議論について広く調査を行い、サイバーセキュリティと人工知能に関連した内容についても取り組んでいます。
米国連邦取引委員会ではロースクール在籍時にサンフランシスコのオフィスでインターンシップとして働いていました。競争法やプライバシーに関連したテーマについて関わり、当時広く議論が求められていた仮想通貨等のテクノロジーについても関わっていました。
Kohei: とても興味深い分野ですね。ブロックチェーンや仮想通貨に関連した分野については私も過去に関わっていたことがあるので、どういった議論が行われていたのか非常に興味があります。
ここからはプライバシーやセキュリティについての議論に関する変遷についてお伺いできればと思います。スティーブンさんが寄稿された記事の中で、子供のデータプライバシーやセキュリティについて書かれたものがあったかと思います。現在は立法府でも児童性的虐待のコンテンツに関する法案を始めとして、広く議論がなされてきていると思います。
米国での子供のデータに関する取り扱いについて、セキュリティやプライバシーの観点からはどのような議論が行われているのでしょうか?
〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編は、次回お届けします。〉
Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author 山下夏姫