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異なる背景を持った人たちで作り上げる新しい価値観
※このインタビューは2023年5月5日に収録されました
欧州委員会では幅広くAIについての議論を進めています。
今回はリサーチサイエンティストとして活動し、欧州委員会の各種検討会にもエキスパートとして参加されているアガタさんに、欧州委員会で議論されているAIに関する取り組みについてお伺いしました。
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前回の記事より
教育の観点から、人工知能のような新しい技術について今後どのように変化していくのでしょうか?
未来の生成AI技術に対する規制と期待
Agata: そうですね。私はクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見したようなことはできないのですが、現時点で私たちは特定の知的技術についての議論はあまり行っていません。
私たちが議論しているのは数学的なアルゴリズムについての話で、データに基づいてどういった結果がフィードバックされ、現在地、スケジュールや翻訳されたマシーンコード(機械語)等が基本的な数学理論によってどのように処理されているのかについて議論を行っています。
この議論は私たち人類が持っている知性とはかけ離れた話です。まず私が伝えたいことは、人工知能の定義と知能は分けて考えることが必要だということです。
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私たちはいくつかの行動パターンを機械にデータとして提供し、機械が自ら機械語に翻訳してくれます。ただ、機械語というのは必ずしも私たちが望むように翻訳されるわけではありません。
機械によって作られた友人はあなたが求める返答を返してくれるわけではなく、あなたが求めていることに対して調整しフィードバックを返してくれるのです。この処理を延々と続けていくことになり、処理サイクルや処理の手順を開発者グループが開発しソフトウェアとして提供しています。
改めて始めに触れておきたいのですが、私たちは知能について議論していないことが大きな問題であり、まだ計算されているわけでもないことについて私たちは日々話をしていることに気づく必要があります。
特定のデータセットに基づいて統計的に処理されたものが特定の回答をフィードバックしてくれるのです。あるケースでは標準的な法解釈とは少し異なる統計結果に誤差が表示され、ガウス分布の観点から考えると以上の統計結果はそれぞれ異なったものであると考える方が良いと思います。
そして、私たちは人工知能という言葉について十分に注意して考える必要があります。
私たちは人工知能について広く周知せずとも安心して利用できるように事前に精査を行い、どのような段階を踏んでいくと良いか理解しておくことが必要です。一方的に機械によって情報を提供する代わりに、人々が普段友人と話をする際に各々の知性をもとにどういったことを信じる傾向があるのかを想定しておくことです。
私は人工知能とは複雑なアルゴリズムを活用し、私たちにとって有益なものをフィードバックするものとして考えています。例えば、数週間前に韓国のサムスンが組織内でのドキュメントや知識共有を行うためのオペレーションモデルを開発したと発表していましたが、こういったケースが考えられます。
学校を例に考えると、学校内で様々なドキュメントを共有することができますが、学校が位置する地域や慣習、背景によって異なる考え方を採用している地域ごとの違いが垣間見えることがあります。
異なる背景を持った人たちで作り上げる新しい価値観
宏平さんは日本人で私はポーランドで生まれた欧州人ですが、生まれた地域によって異なる言語環境を経験してきたと思います。勿論考え方も異なりますし、何を優先したいかという優先順位や感情表現、コミュニケーション方法も地域によって異なります。
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この違いは全く悪いことではなくて、生まれた地域独自の言葉を、地域の環境のなかで自然と学んできたことで今があるのです。私たちはお互いに学んできた背景を共有することに関心があり、それぞれの背景について学び合うことが大切です。
東京の学校で学んだこととポーランドの学校で学んだことを一つ一つ共有していくことは難しく、異なる環境下だからこそ実装していくことためには越えるべき壁がいくつかあります。
お互いの経験について良いか悪いか語ることではなく、お互いの違いを理解することが必要だと思います。
ここまで話してきたように地域ごとに情報に対する考え方が異なるので、異なるグループ間でお互いに情報や知識を共有するように実験的に取り組んでいくことが大切です。そして、異なるグループ間で出てきた懸念点については積極的に調査し、モニタリングを実施したり共有したりすることが必要です。
私はAIを広く活用することによって便益を得られると考えています。そのためにはアルゴリズムによって特定の環境下で処理が行われ、アルゴリズムによって得られる便益を最大化することが求められます。
そしていくつかのデータについては特定のパターンに限定せず、データを共有するように心がける必要があり、通知を繰り返すことなく世界中で利活用することを目的にビジネスや標準化の動きを進めていくことが必要です。
世界中で異なるルールや規制がある状況では、扱う地域によって誤りが発生してしまう可能性も考えられるため今の状況は得策ではないと思います。
そして、”英語に特化した特定の基本パターンを強いる環境” ではなく各地域の先生たちがその地域で得られるような便益に即した方法論に沿って手順を進めていくことが必要です。
私たちはどのようにして共通の考え方を整理し、コミュニケーションを進めていけば良いか考えなくてはいけません。そして特定の人たちだけで推進していくことへの危険性についても考える必要があります。
全てに適応した “one fits all” の考え方に固執するのではなく、お互いを比べたり、事前に調査を行うことが必要です。このように教育現場が抱えている複雑な問題に対して、真剣に取り組んでいくことが必要ではないでしょうか?
もし全ての人にマッチした靴を作れないとすれば、教育も同様にして全ての子供達にマッチした一つのものを提供することはできないと思います。
私はアルゴリズムを利用することによって、標準的な基準からは外れてしまった子供達の少しの違いも考慮した機会の提供を支援することができるようになると思います。
子供達が持っている才能や夢を後押しすることがテクノロジーによって支援することができることであり、テクノロジーによって負の影響が生まれてしまうことは望ましいことではありません。
これからは議論を通して共有された内容をもとに、参加者間で連携しながら一般規則や標準化に沿った形で情報共有を進めていくことが求められると思います。ちょうど米国では2日前にこういった動きがありました。
Observatory on AIで取り組んでいることは、イノベーションや研究成果の観点からどういったソリューションが最適であるかを検討しています。欧州だけでなく、日本でも同様の活動は行われていると思います。
各国での取り組みはG7で決定したことを反映し、各国ごとにバラバラな議論で進めていくのではなく、コミュニケーションを前提として“one fits all“ や “one pair of shoes” ではない形の方法を模索していくことが必要です。
Kohei: 貴重なお話をいただきありがとうございます。これからテクノロジーが進歩していく中で、本日お話しいただいた課題については1カ国だけでなく、各国が協調して取り組んでいく必要があると思います。最後に視聴者の方へメッセージをお願いしても宜しいでしょうか?
アガタさんのこれまでのご経験は新しいテクノロジーの変化を知る上で、法や技術の話だけに囚われない視点で考えるためにとても参考になると思います。皆さんへメッセージを頂けると幸いです。
人が持つ才能や権利の可能性
Agata: わかりました。私は人が持つ才能や権利がとても大切なものであると考えているので、今日取り上げたテーマについても引き続き考えていきたいと思います。
本日はこういったインタビューの機会を頂き非常に光栄ですし、世界中の皆さんと一緒に重要なテーマについて考えることができるとても素晴らしい機会だと思います。私は何が最適で、私たちは何ができるかについて考えることが大切だと思っています。
私たちは他人の生活に思いを馳せながら、同じ価値観を大切にし、同じ考え方のもとでそれぞれの活動に取り組んでいると思います。何かを得るよりも、それぞれの生活について考えていくことが大切です。
子供について考えてみると、子供達は何かを疑ったり、意図的に避けたりすることなくありのままで話をしていると思います。
私たちは人生の最後まで子供のように学んでいくことが必要になります。私は子供達がコミュニケーション等を通じてより良い時間を過ごし、大人のように振る舞って意図しないような行動を行うのではなく、望んだ道を歩める環境づくりが必要だと考えています。自分が本当に望んでいることは、自分の心に聞いてみないとわかりません。
何かを信じることで自分自身を成長させることに繋がり、新しい出会いが同じ考えや方向性に導いてくれると思います。
私がこれまでに考えたことは、コミュニケーションを通してどのように成長していけるのかということです。これは私たち人間にとって普遍的なものなのです。
私たちが在すべきことは人類にとってどういったアイデアが必要か考えていくことです。以上が私からのメッセージです。
Kohei: ありがとうございます。とても素晴らしいメッセージでした。本日は貴重なインタビューのお時間をいただきありがとうございました。新しいテクノロジーが誕生し、社会全体が変化し始めている時期なので、お互いの活動をアップデートしていきましょう。
新しい取り組みが連携して付加価値を生み出せるように連携していきましょう。本日はインタビューにお越し頂きありがとうございました。
Agata: 本日はありがとうございました。ぜひ次回もお話ししましょう。私たちはそれぞれ人間なので、人を軸にしたテーマで話をすることが大切で皆さんで一緒に議論してみたいと思います。
Kohei: ありがとうございます。
Agata: ありがとうございました。
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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author 山下夏姫