実は好成績!? 日本の年金運用に学ぶ分散投資【投資ノウハウ】
投資の世界には「卵を一つのかごに盛るな(Don't put all your eggs in one basket.)」という有名な格言があります。これは、卵を1つのかごに盛ると、そのかごを落としたときに全部割れてしまう可能性があるが、複数のかごに盛っておけば、そのうち1つのかごを落として卵が割れてしまっても、他のかごに盛られた卵は割れずにすむという意味です。
先月、暗号資産のビットコインなどが暴落する場面がありましたが、もし、暗号資産だけに投資をしていたら、大変なことになっていました。この格言は、投資は特定の一つのものにするのではなく、複数のものに投資し、リスクを分散させた方がよいという教えです。
以前、このnoteで積立投資について説明をしましたが、積立投資も分散投資の一つで「時間」を分散させます。今回は、「時間」以外の分散投資、資産や地域を分散させて投資することによって、大きな損失を生じさせるリスクを減らす安定的な運用について考えていきましょう。
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GPIFにみる分散投資
資産や地域を分散させて投資するというと、何だか難しそうに思うかもしれませんが、決してそうではありません。私たちの大切な年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針も、長期的な分散投資です。
GPIFは、運用資産額196兆5926億円(2021年度末時点)を誇る世界最大級の機関投資家です。GPIFの運用資金である年金積立金は、将来の年金給付の貴重な財源であり、年金積立金を安全かつ効率的に管理運用することが義務付けられています。
では、GPIFがどのように分散投資をしているのか見てみましょう。まず下の表が、GPIFの基本ポートフォリオになります。
関連リンク:基本ポートフォリオの考え方
基本的には、乖離許容幅を持たせながら、各資産を25%に分けて運用していることがわかります。債券と株式を半分ずつにするのは、債券価格と株価は、逆相関の関係となることが多いためです。景気が良く株価が上昇している場面では、リスク選好が強まり、債券より株が買われるため、債券価格は下落。逆に景気が悪化し株価が下落すると、安全資産である国債などの債券が買い求められるのです。
国内投資と海外投資ですが、2020年3月までは、運用資産の35%を国内債券、25%を国内株式、15%を外国債券、25%を外国株式に振り向けていましたが、少子高齢化やマイナス金利政策で日本の金利が長期的に低迷していることなどを背景に、2020年4月から上記の表(GPIFの基本ポートフォリオ)のように変更されました。
GPIFは、事業年度ごとの業務概況書に加え、四半期ごとに運用状況の速報を公表しています。2022年3月末では、外国株式25.11%、国内株式24.49%、国内債券26.33%、外国債券24.07%となっています。
また、気になる運用成績ですが、2021年度の収益率は年率5.42%、市場運用が開始された2001年度~2021年度までの収益率は年率3.69%となっています。非常に安定したパフォーマンスと言え、これから10年、20年、30年を見据えて、投資をする際の参考になりそうです。
具体的な銘柄は
では、実際に投資する際、どのような銘柄や投資商品を選ぶかですが、GPIFは、年度末の保有全銘柄について公表していますので、こちらを参考にしてもいいでしょう。2021年度末の場合、GPIFが保有する日本株の上位5銘柄は時価総額ベースで、トヨタ自動車(7203)、ソニーグループ(6758)、キーエンス(6861)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、東京エレクトロン(8035)、海外株はアップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL)、テスラ(TSLA)となっており、世界的な有名企業ばかりです。
個別銘柄には、各企業固有のリスクもあるので、それが気になる方には、ETFがお勧めです。例えば、日本株なら日経225(対象指数)に連動する投資成果を目指す「日経225連動型上場投資信託」、米国株ならS&P500に連動する投資成果を目指す「SPDR(スパイダー)S&P500 ETF(SPY)」や米国の大型株から小型株まで網羅したCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動することを目指す「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)」などもいいでしょう。債券投資は「iシェアーズ米国国債20年超(TLT)」などを考えてもよさそうです。
また、現在、サプライチェーンの混乱やロシアのウクライナ侵攻を受けて、エネルギー価格が上昇していますが、今後も高止まりを予想するなら、「ヴァンエック 石油サービスETF(OIH)」などをポートフォリオの一角に入れてもいいでしょう。同様に、インフレが続くと見込むなら、インフレに強い金投資として「SPDRゴールド・シェア(GLD)」などのETFを分散投資の一つとして購入しておくのも面白そうです。なお、今年3月から急激な円安となっていますが、円安が進むと海外に資産を持っていた方が有利になりますので、長期的な円安を予想されている方は、海外資産のウェートを増やすことを考えてもいいでしょう。
投資は、食生活と同じで、偏った投資対象ばかり購入していると、長期的には好ましくない状況に陥ることがあります。様々な投資対象をみながら、長期的に楽しむ投資を心掛けたいものです。
記事作成:2022年7月10日
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ライター:佐藤 隆司(プロフィールはこちら)
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