異常パターンの行方と加齢の質
正常群を除く63パターンの有所見率の推移を示したものです。
63パターン一緒ですとごちゃごちゃしていて、わかりにくいと思われるかもしれませんが、ここでのポイントは、人は素因型で始まって素因型で終わるという現実です。家族に高血圧や糖尿病、高コレステロール血症の方が多いと自分もそうではないか、また、健診で指摘されるとやっぱり、と不安に思われる方も多いかもしれません。
素因も若年から認められる場合と加齢と共に認められる場合がありそうです。少なくとも高血圧と耐糖能異常は素因の強弱は年齢的に早いか遅いかであり、パターンプロセス上での単独異常のポイントより後だと遅いと言え経験的にも重症化は少ないと言えます。
LDLコレステロールに関しては、体内の酸化状態に反応して増加する成分を認め、素因の強弱は、生来高めなのか、生活習慣に反応するかの違いであり、加齢の影響は他の素因型と比べても少ないと思われます。Note「高LDLコレステロール血症の男女差の意味するところ」参照
生活習慣型パターンは、男性は30歳代から増加し40歳代をピークに下降し、女性は50歳代に増加しその後下降します。素因型の重症例はこの中に多く含まれますので、素因型のみ異常を指摘されている方々は、生活習慣型異常を持たないような生活習慣が大切と言えます。
生活習慣型異常から健診データが開始された場合、後から生じてくる高血圧、耐糖能異常は、本来弱い素因が早期化していると考えられ(後述)、高血圧や糖尿病の重症化はやや遅れ、軽度高値の持続する方が多いのですが、動脈硬化が早く職域の虚血性心疾患や脳血管障害を非常に多く含むため警戒する必要があります。男性の60歳までの各年齢階級のG3,G2各パターンに該当する2〜3%、女性の50歳以降の1〜2%は、高齢者には稀な存在となりますので、できるだけ早期の対応が必要と思われますが、現在の健診では多くの方々が、その重要性を意識されず放置されている現状があります。
ちなみにすべて異常群と高血圧+耐糖能異常群(HbA1c+HT)比較してみると、
すべて異常群は50歳を過ぎる頃から減っていきますが、HbA1c+HT群が増加してゆきます。正常群が、体重増加がないまま歳をとってゆくとターミナルライン(赤い線)に70歳で到達します。各パターンの推移から、6項目の異常群は20年近くの損失があると推定されます。
HbA1c+HT群には、ほぼ性差はないと考えてよろしいかと思います。本来男女とも加齢と共に増加するパターンで、弱素因としてみれば、これに生活習慣型異常の加わったG3,G2群は出現が早まっていると考えられます。
基本16パターンに高血圧と耐糖能異常が加わったターミナルパターンを前回3群、G1,G2,G3に分けましたが、グループ別に有所見率の推移を示した図です。
G3群は、ターミナルライン以降は減少してゆき、G2はやや遅れて追従しますが、G1は加齢と共に増加します。このように高血圧および耐糖能異常を持っていても、健診集団で残れる方と残れない方が存在します。異常パターン間で加齢の質の違いがあり、健診集団における淘汰が存在すると考えられます。
今まで生活習慣病として、健診で拾い上げ、治療対象としてきた素因型項目は、素因型項目の重症度に注目してきましたが、異常の出現に至る途中の過程に本質的な問題があり、性差の原因にもなっていると考えられます。生活習慣型項目の関わる日常の生活習慣の是正が、加齢の質を高めるためにも大切だということになります。
異常パターンの推移における順序性が存在することから、体重増加及び加齢による個人の変化を予測することができますし、生活習慣の改善効果をパターン変化としてとらえることにより、変化に相当する健康損失年齢は改善もしくは悪化の場合の指標として用いることが可能となります。
異常パターンで判定されるのは、現在から将来に続く加齢の質と考えられます。健康長寿を達成するためには、健康診断の結果をもとに、自分自身の素因の強弱を知ると共に、生活習慣の影響度を把握し、データの改善に向けた生活習慣の改善が大切だということになります。