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帰省と母と娘の台所

12月28日には旦那と二人実家に帰った。
父は昔の元気はなくおとなしくしており、だからこそ帰る気になるというものだ。

挨拶も済ますともう夕方なので、夕飯の準備に取り掛かった。
慣れた手つきで私が台所仕事をしていると母が黙って隣に立つ。
母は先日まで入退院をくり返していたが、この度めでたく寛解との診断がおり年末年始からゆっくり自宅で過ごせることになったのだ。
まだ無理は効かないのだからと言い聞かせ、私が帰ってから台所に立つから買い物すらせずにゆっくり過ごすように口うるさく言ったのだ。
それでもいざとなると座っていられない気持ちもわかるから、私も快く手伝いを受け入れる。

私が野菜を切れば入れるための大皿を取り出し母が盛り付ける。
炊飯器のブザーがなればやるよと一言声をかけ、しゃもじを持って丁寧に混ぜてくれた。

私は今夜のメニューの数量に不足がないか心配になりリビングに座る旦那に尋ねる。

「塩唐揚げと、サラダと、味噌汁と、お漬物と、ご飯と…あと何かいる?」
「いやいらんやろ。十分よ。」

やはりか。
ついつい不安になりたくさん作りたくなるのだが、追加を作る前に声をかけると決まって旦那は十分だと笑ってくれるのだ。

さて揚げ物が終わるとそれぞれ取り皿を用意してご飯もよそい配膳した後、マヨネーズがないことに気づいて冷蔵庫を開けた。
母も忘れ物があったようで隣で冷蔵庫内を物色している。
リビングから漏れる灯りでわずかに照らされる台所。
年末特番のテレビの音に弾まない父と旦那の会話がかき消されている。
私は意を決して母の手を握った。

母は驚いた様子だが黙って前を向いていた。

「母さんあのね、私不妊治療してるんだ。」
「…そう、それは辛かったね…」
「ううん、そんなでもないんだけどさ、でもね。年明けから本格的に体外受精とかするの。それがうまくいったらさ、うちの子可愛がってあげてよね。」
もちろんよ。そう言って母は優しく手を握り返し冷蔵庫からマヨネーズをとって先にリビングに戻った。
最後に私の頭をポンポンと叩いてくれた。

私の目からは自然と涙が溢れた。



と、いうところで目が覚めました。

過去に一度もなし得なかった自分の実家での年越し風景を夢に見るなんて…
そんなに義実家での年越しが嫌だったのか、私。
いや確かに大晦日から元旦丸二日間泊まりはしんどかったし、文句言いながらくつろぐ旦那家族が羨ましかったのも事実ではあるけども。
だからって…と寝起きに涙を拭う自分に驚く。

ちなみに
母が亡くなったのは22年前
父が亡くなったのは3年前です。
母が夢に登場したのは死後2回目…かな?

アラフォーの夢オチ失礼しました。


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