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大谷にインタビューする前に勉強してほしい話

みんな大好き大谷翔平のメジャーリーグでの活躍は今年も健在だ。
満塁本塁打を放ったとかメジャー通算100号本塁打をマークしたなど輝かしいニュースを嬉しく思う。
しかし私はそれを伝える日本メディアの報道のあり方を疑問に思っている。

インタビュアーは現地にいるというだけで野球にさして興味の無い人物に違いない。
テレビの前の私にそう感じさせるほど明らかに選手への敬意と知識が不足しているからだ。

スポーツ選手の海外進出と報道

最近の大谷のインタビュー映像は前より緊張感のある表情をしているように私には見える。
繰り出される質問も見ているこちらが首を傾げるようなもので全く選手ファーストでない
あからさまな演出ありきのインタビューには辟易するため、私は最近インタビュー映像を見ないようにしている。
テレビ局の演出に選手を付き合わせるのは失礼だし視聴者もいい迷惑である。

求められもしない演出でファンと選手をイラつかせるインタビュアーの皆さんは、是非NHKの大相撲中継を教材として学んで欲しい。

①労いの気持ちと答えやすくシンプルな問い

大相撲中継の合間で時折設けられるインタビューでは、会場が沸くような良い取り組み(試合)をしたか格上の選手に勝ち星を上げた力士がよばれる。
実況担当のアナウンサーを呼び出したインタビュアーが真っ先に行うのは労いと称賛だ。
「〇〇関おつかれさまです。粘り強く非常に良い内容でしたがご自身ではいかがでしょうか」
息も絶え絶えの力士が相手である。
ここまで導いてやれば何を喋っても大丈夫なくらい丁寧な質問だ。
うまくいってよかったとか、集中して取り組めたとか短い一言でも成立するような問いかけに工夫が見られる。

②感想を交え具体的で答えやすい気配り

おそらく口下手な力士が多い角界に携わるインタビュアーは相撲にとても詳しい。
例えば

「立ち会いで変化がありましたがその後落ち着いて右の上手をとってそこからは相手を寄せ付けないいい相撲でした、出だしは読んでいたでしょうか?」

といった具合にインタビュアーの話を聞くだけでどのような取組(試合)内容だったかがわかるほど詳細に聞くわけだ。
YESかNOで答えられるほど詳細な質問に勉強の成果が見える。
ちなみに私は相撲知識はほぼないが、大相撲中継のインタビューを見ると自分が相撲に詳しくなった気がしてくるから不思議なものだ。
それだけ見る側にも配慮のある洗練された技術を感じる。

③未来に向けての質問こそ丁寧に

大相撲は14日間毎日取組(試合)があり、相手は前日に決まるそうだ。

今日の取組が終わった時点では次の相手までしかわからないというのが特徴だ。
14日間毎日試合をするのに次の相手が誰だか研究する間もない上に「集中して頑張る」ぐらいしか返事のバリエーションもないであろうインタビューの締めは、特に視聴者にわかりやすく力士に優しいトスをあげてくれる。

「明日の相手は〇〇です。2場所ぶり3回目の顔合わせで勝ち越した相手ですが最近勢いに乗っています。意気込みをお願いします。」

明日の取組の見どころまで分かったところでインタビュー終了となる。

誰のためのインタビューなのか

もちろん選手にとって答えやすい無難なインタビューばかりが必要とは思わない。
選手の個性に合わせて気さくな一面を引き出したり冗談を交えることもインタビュアーのテクニックとして求められるだろう。
時には不振の選手に鋭い質問を投げかけて険悪な雰囲気になるような汚れ役も担う難しい仕事だ。
それは大相撲中継でも見られる光景ではあるが、大谷のように海外選手に張り付くインタビュアーからはどこか下卑た雰囲気を感じるのは私の偏見のせいだろうか。

スポーツに携わるインタビュアーや記者たちは、全身全霊かけて心身を鍛え上げ厳しい環境で上り詰めたスポーツ選手たちの命の輝きを私たち庶民に伝えることでお金をもらう職業だと私は考える。

だからこそ全ての質問が選手へのリスペクトに満ちた視聴者が求めるものであってしかるべきであり、決してテレビ局の演出の都合で行ってはならないのだ。
そんなものは健全なスポーツ記者とは呼べず、ゴシップ誌に転職するべきだ。

大谷の試合直後に佐々木朗希の完全試合の感想を求めて「すごいですね」以外の言葉が聞けると思っているならセンスが無いし、70年以上前に亡くなったベーブルースに何か思うところがあろうはずもない。
彼にとってベーブルースは歴史上の人物なのだから。
たまたま仕事で訪れた会議室が坂本龍馬ゆかりの地だったとしてへーそうなんだと思うだけでしょ。だって仕事中なんだもの。

今の報道陣の姿勢は選手と共に視聴者を馬鹿にしている。

ほら、知ってるでしょベーブルース教科書に載ってた偉人だよ?
オオタニサンはベーブルースと比較できるくらいすごいんだよ???

とでも言いたいのだろうか。
記録や数字に関しても限度を超えた執着を見せる記者が多いように感じる。
かの有名なイチロー御大だって昔はにこやかな受け答えだったのにいつしか修行僧のような返答になってしまったんだけどそれってストイックに野球に取り組んだこと以上にこれが原因だろうと推察する。

単純に雑音なのだ。
明日の試合に集中させて欲しいという選手の気持ちに立つべきだ。

もし大谷選手がインタビューに答えてくれなくなったら日本の報道陣の罪は重く、視聴者の心がさらにテレビから離れていくことだろう。

選手ファーストは視聴者の願い

2021年コロナ禍で行われたゴルフの世界4大大会の一つマスターズで優勝した松山英樹選手がある海外のインタビューで「優勝の秘訣」を聞かれとこう答えた。

「日本のメディアがいないから」

これがアメリカンジョークになる日を切に願う。

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