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Not Your Servant(楽曲解説)〜うらみ節について〜
以前アップした曲「Not Your Servant」の解説をします。
この曲を作ったのは、10~12年前くらいかな。
当時、ある人物に対して腹が立ってどうにもやりきれない事がありました。そんな時、人はどういう行動に出るでしょうか?
1.気の置けない友人等にグチる
2.本人に向かってブチ切れる
3.わら人形に釘を打って呪いをかける
等々いろいろあるでしょう。僕の場合は、1.と共に
この腹立たしい気持ちを詞に書いて、曲にしよう!
と思いました。
もっと正確に言うと、その人物との関係を絶って少し経ってから、その気持ちをつらつらと書いていきました。そうでないと自分の気持ちが落ち着かないし浮かばれないという思いもあったけど、逆にこういう気持ちを持っているうちに、形にして残したいと思いました。
単純に言えば「いい歌詞のネタ」だと思ったのです。
まあ、詞については細かく解説するつもりもないし、感じたまま聴いてほしいのですが、経緯としてはそれが発端でした。
曲の方はというと、以前書いたボイスメモに録っておいた「ネタ」の中にあったものが元になってます。
いつかの仕事の帰り道、自転車をこぎながら「詞がついてないけど、なかなかいいメロディだな」と思っていたものに、この腹立たしい気持ちを表した詞をのせて口ずさんでみたら、「お、いいんじゃね?」となり、そのAメロ部分を元にして、コードを付けたりBメロを作ったり、と進めて行きました。
こういった怒りや哀しみの感情をぶちまけるような曲のことを、「うらみ節」(恨み節/怨み節)と言ったりします。
そんなネガティブなことを歌ってどうすんだ?という方もいるでしょうが、人間一人ひとり見た目も性格も境遇も違うわけで、「人間関係」が悩みや仕事を退職する一番の原因となっているのは納得できるし、人生・恋愛などと共に普遍的なテーマと言えます。
古今東西いろんな人がうらみ節を作り、歌っています。
いくつか有名な曲をあげてみます。
ジョン・レノン「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?」(邦題:眠れるかい?)
ビートルズ解散後、ジョンとポールの仲はかなり険悪になっていたようで、作品を通してお互いを揶揄したり罵り合ったりしています。
「眠れるかい?」というのも、目の大きいポールをからかった表現だとか。詞の中では更にポールに対する非難が込められています。しかも、それがあの名盤『イマジン』に収録されているという・・・。
ポールの方も「3本足」「トゥー・メニー・ピープル」といった曲で、ジョン他ビートルズのメンバーにあてつけた詞を書いているようです。
忌野清志郎&Little Screaming Revue「裏切り者のテーマ」
この曲が入ったアルバムがリリースされた頃のインタビューで、忌野氏が当時所属していたレコード会社の担当だった人物に対する怒りを語っていたのを覚えています。
事の詳細や実名が入っていたりということで貼ることは自粛しますが、怒るべき時は怒らないとダメなんだ、と思わされた1曲でした。
その他、梶 芽衣子「怨み節」、中島みゆき「うらみ・ます」等、復讐や痴情のもつれによるうらみ節もあり、そちらは上の2曲とはまた違ったドロドロした怨念を感じるものです。
話を「Not Your Servant」に戻して・・・
タイトルになっているServantという単語は、アメリカ・シアトル出身のバンド、ニルヴァーナ(USA)のセカンド(にしてラストになってしまった)アルバム「イン・ユーテロ」の1曲目のタイトル(「Serve The Servant」)から拝借しました。
「Servant」は訳すと、「召使」「使用人」といった意味です。
「Not Your Servant」は訳すと、「あなたの使用人ではない」となります。
そしてこの単語の前には主語が隠されています(というか省いたんですが)。それはI(am)です。つまり、
I’m not your servant「私はあなたの使用人ではない」
という文になります。
僕の怒りっぷりがわかって頂けるでしょうか(笑)
そして、歌詞は最後に「別の道を行くべきさ」「これからが始まりさ」とその先を見据えています。これは、怒りと落胆だけでは救いようがないと思った事と、そう自分に言い聞かせている部分もあります。
人生には色々あるし、その度に一喜一憂していると持ちません。
でも、こんな風に作品という形に昇華できれば、傷ついた心も少しは癒える気がします。
そして、一人の個人的な出来事が作品になることによって、他人の心をも癒やす事ができるのが、音楽の力なんだな~と思います。